A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (152)
第152話 新スキル
今日は日曜日、俺は7階層に潜っている。
今更の7階層だが、パーティメンバーのスキル検証には丁度良いだろうと思いとりあえず7階層に来ている。
「それじゃ、みんなのスキルを確認してみよう。まずはあいりさんとヒカリンのを試してみようか。」
しばらく探索してルシェが発見した、ブロンズゴーレムとストーンゴーレムに対してヒカリンとあいりさんが前に出る。
「アイスサークル」
ヒカリンが新しい魔法を使用する。2m程の範囲で円柱が出現してゴーレムの背丈まで覆い隠す。完全に氷漬けの状態になる。おそらくこのまま放置すると魔法が解除された時点でまた動き出す気はするが、今は完全に動きを封じ込めている。
「斬鉄撃」
氷漬けのブロンズゴーレムが氷ごと真っ二つに切断されてしまった。
すごいな。元々のなぎなたの性能とあいりさんの技量もあるのだろうが、すごい威力だ。
同じ要領でストーンゴーレムもあっさり片付けてしまった。
「2人共すごいじゃないですか。ヒカリンの『アイスサークル』も動きにくくなるどころか、完全に動きを封じ込めているな。あいりさんの『斬鉄撃』もあの感じだとほとんどのものが斬れちゃうんじゃないですか。」
「まあ、私も『斬鉄撃』の威力には驚いているが、MPを消費するから、無駄撃ちは出来ないな。」
「それじゃあ、次は、ミクとスナッチで戦ってみようか。ちょっと効果が不透明だから危なかったら、みんなですぐにフォローに入るから。」
「うん、わかった。」
しばらく探索しているとすぐにシルが敵を感知した。
「奥に敵が3体います。ご注意ください。」
「ミク、1体はこっちで受け持とうか?」
「せっかくだからわたし達だけでやってみる。無理だったらお願いね。」
前方に見えたのはストーンゴーレムとブラストゴーレム2体だった。
問題は、スナッチの攻撃が通用するかどうか。
「幻視の舞」
ミクがスキルを発動したようだ。発動したようだが俺には何も見えない。ミクが踊っているわけでもないし、目に見える幻が発生したわけでもない。
失敗か?と思ったら、ゴーレムが3体とも何もない虚空に向けて攻撃を始めた。
どうやら敵にはしっかり、何かの幻が見えているようだ。しかも単体ではなく3体共に効果が波及しているようだ。
ゴーレムが何もない所を攻撃している様は、不恰好ではあるがたしかに舞っているように見えなくはない。
その舞っているゴーレムに向けてスナッチが、鋼鉄の針を浴びせかける。
どうやら『ヘッジホッグ』を発動したようだ。
今までの風の刃は残念ながら直接的なダメージは一切与えていなかったが、今度の『ヘッジホッグ』は違った。しっかりとかなりの数の鋼鉄の針がゴーレムの奥の方までめり込んでいき、あっという間に3体共に葬り去ってしまった。
完全に火力不足を解消している。
もう少し知能の高いモンスターでも検証の必要はあるが、ミクとのコンビネーションはかなり使える印象だ。
最後にシルの『戦乙女の歌』を試してみようと思うが、7階層のモンスター相手では効果が測りにくいので9階層まで移動してきた。
移動してすぐにシルが3体のモンスターを感知した。
「シル『戦乙女の歌』を使用してみてくれ。サーバントにも効果があるか確認したいから、ルシェとベルリアも戦闘に参加してみてくれ。」
「戦乙女の歌」
シルがスキルを発動した瞬間、頭の中にかすかなシルの歌声が流れてきた。なんとも言えない高揚感がしてきた。
「おおおぉぉお!」
普段あげることのない雄叫びをあげて敵に向かっていく。
身体が軽い。足がいつもより早く動く気がする。高揚しながらも普段よりも視界が広い。なんとも言えない無敵感のようなものが感じられる。
目前に迫ったホブゴブリンの攻撃を目視するが、遅い。ホブゴブリンの動きが明らかに鈍く感じられ、余裕を持って避けられる。 避けた瞬間バルザードを一閃して斬撃を飛ばしてモンスターを撃破する。
「すごいな。」
明らかに自分のレベルが上がっているのがわかる。高揚感から雄叫びをあげたが、アニメに出てくるバーサーカーのように思考能力が低下するわけではない。寧ろ処理能力は上がっていると感じる。
隣を見るとルシェもベルリアも戦闘を終了していた。
「どうだった。」
「ああ、明らかにレベルが上がった感じがあるな。『暴食の美姫』を使った時ほどではないけど、スキルの威力もアップしてるな。」
「わたしは正直よくわかりませんでした。シル姫の歌声は聞こえたのですが、いつもとそれほど変わった感じはありませんでした。」
「そうなのか。」
これは、あれだな。スキルの効果波及条件の信頼関係に依存するというやつだな。俺とルシェは家族だからもちろん信頼度は高く、ベルリアはおまけだから現状信頼度ゼロなのだろう。
ベルリア、これから信頼を築いて行こうな。これからだ。