A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (124)
第124話 終戦
俺は8階層でもがいている。
生き残るために、死ぬ気でもがいている。もう左手は使えないか、右手と両足は健在なので、魔氷剣で敵を殲滅すべくもがいている。
ジャガーマンを含め何体倒したかははっきりしないが、倒した数より残りの敵数が気になる。
シルの攻撃も既にかなりの回数展開されているので、ルシェのようにいつMPが尽きてもおかしくない。
MPが尽きた状態のルシェの戦闘力は不明だが、そんな状態になったら戦わす事は出来ない。
俺一人でも戦う覚悟はすでに決まっている。
いざとなったら、シルとルシェのカードを持って死ぬまで逃げてやる。
無駄の無い攻撃を意識して、ホブゴブリンの心臓をめがけて刺突する。
おそらくあと数回、あと数秒で魔氷剣の効果が切れる。
なんとも言い様のない焦燥感を感じながらも、一方で冷静に頭と身体を動かす自分がいた。
ハイオークに剣を突き刺し爆散させた時点でついに氷の刃が解けた。
再度シルのところまで戻って、バルザードに魔核を吸収させる。
「シル、大丈夫か?無理になったらすぐ言えよ。」
「ご主人様、心配はいりません。モンスターなどに負けることなどあり得ません。」
俺を安心させる為か強気の発言だが実際には結構きついはずだ。
武器はバルザードしかもう無い。バレットを再装填する時間もない。殺虫剤はあるが効果は望めない。何か無いのか?リュックの中に何かなかったか?
あった。効果は不明だがひとつだけ、いや2缶だけ残されていた。
最臭兵器シュールストラーダの缶が2缶残っている。
以前、モンスター戦用に一度だけ使用して、そのままになっていた俺の奥の手。
以前ヘルハウンドには劇的な効果をあげたが、9階層のモンスターにも効くかどうかわからないがやってみる価値はある。
一つ目の缶を一気に開封してモンスターめがけて投げつける。上手く命中して周囲に散乱する。俺は息を止めてバルザードを握りしめて様子を伺う。
「グギョン、グウウルルー、ウギョル」
効いた。命中した一体だけでなく周囲のモンスターにも効果を発揮して暴れている。
今しかない、俺は気配をできる限り薄くしてから、息を止めた状態で全速力でモンスターの中に突っ込んで行きバルザードでとどめを刺して周る。
大きく注意を削がれたモンスターはあっさりとバルザードの餌食となってくれた。
更に最後の一缶を開封してモンスターに投げ込む。
口で呼吸をして再度息止めて暴れるモンスターを更に仕留める。
シュールストラーダの効果は劇的で2缶で6体を仕留めることができた。
さすがにもう何もないが、奥を見ると敵はあと7体まで減っていた。
気がつくとシルの『神の雷撃』も止んでいるのでMPが尽きたのだろう。
俺のバルザードの使用制限はあと4回、かなり厳しいがやるしかない。
バルザードを構えてモンスターに突っ込んで行く脇をすごいスピードで何かが通り過ぎて行き、そのまま先頭のモンスターを串刺しにしてしまった。
「シル、お前・・・」
「ご主人様、ルシェも再召喚してください。」
「え、でもMPが。」
「大丈夫です。早く召喚してください。」
言われるままに
「ルシェリア召喚」
「ルシェ、私と一緒に敵を殲滅するのですよ。」
「ああ、わかってるよ。」
そう言うとルシェも猛スピードでモンスターのところまで向かって行き、持っている杖でモンスターをぶっ叩いたと思ったらモンスターは吹き飛ばされて消滅してしまった。
「はは。ルシェお前もか・・・」
俺も参戦しようと前に出たが、それより速いスピードでシルとルシェが次々に敵を殲滅していき、結局2人で残りの5体を倒してしまった。
「助かった・・・のか? 助かったんだよな。」
「ご主人様、早く地上に戻って治療してください。ただ、その前に・・・」
「魔核くれよ。お腹が空いて倒れそうだ。」
ああ、それはそうか。2人ともMPが空になるほど戦ったんだ。当たり前か。でも一体何個必要なんだ。
とりあえず、リュックに残しておいた50個あまりのスライムの魔核を半分ずつ渡してみた。
「ご主人様、申し上げにくいのですが・・・」
「全然足りないんだよ。言わせるなよな」
ああやっぱり足りなかった。俺は足元に散乱している魔核を集めて、その半分をシルとルシェに渡した。
「おい、下の階に置いてきた魔核とってこようぜ。もったいないだろ。」
「え?でも消耗してるし危ないだろ」
「腹が一杯になったから大丈夫だって。なあシル」
「ええ。せっかくだから回収してから帰りましょう。ご主人様の盾も放棄してきましたし。」
俺的にはすぐにでも帰りたかったが、スライムの魔核も全て使い果たし、バレットもかなり消費した。先立つ物がなければ探索も厳しくなるので、9階層に戻って魔核と盾を拾ってから地上を目指すことにした。