A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (151)
第151話 お披露目
俺は今9階層に潜っている。
一番の目的はパーティメンバーへのベルリアのお披露目だ。
ただ、朝、ギルドで言われた確定申告の事が心配になって他のメンバーに尋ねながら歩いている。
「みんな確定申告ってしたことあるのかな。」
「ああ。」 「もちろんよ。」 「去年しました。」
みんな確定申告しているらしい。という事は昨年度に135万円以上の収入があったという事だ。みんな羨ましい。
「俺も今年しないといけないっぽいんだけど、大丈夫かな。」
「私は父の顧問税理士に頼んでるから困った事ないけど。」 「私もだ。」 「わたしもです。」
「ああ、そうだよな。顧問税理士って高いのかな。」
「なんか最近は競争が激しいから月1万円ぐらいからやってくれるところもあるみたい。スマホとかでも探せる見たい。」
「俺領収書とか取ってないんだけど大丈夫かな。」
「ダンジョンマートで買った物は履歴がお店に残るから再発行できると思うけど、それ以外は難しいかも。」
「ああ、そうだよな。俺今まで全然稼げてなかったから、気にした事なかったんだ。これからも相談に乗ってください。お願いします。」
「もちろんわかる範囲でなら相談に乗るわよ。」
ああ、やっぱりパーティっていいな。なんて素晴らしいんだろう。そういえば隼人達も俺と一緒で領収書なんか取ってない気がする。月曜日に教えてやろう。
「ガキンッ!」
突然ベルリアがタングステンロッドを振って何かを叩き落とした。
「マイロード敵襲です。ご準備ください。」
どうやら今叩き落としたのは矢だったようだ。シルを含めて誰も気づいていなかったのにベルリアは察知して叩き落としたようだ。
「お前探知系は出来ないって言ってなかったか?」
「いえ、これは探知ではなく、周囲に常に注意を払っていただけです。」
注意を払っていただけって、俺も払っていたけど全く見えなかったぞ。
そのままベルリアが進んで行って、シルバーオークを仕留めて戻ってきた。
「敵モンスターを仕留めてまいりました。皆様のお役に立てるよう誠心誠意頑張りますのでよろしくお願いします。」
「なんか、思ってたキャラクターと違うんだけど。」
「そうですね。あの憎たらしいおっさん悪魔と同じとは思えないのです。」
「悪魔だから、嘘をついてるんじゃないか。」
「何をおしゃっているのですか。この私が嘘をつくはずがないではないですか。これでも騎士ですから、誓いは絶対なのです。マイロードと姫様達への誓いは絶対です。信じてください。お願いします。」
「う〜ん。悪魔ってこんな感じなのかな。ルシェ様しか悪魔を知らないからよくわからないんだけど。」
「俺も先日一緒にダンジョン潜ってみたけど、なんか悪い奴ではなさそうなんだよな。寧ろ超努力家ぽいんだよ。戦闘力もそれなりに高いし結構いいんじゃないかな。」
「ああっ。マイロード、ありがたき幸せ。なんと慈悲深いお言葉。」
「そもそもマイロードって何?」
「いや、俺もそれは気になってるんだけど、なんか主人の事みたいなんだけど、めんどくさいから放置してるんだよ。」
「 皆様の期待に応えられるように頑張りますのでよろしくお願いします。」
その後も数回敵モンスターと交戦したが、ベルリアが積極的に戦ってくれたおかげで、圧倒的にスムーズに進んでいる。ただしベルリア自体は9階層では突出しているものの、やはりシル達ほどのスキルを持つわけではないので、頑張ってくれているように見える。
ベルリアもお腹は空くようだがスキルを使っているわけではないのですこぶる燃費はいいようだ。
「みんなどう思う?」
「まあ、殺されかけたからすぐにはなれないけど、悪い奴ではなさそうだからいいんじゃない。」
「わたしも自分ではいらないですけど、海斗さんに懐いているようなので海斗さんの責任でしっかり管理するならありだと思うのです。」
「私も一応賛成だ。戦力アップは間違いないし態度も良い。ただし悪魔だからな、嘘をついてないとは断定できないから海斗しっかり頼んだぞ。」
結局、ベルリアの努力によりパーティメンバーには納得してもらったが、みんなの反応は当然だろう。風貌と態度が激変したとはいえ数日前に殺されそうになった相手だ。おまけにみんなに絶対的な使役権があるわけではないので、主人の俺に責任があるのは間違いない。今後はベルリアの分も責任を持って探索に臨みたい。