A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (116)
第116話 無用の長物
俺は今ドロップアイテムの前にいる。
「みんなこれって…」
「カニの甲羅ね」
「そうですね」
「それしかないな」
やっぱりそうか。せっかく2度目の通常ドロップアイテムをゲットできたのに、残されていたのは六十センチぐらいの大きさのカニの甲羅の部分だった。
もしかしたら中身があるかと裏返してみたが、残念ながら中身はカラだったので純粋に甲羅部分のみが残されていた。
「これって何かに使えるかな」
「壁にかけるぐらいかな」
「アスタキサンチンが取れるのです」
「いらないな」
ですよね。いらないですよね。この大きさの物を持って帰っても正直使い道がない。本当に後ろ髪を引かれる思いだが、どうしようもないのでその場においていくことにした。
今回ドロップアイテムって有用なものばかりが残される訳ではないと言うのがわかっただけでも良しとしよう。
ただどうせなら中身をドロップして欲しかった。
その後も、お馴染みになってきた八階層のモンスターと何度か交戦して撃退しながら探索を進めたが、残念ながらドロップアイテムは出なかった。当然ながらポンポン出るようなものではないので余計に甲羅が残念だった。やるせ無い気持ちを抱えながらも、探索を進めて遂に九階層の階段のところまでたどり着くことができた。
「ここが九階層への階段なんだけどどう思う?」
「十階層にゲートがあるみたいだからそこまでは、早く行ってみたいけどな〜」
「わたしも8階層の通常モンスターだともう大丈夫だと思うので九階層に行ってみたいのです」
「私はみんなに合わせるよ」
「じゃあ、今日はこのまま探索しながら引き返して来週みんなで九階層へ行ってみようか。その前に俺が明日から下見で潜ってみるから、それで大丈夫かな?」
「わかったわ」
「わかったのです」
「わかった」
とりあえず、恐竜以外のモンスターにはしっかり対応できているので、次の階層に行ってもまず大丈夫だと思うが、念のために明日からしっかり下見をしておこうと思う。
この日はこのまま地上の引き返して、家に着いてからすぐに寝てしまった。
翌日から準備を整えて早速九階層に向かう事にした。
魔核集めは先週頑張ったので、今週は九階層へのアタックに専念できそうだ。
「シル、ルシェ新たな階層だから気をつけて行こうな」
備品は8階層の時に結構買い揃えていたので、今回は何も買うものはなかったが、さすがに9階層になると最短距離で来てもそれなりに距離があるので、放課後に活動できる時間は限られてしまう。
短時間集中で探索を進める。
しばらく9階層を歩いていると早速
「ご主人様、通路の向こう側にモンスターの反応が2体あります。注意してくださいね。」
気を配りながら、奥に進んでいく。
「ギギギャギャギャ」 「グルギャギャギュ」
なんとリザードマンらしきモンスターが会話をしているように見える。
「シル、初めての相手だから『鉄壁の乙女』を頼む。ルシェはしばらく様子を見てから攻撃をかけてくれ」
こちらに気づいたモンスターが俺達に向かって駆けてくる。
攻撃を仕掛けてくるが当然『鉄壁の乙女』に阻まれたが、今迄のモンスターと決定的に違う箇所があった。
武装しているのだ。剣はもちろん鎧までつけている。
攻撃が阻まれたのを悟ると二体でアイコンタクトらしい動作を見せ、一旦下がった。先ほどの会話しているシーンと言い、今までの力押しのモンスターと違い知能が高いのかもしれない。
今度は左右に分かれて攻撃を仕掛けてくる。
『グヴオージュオー』
リザードマンのうちの一体が一瞬で消失してしまった。
ルシェの圧倒的な火力の前には、リザードマンの知性はあまり意味がなかったようだ。