A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (104)
第104話 魔氷槍
俺は今1階層に潜っている。
魔核を貯めるためにサクサク、スライムを狩っている。
スライムと言えどもモンスターなので気を抜いてはいけないとは思うがほとんど流れ作業と化しているので、この時間を有効活用できないかと思い始めたのだ。
殺虫剤ブレスよりも効率は落ちるが、いろいろな倒し方を実践している。
数をこなすので魔法の発動も手馴れてきているが、何かパワーアップや新技を編み出せないかと試行錯誤している。
レイピア型まで進化した魔剣バルザードの更なる強化を試みた。
レイピアを更に限界まで伸ばして、槍並みに長くしてみた。ただし体積の問題で針の様に細い。細くてもなんとかならないかやってみたが、流石に細すぎたようでポッキリ折れてしまった。
次にかなり疲労するがバルザードに『ウォーターボール』の重ね掛けしてみた。結論から言うと3回までは重ね掛けすることができ、槍並みに伸ばすことに成功した。しかし、2発目以降を唱えて定着させるのに1発でおよそ2秒程かかるので3発目を定着させたタイミングでは有効な残り時間が15秒程度まで減少してしまい、MPはもちろん3発分減ってしまう。極めつけは重ね掛けは、連射と違い、極端に精神力を削られた感があり、実用化はかなりハードルが高い。
『ウォーターボール』の強化にも再度取り組んでみたが、殆ど効果はなかった。
一種類だけ変わり種としてウォーターボールをシールドのように出現させることに成功した。
ただしこれも体積の問題で兎に角薄い。薄い氷の膜が張っている感じで、あまり強固ではないが飛ばすことが出来るので、何かの時に役に立つかもしれない。スライムの攻撃を一発程度なら防ぐことができた。
色々やってみたが、現在のスキルやレベルではここまでが限界だった。
いつの日か新たにスキルや魔法を得ることが出来たらもう少しなんとかなるかもしれないが、今出来る事を最大限活かして頑張るしかない。
とりあえずMPの限界まで練習を重ねながらスライムを倒していたせいで、3時間で10個程度の魔核しか取れなかったが、とにかく今は修練が必要だと言い聞かせて3日間頑張った結果45個の魔核を得ることができた。これで何とか週末を迎えることができそうだ。
木曜日の放課後になったのでシルとルシェを伴って8階層に潜っている。
今日はルシェにプレゼントを買ってきた。
「ルシェ、これ俺とお揃いのだけどプレゼントだ。」
「えっ?こんなもの着れるわけないだろ。バカじゃないのか。絶対無理。」
「いやいや、この前話しただろ。溺れたら大変だからな。わざわざ買ってきたんだから着てくれよ。」
「悪魔がこんなもの着けれるわけないだろ。そもそも溺れそうになったら送還してくれればいいだけだろ。」
「いやいや、俺も溺れてたり戦ってると送還できない場合もあるかもしれないだろ。絶対ルシェに似合うと思うんだよ。」
「こんなの似合いたくない。いやだ〜。」
「ル〜シェ。主人の俺が着てるんだ。お前もお揃いだからな。今日から8階層では必着な。」
「う〜。ださい。」
「何か言ったか?」
「わかったよ。着ればいいんだろ。」
俺はルシェが泳げないのを聞いて直ぐに子供用のライフジャケットを購入しておいたのだ。大人用と違って3980円で買えたのでまさに小さな出費で大きな安心だ。
デザインは俺とお揃いのにしておいたので、結構いい感じだ。
その後、何回か戦闘をこなしているが特に変わった事も無く順調に探索を進めている。このペースで進むと、9階層への階段まで明日ぐらいにはマッピングし終わってしまうと思われるが、実力的にはもう少し8階層で修練を積んだ方がいい気がする。
「ご主人様、向こうの水辺に3体のモンスター反応があります。気をつけてくださいね。」
探索を続けていると久々に巨大カバが出現した。しかも3体なので徐々に増えてきた気がする。
「シル『鉄壁の乙女』を頼む。2体は俺が受け持つからルシェ、残りの1体を『破滅の獄炎』で頼む。」
そう指示をしてから、俺は新技を試してみることにした。『鉄壁の乙女』に守られた状態からじゃないと、ちょっと試す勇気がなかったので
「ウォーターボール」 「ウォーターボール」 「ウォーターボール」
ううっ。やっぱりかなりきついな。MPが減るのとは別に頭痛と表現しづらい精神の磨耗を感じる。
苦痛を我慢して突進してきているカバ1体に向けて魔氷槍?を突き出す。
あくまでもバルザードの先が伸びただけなので剣は剣なのだが、3M近く長さがあるので魔氷槍と呼ぶ事にする。実際には釣り竿に一番近い気もするが魔氷竿では流石にきびしい。
突き出した瞬間カバにしっかり刺さり、そのまま進んで来ようとするので破裂のイメージで爆散させる。
「ボフゥン」
長くなってもバルザードの性能はしっかり発揮された。
そのまま『鉄壁の乙女』にぶつかってきた個体めがけて魔氷槍を突き出す。
長さがあるので細かな動きには向いていないがカバのような直線的な動きをするモンスターにはかなり相性がいいようだ。
スッと刺さった氷槍でそのまま爆散させる。
「ふーっ」
かなりきつかったが、実践でうまくいった。今回は3回の重ねがけを試したが、『鉄壁の乙女』があれば、2回の重ねがけの短槍バージョンの方が負担も少なくて有効かもしれない。明日試してみよう。
「ご主人様、うまくいきましたね。また強くなったみたいでシルは嬉しいです。あとお腹が空いたので魔核をお願いします。」
「わたしもお腹すいたからな。ちょっとくれよ。まあ魔剣の長いのは、それなりに良かったんじゃないか。ほら早くくれ。」
2人共褒めてくれているようだ。疲れてはいるが褒められて気分がいいので1個余分に魔核を渡すことにした。