A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (1)
第1話 スライムスレイヤー(LV3)
2028年4月 今日も俺はダンジョンに潜っている。
ほぼ毎日潜って2年が経った。
2019年に世界に突然地下迷宮が出現した。現在までに世界中で1500程の地下迷宮が確認されているが、
この地下迷宮は現在ダンジョンと呼ばれている。
ダンジョンは階層も単層階のものから、100層を超えて未だ最下層が確認されていないダンジョンまで
多種多様である。
当初ダンジョンが発見された時には、
「古代遺跡か?」
「いや地底人?」
「埋蔵金?」
などと連日テレビを賑わせていた。
日本の場合、国の管轄下に置かれ、自衛隊による大規模な調査が行われた。
3年間程度の調査の結果、ダンジョンにはファンタジー要素満載で、モンスターやお宝、ダンジョン内で
のみレベルやステータスや魔法まである事が判明した。
調査を受けて法整備が進み2024年に一般公開される運びとなった。
それを期にダンジョンに潜るための資格 ダンジョン探索調査員 通称 『探索者』が設けられた。
資格は満15歳以上 であれば応募可能。10万円の受講料を振り込み7日間の学科講習を受ければ探索者ライセンスが発行される。
当初応募資格は20歳以上となっていたが、いざスタートしてみると仕事をしている人からの応募がほとんどなく、急遽15歳以上に変更となった経緯がある。
俺、高木 海斗 も15歳になったと同時にお年玉とおこづかいを貯めた10万円を持って速攻探索者ライセンスを取得した。
抑えきれない期待感を胸に取得した翌日にはダンジョンに潜っていた。
あれから2年今日も俺は近所にあるダンジョンの『1階層』に潜っている。
「いないなー」
俺は獲物を探していた。毎日狩っているあいつらを—-
1時間程歩き回りようやく見つけた。
サッカーボール程のゼリー状のモンスター スライムを。
20メートル程離れた場所にいる 青色のスライムに気づかれないように音を立てずに近づいて必殺の
強力殺虫剤を噴射した。
噴射と同時にスライムは「グチュ、グニュ、ボヨヨーン」とギャグのような音を立てて暴れ回り、消失した。
俺は「すーっ 、はー」止めていた呼吸を再開する。
これが俺が編み出した スライム必殺 殺虫剤ブレスだ。
どういう原理かわからないが潜りはじめて3日目ぐらいの時にたまたま持ち込んだ殺虫剤を使用したら
劇的に効いたのだ。
それ以来ずっとこのやり方を続けている。
スライムの消失後、小指の爪の半分くらいの石が残っているので回収した。
この石はいわゆるモンスターの心臓 魔核だ。
魔核は探索者事務所で買い取ってもらえる。
スライムの魔核1個でおよそ500円—–
放課後に3時間程度潜って、発見できるスライムは3匹程度 。 500円×3匹で1日1500円程度。
夢と希望の探索者としての俺の稼ぎは月に25日前後潜って35000円程度だ。そこから殺虫剤が月に5000円はかかるので実質30000円ぐらいだ。
安い。安すぎる。
多少なりとも命の危険があるにもかかわらず月に30000円。
もちろん夢と希望の探索者なのでシルバーランク(中位)以上の探索者は月に100万円単位で稼いでいる。
残念ながら俺は最下級のウッドランク探索者なのだ。
それでも2年間 1階層専門の探索者として放課後アルバイトがわりに日々頑張っている。
1階層にはスライムしか出現しない。安心安全のかわりにスライムからはドロップアイテムが出ない。
残されるのは魔核のみである。
今日も魔核3個を換金し1500円を受け取り家に帰った。
俺の今のステータス
高木 海斗
LV 3
HP12
MP 3
BP 10
スキル ー
装備 殺虫剤
2年間スライムを狩り続けてレベルは2つ上がって3になった。HPは5増え、MPは2増えた。
BPとはバトルポイントの略で所謂戦闘力である。
この数値、ウッドランクにふさわしいものとなっている。
完全にモブである。
最初は夢も希望もあった。
「いつかオリハルコンランクになってやるー!!!」
とクラスの友達にも吹聴していた。 今となっては黒歴史でしかない。
俺も一度だけ2階層に降りた事がある。2階層はゴブリンやグールのような下級人型モンスターの階層だ。
下級という響きで完全に舐めてました。
死ぬかと思いました。いやまじで死にかけました。
ゴブリン雑魚? ファンタジー永遠の雑魚キャラ?
そんなのは「絶対嘘だー!!」
ちょっと考えたらわかることだった。
人型のモンスター、知能もあればモンスター特有の膂力も持ち合わせている。
どこに素人高校生が勝てる要素があるのだろうか?
1mmもありませんでした。
必殺の殺虫剤ブレスもほとんど効果無しでした。
150cmぐらいのゴブリン1匹にボコボコにぶん殴られ、身ぐるみ剥がされかけ、血だるまになりながら、命からがら1階層に逃げ帰りました。
たまたま武器を持たない個体だったので助かったけど武器を持っていたら100パーセント死んでました。
以来猛烈に反省した俺は1階層の住民となりました。
2年間通って探索者仲間も数人出来た。仲間からはスライムスレイヤーの称号を貰いました。
俺は、またいつものように1階層に潜っていた。
「もう1匹狩ったら帰るかー」
独り言を言いながらスライムを求め再び歩いていると金色のスライムを発見した。
「なんだ? 金色のスライムなんか聞いたことないな」
ちょっと気になったけどいつもの通り、忍び寄って殺虫剤ブレスを実行した。
「グチュ、グニュ、ボヨヨーン」といつもの音を出しながらスライムは消失した。
「ん!?」
いつもの通り魔核を回収しようと近寄ると魔核と一緒に一枚のカードがドロップされていた。
スライムからはドロップアイテムが出ないと言われている。実際俺もこれまで2000匹近く倒したが一度も
ドロップアイテムが出たことはなかった。
初めてのドロップアイテムに俺はちょっとビビりながら恐る恐るカードを拾った。
「こ、これは まさか・・・」
震える手の中にあるのは、テレビでしか見た事がないサーバントカードと呼ばれる従者を召喚出来る超レアアイテムだった。