A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (139)
第139話 勝利
俺は今死にかけている。
あと100秒ほどで死んでしまう。
「る〜シェ。お仕置きするぞ。ふぅ、うぅ」
「わ、わかったよ。さっさとやればいいんだろ。」
「ハリーアップ。」
「はいはい。『神滅の風塵』」
「ちょっとまってください。神滅?ただの子爵に使えるようなスキルではないでしょう。あなたは一体。」
士爵級悪魔が無駄話をしている間に気圧が集約したような暴風が悪魔を包み込んだ瞬間に全ての風が中心部に圧縮されて、消え去った。
風が消え去ったあとには、悪魔の姿は、跡形も無く消え去っていた。
終わったのか。復活とかしないよな。大丈夫だよな。
一抹の不安を覚えて、悪魔の居た場所を注視していたが、特に変化はない。
ううっ。こうしている間にも俺のHPは削られ続けている。
「ルシェ、もうダメだ。吐きそう。早く 『暴食の美姫』解除してくれ。ううっ。」
「え〜せっかく、大きくなれたんだからもう少しこのままでいようかな〜。」
「おいっ。冗談言ってる時間はないんだよ。死ぬ。死んじゃう。」
「え〜別に冗談じゃなくて本気なんだけど・・・・」
「いやルシェ、あと30秒しかない。会話の時間が勿体無い。急いでくれ。」
「まあ、このまま30秒ほっとけばわたしは晴れて自由になれるんだよな。ふふふっ。」
「なっ。お前、本気か、本気で言ってるのか?」
「ルシェ、ご主人様をいじめるのはそのぐらいにしておきなさい。」
「ふふっ。わかってるよ。冗談だって。そんなことするわけないだろ。ちょっとからかっただけだろ。」
「いや、あと20秒しかない。命をかけた冗談なんか必要ないから、早くしてくれ。ううううっ。」
「しょうがないな。わたしのこと見直したか?これからはシルと同じように優しくしてくれるか?」
「するする。するから早く頼むあと15秒しかない。」
「約束だぞ。」
そう言うとルシェが閃光につつまれて、そこにはいつものルシェが立っていた。
やばかった。あと10秒しかなかった。
何れにしても俺のHPはあと5しか残っていない。死んではいないが虚脱感がすごい。
本当に終わった。
オルトロスだけでも大変なのに連戦で士爵級悪魔。ちょっと無理。流石にしばらくはモンスターと戦いたくない。
「あっ」
やばい。シルとパーティメンバーをほったらかしていた。大丈夫だよな。
「シル大丈夫か? 」
「もちろん大丈夫です。流石にちょっと疲れましたが、お腹がいっぱいになれば大丈夫です。」
「わたしにもいっぱいくれよ。」
え〜。ルシェお前も?散々俺のHP吸い取ったじゃないか。
結局手持ちの魔核をほとんど渡す事となってしまったが、帰りのこともあるので、手元に10個だけ残してもらった。
残りのメンバーに目を移して駆け寄ってみると、全員気絶しているだけのようで、間違いなく息はある。
まずは順番に身体を揺すって意識を戻してもらう。
「ううっ。海斗、あいつはどこに行ったの?」
「大丈夫だ。なんとかルシェが倒してくれた。それよりもみんなを回復させたいんだ。ポーションは持ってるか?あったらすぐ使ってくれ。」
そう言うと、ミクはマジックバッグから低級ポーションを取り出して一気に飲み干した。
スナッチも意識を失い倒れているのでミクが起こして、低級ポーションを与えると元気になった。
同じ要領で残りの2人も起こしてから各自の低級ポーションを摂取してもらった。
「助かったのか。よくあの悪魔を倒せたな。もうダメかと思ったぞ。」
「まあ、ルシェのスキルでなんとか勝てました。俺は、もう、ちょっとダメかも・・・しれません。」
「げっそりしてふらふらじゃないか、ポーションが無いのか?私のを使ってくれ。」
「ああ、ありがとうございます。もうちょっとで死にそうなんで有り難く使わせてもらいます。」
あいりさんから渡されたポーションを飲み切ったが、流石にお腹が苦しい。ステータスを確認するとLV18になっていた。HPも全快していたが、なぜか全身の倦怠感は抜けていない。やはりルシェの『暴食の美姫』は俺の生命を吸っているのかもしれない。まあお陰で助かったので何も言えないが・・・