A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (136)
第136話 渾身の一撃
俺は今悪魔と対峙している。
運もあったが、敵の武器を破壊する事に成功した。
恐らく士爵級悪魔が使う剣なので魔剣だったのではないだろうか。見た目はあれだが、俺のバルザードの方が優れていたのだろう。
「ああああっ。このゴミムシが公爵様より頂いた私の剣を。遊びは終わりだ。今すぐ死ね。」
やばい。怒っている。怒りで悪魔の顔が悪魔のような顔に変化している。
「死ねっ」
悪魔が拳でラッシュをかけてきた。
魔氷剣で受け止めるが、すぐに使用制限を超え、ただの万能包丁に戻ってしまう。
死ぬっ。
「させません。」
シルが神槍を発動して割って入るが、槍が掴まれた。神槍の熱量によって手から血が流れているので、初めて目に見えるダメージを与えられたが、それだけだ。
一瞬の膠着状態を見て、全員が一斉に攻撃をかける。俺も『ウォーターボール』で氷の刃を超近距離発動するが、やはり効果が薄い。
神槍を掴まれた状態で、シルが持ち上げられ、そのまま振り飛ばされてしまった。
「ううっ」
大丈夫のようだが、構う暇はなく、俺に悪魔のパンチが降り注いだ。
とっさに『ウォーターボール』で氷の盾を発動したおかげで、吹き飛ばされたがなんとか生きている。
生きてはいるが、何箇所か完全に骨が折れている。
「ご主人様を。許せません!」 「くそったれ、士爵風情が。死ね。」
俺がやられたのを見てサーバントの2人が今まで見せた事のない表情を見せ、悪魔に向かって猛攻を仕掛ける。
シルは神槍での連撃を繰り出し、ルシェはそれに呼応して『破滅の獄炎』を連発している。スナッチやヒカリンの『ファイアボルト』も間髪入れずに繰り出されているのが見える。
攻撃が続いている間に、リュックから
低級ポーションを取り出して一気に飲み干す。
しばらくすると痛みが引いてきたが、今までと違って完全には引かない。思ったより重症だったのかもしれないが十分動ける。
バルザードに魔核を吸収させて、すぐに戦線復帰する。
サーバント達の怒りによるものなのか、攻撃力が上がっているように感じる。そのせいか今までダメージを与えることが出来なかった相手に、若干ではあるが手傷を負わせているように見える。
俺が出来ること。
極力気配を薄くして、倒れていた位置から悪魔の背後までゆっくりと近づいて行く。
何度も繰り返してきた手順だ。
みんなのおかげで俺には全く意識が向いていない。
悪魔の背中が目の前にある。
バルザードを構えて身体ごと一気に飛び込んで突き刺す。
「グワッ」
刺さったバルザードに向けて破裂のイメージを制限回数一杯まで繰り返す。
破裂する衝撃を感じなくなった。
直接刺さった状態からのバルザードの特殊効果連続発動だ。効果が無いはずはない。
バルザードが刺さっていた周辺30cmぐらいがポッカリと穴を穿っていた。
勝った。
パーティメンバー全員がそう思っただろう。
「ガ、ガハツ。フーッ、フーッ『ダークキュア』」
次の瞬間、悪魔がスキルを発動した。
ポッカリ空いていた腹部の穴が徐々に閉じていく。
「う、嘘だろ。」
決死の一撃だった。全員の力を合わせた必殺の一撃。みんなのおかげで繰り出すことができた渾身の一撃だった。
確実に効果はあった。完全に致命傷を与えることに成功した。歯が立たない相手を撃破することができた。
そのはずだった。
それが回復系のスキル?反則だろ。自分がポーションで回復したのに敵が回復しないと思う事に無理があるのかもしれないが、普通、敵は回復しないだろ。このレベルの攻撃と防御ができるやつは、回復しちゃダメだろ。
次の瞬間、俺は再びぶっ飛ばされてしまい、そのまま意識を失ってしまった。