A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (123)
第123話 決死行
俺は今8階層で戦っている。
「ウォオオオー!」
敵はまだまだ数が多いので手数はかけれない。
無駄撃ちできないのでとにかくリスクを冒して敵の懐に飛び込んでから確実に斬る。
避け過ぎても数の力に飲まれてしまうので極限まで集中して最小限の回避に努める。
何度か敵の武器が体を掠めるが、カーボンナノチューブのスーツを信じ痛みは押し殺して動き続ける。
連続で4体倒したが、バルザードの使用制限もあり先が見えない。
「シル、『鉄壁の乙女』が切れたら『神の雷撃』で敵を殲滅してくれ。」
俺は、そのまま敵に向かい合い、斬り込むが相対している後方から矢が飛んできて俺の腹部に命中した。
「グウゥゥ。 オオォオー!」
焼けるような痛みが走って、一瞬動きが止まるが、ここで倒れたら終わりだ、死ぬ気で自分を鼓舞して斬り結ぶ。
「ご主人様大丈夫ですか?直ぐにシルと交代してください。」
「シルッ!自分のタイミングで役目を果たせっ。俺は大丈夫だから。」
本当は全く大丈夫ではないが、ここでシルが特攻でもかけようものなら、全く戦況が読めなくなってしまう。最悪全滅だってありえる。俺はまだやれる。
痛む腹を無視して更に2体のモンスターを焼失したところで
「ズガガガガーン」
シルの『神の雷撃』が発動した。
一旦シルの前まで引いて、低級ポーションを一気に飲み干すと同時にバルザードに魔核を吸収させる。
腹部の痛みが引いたと同時に再度うって出る。
「ウォーターボール」
背後からは、間髪入れずに『神の雷撃』が放たれており、俺は漏れて抜け出してくる敵に向かって行くが、
シルの攻撃により数が減り、密度が減った分、放ち易くなったのか逆に矢や石の飛んでくる数が増えている。
敵と斬り合いながら飛んできた矢を避ける。そんな達人のような事は出来るわけがなかった。とにかく頭にだけは当たらないよう注意するがそれ以外は無視するしかない。目の前の敵に集中しないと一瞬でやられてしまう。
逆に割り切れたせいで、妙に頭がクリアになり先程までの戦い方とは違い、無言で近づいてレイピア型を心臓めがけて突き刺す。
極力相対するモンスターに体が隠れるように正面に立ち、素早く切られる前に突き刺す。今の俺にできる、最大限無駄を省いた動作を繰り返す。
「グゥッ」
肩口に結構な大きさの石がぶちあたる。骨にも影響あるだろうが構わず攻撃を続ける。3体を片付けたところで
「ウウッ」
今度は足に矢が命中する。痛い。めちゃくちゃ痛い。スーツのおかげで刺さってはいないが痛い。我慢しているが痛みで涙が溢れてくる。
動きが途端悪くなり間合いに入れなくなる。
「ウォーターボール」
レイピアで牽制しながら『ウォーターボール』で仕留める。
更に2体片付けた所で再度シルのところまで引く。
最後の低級ポーションを飲み干す。流石に2本飲むとお腹がポーションぶくれしてしまった。これで動くと横っ腹が痛くなりそうだが、とりあえず痛みが引いた。さすが低級ポーションだがこれでもう回復アイテムは無い。このアタックで決めないと負ける。本当にこれで最後だ。
「ウォーターボール」 「ウォーターボール」
もう敵の攻撃を食らったら立て直せないので、最後の一発分を残して距離を置いた状態から魔法を連発する。
シルの『神の雷撃』の威力は十分に発揮されており、流石に数がまばらになってきている。
「ウォーターボール」
最後の1発でバルザードに再び氷の刃を纏わせて、敵に向かって突き進む。後20秒、10発が俺に残された猶予だ。手間取っている時間はない。
最短距離で敵までたどり着き突き刺す。受ける時間が勿体無いのでとにかく突き刺す。
再び腕に痛みが走る。ジャガーマンの剣戟を左腕に食らってしまった。完全に折れたようだが、相手は生きた知能を持つモンスターだ。攻撃ぐらい食らう事もあるに決まっている。アニメの主人公みたいに俺の攻撃だけが一方的に当たる事自体がありえない。
まだいける。俺は右手に構えた魔氷剣を構えて突き刺す。まだ大丈夫。