A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (133)
第133話 決着オルトロス戦
俺は今オルトロスの足元にいる。
「シル、なんで背中を攻撃したんだ。腹を頼む。」
「ご主人様。『神の雷撃』はあくまでも雷系なので、上から下に落ちます。下から上には無理なんです。」
ああ。確かに雷は上から下に落ちるものだ。完全に特性を忘れてしまっていた。
「すまない。俺のミスだ。神槍は腹に打つことは可能か?」
「もちろん大丈夫です。」
「ルシェ、シルの攻撃に連動して『破滅の獄炎』を放ってくれ。」
「大丈夫だ。」
「我が敵を穿て、神槍ラジュネイト」 「破滅の獄炎」
2人の攻撃に合わせて俺もバルザードの斬撃を飛ばす。
「ギャグゥウウ」
初めて明確なダメージがオルトロスの腹部に入る。
ダメージを受けてこちらを攻撃しようとするが、いいタイミングでスナッチと他のメンバーが再度攻撃をかけてくれる。
鬱陶しいと思ったのか、オルトロスの双頭がメンバー達の方を向いて息を吸い込んだのが見て取れた。
「逃げろ!」
俺は声を上げながらも、右側の頭にはバルザードの斬撃を飛ばし、もう一方の頭には氷の盾を出現させて理力の手袋を使ってオルトロスの口の奥に押し込んだ。
ブレスを防ぐほどの強度は全くないが、はるか上部に位置する口の中を狙える方法を他に思いつかなかった。
少しでも遅らせれば良いと思い、咄嗟に発動させていた。
「ゴ、ゴフッ、ゲハツ」
無駄かもしれないと思いつつ放った氷の盾だが思わぬ効果を生んだ。
開けた口の中にそれなりの大きさを持つ氷の幕を気管まで一気に押し込まれた事により、オルトロスがむせた。むせて咳き込んだ。
右の頭部もバルザードの斬撃ともう一方の頭がむせ込んだお陰で、ブレスを発することはできなかったようだ。
むせ込んでいる隙に再度腹部に攻撃をかけるが、腹部は完全に弱点だったようで、効いてきている。
他のメンバーも位置を変え再度牽制してくれている。
オルトロスは先程何が起こったのか理解できないようで、警戒してブレスではなく足での通常攻撃をかけて来ようとする。
ダンジョンの照度では透明な薄い氷は認識できなかったのだろう。突然不思議な力で咳き込んだ様に感じたのかもしれない。
何れにしてもチャンスだ。
俺たち3人も移動を繰り返しながら腹部の1点を狙い続ける。
「グ、グフウッ、ギャウッ」
「効いてるぞ。あと少しで倒せそうだ、押し込むぞ。」
3人で更に攻撃を繰り返すと、オルトロスがたまらず倒れこんできた。
「ズズズゥーン」
地響きと共にオルトロスの双頭が攻撃可能な位置に出現した。
「みんな今だ。」
ここが勝負どころなのは全員わかっていたので、ヒカリンは『ファイアボルト』を連発して、あいりさんも駆け寄ってきて薙刀で頭部を斬りまくる。スナッチも近距離から『かまいたち』を放っている。
俺も頭部に斬撃を加え、シルとルシェもコンボ攻撃を連発している。
流石にこの状態になればオルトロスにもはや抵抗する力は無く、しばらく攻撃を続けるとオルトロスの巨体が消失した。
「やったな。オルトロスを倒したぞ。全員の連携勝利だな。結構消耗したけどノーダメージで勝てたから言うことなしだな。」
1番の勝因はヒカリンの『アースウェイブ』でオルトロスのほとんどの行動を制限できたことだろう。
「ああ、オルトロス相手に上出来だな。だけどなんでこんな所にオルトロスがいたんだろうな。普段は魔界にいるはずなんだけどな。もしかしたら、恐竜とかスタンピードもオルトロスのせいだったのかもな。」
「ちょっと休んでいいかしら。私たちこんな大物相手にするの初めてだったから、精神的に疲れちゃって。恐竜の時は硬直してただけだったから。」
「ああ、そうかごめん。ちょっとまって。シル周りにモンスターの気配はないか?ここでしばらく休んでも大丈夫かな。」
「少々お待ちください。 えっ? ご主人様今すぐ臨戦態勢を整えてください。何故だか、最初に感じた強力なモンスターの気配が無くなっていません。もしかしたらもう1体いたのかもしれません。」