A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (128)
第128話 理力の手袋
俺は今1階層に潜っている。
いつもの練習用スペースに陣取って、新しく手に入れた理力の手袋の効果を検証しに来ている。
早速右手に手袋をはめてみる。
特に変わった所も無いし違和感も無い。
これどうするんだろう。使い方がわからない。
とりあえず手袋なので、適当にパンチを繰り出してみるが特に何も起こらない。
MPを消費するとあるから、魔法のようにイメージすればいいんだろうか。
ちょっと恥ずかしいが、何かを放出するイメージで手を開いた状態から右手を突き出してみる。
特に何も起こって無いように見えるが、微かにだが体に違和感を感じた。
もう一度同じことをやって見るがやっぱり違和感があるので気になってステータスを確認してみると、MPが2だけ減少している。
2回で2減っているので1回あたり1MPを消費していることになる。
消費しているという事は何かが起こっているのだと思うが、何も起こってる感じがない。
なんだこれ。不良品か?
更に何度か同じ事を繰り返したが、違和感があるだけで特に変化がない。
う〜ん。
不可視の力なのでもしかして何か起こっていても目に見えないのか?
見えない力をどう感じればいいのだろう。
考えた結果俺は8階層に来ていた。
水辺まで来て、水面に向かって先程までと同じことをやってみた。
「ジュボン」
ちょっと先の水面が丁度、手のひら分の大きさだけ凹んだ。
やはり目に見えないだけで、何かは出ている?らしい。
今度は拳を握りしめてパンチしてみる。
「ジュボッ」
今度はさっきよりも少しだけ勢いがあるような気がする。
これって見えないロケットパンチみたいなものだろうか。人間相手ならかなり有効だとは思うが、モンスター相手に俺のパンチが効果があるとは思えない。これはハズレアイテムだったのだろうか?
さすがにハズレだったで片付けるのは忍びないので、色々と試してみることにした。
まずはチョップしてみたがこれも問題なく射出された。
次に左手にひっくり返して装着して試してみたが、特に問題なく使えた。
今度は足につけてみたが流石に無理だった。
デコピンの要領で指を弾いてみたがこれも成功はしたが威力が弱くなっただけで意味がなかった。
イメージを膨らませて10秒ぐらい溜めてからやってみたが、普通にやるのと大差なかった。
俺が無手で思いつくのはこの程度だった。
次にダメもとで武器を持った状態で使ってみた。
まずはバルザードを右手で握って飛ぶ斬撃のイメージで振ってみる。
「おおっ」
なんと水面が少しだが割れた。
これは夢にまで見た飛ぶ斬撃ではないか。
再度やってみるが、同じ効果を得ることができた。
次に魔氷剣でやってみたが、先ほどよりも広い面積が割れた。
おそらく刃の長さ分切れたのだろう。
調子に乗ってブンブンしてみたがきっちり十発目で変化がなくなった。
手袋を使っても、使用回数は触媒に影響を受けるようだ。
次に「ウォーターボール」に重ねようとしたが、飛んでいく物と見えない物を同時に発現させるのは難しすぎたようだ。
ただ唯一、シールド状の「ウォーターボール」を発現させてから理力の手袋を発動して意識すると、結構自在に移動させることができた。ただし時間は10秒程だ。そのうち何かの役に立つかもしれない。
次に実践で使用して見るために、2階層でゴブリンを探した。
すぐに見つけることができたので魔氷剣を発現させて、少し離れた所から斬撃を飛ばしてみる。
最初の一撃目は、残念ながら命中しなかったので慌てて狙いを定めて再度斬撃を飛ばす。
今度はうまく命中して、ゴブリンを真っ二つにすることが出来た。
振るって飛ばすので魔核銃よりも狙いをつけるのが難しい。
練習の為に2体目のゴブリンを探してから、再度斬撃を飛ばしてみるが、今度は一緒に破裂のイメージをのせてみる。
飛ばすイメージと破裂のイメージの両方をこなす為、狙いをつける事まで意識がいかず、再び外れてしまった。
ちょっと焦りながらも、外れないよう十字に斬り結んで斬撃を飛ばしてみたが、どうやら2発共放たれた感覚がある。
ゴブリンに命中したと同時に今度は破裂した。
「おおっ」
やっぱり思った通り、飛ぶ斬撃にも媒介の特性が引き継がれているのでイメージをのせれば色々な効果を得る事が出来るのだろう。
外れだと思った理力の手袋だが、訓練次第でかなり使える気がするので今日は一日特訓することにした。