A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (167)
第167話 10階層満喫
俺は今10階層を進んでいる。
俺の思いついた『アイスサークル』作戦が功を奏し、随分と探索ペースが上がってきた。
途中ヒカリンにばかり頼るのも申し訳ないと思い、俺の『ウォーターボール』も発動してみたが、全くダメだった。
みんなで分かち合うには小さすぎて、一応俺の手のひらは冷たかったが『アイスサークル』とは比べるまでもなかったのでヒカリンに一任する事にした。
その代わりに俺は戦闘を頑張ることにした。
同じようなモンスターが出ることも多かったが、初めてのモンスター、ラクダに乗ったリザードマンの様なモンスターが出現した。
もちろんラクダもモンスターなのだが、こんな風にペアで出現するのは初めてだった。
最初ラクダ?と思い少し気を抜いてしまったが、すぐに後悔した。
ラクダが異常に素早かったのだ。
馬よりはるかに大きく、しかも速い。
上に乗っているリザードマンもどきは槍を持っている。
すれ違いざま、刺突を入れようとするが、回避する。回避する瞬間に、ラクダの口から唾液が放たれたので、生理的に受け付けず、瞬間移動で避けることが出来たが、地面についたよだれによって砂が煙を上げて溶けている。
「酸か?ラクダやばいな。みんな絶対ラクダのよだれをくらうなよ。とにかく近づいたら逃げろ。あと口めがけて集中砲火だ。」
俺以外のメンバーも生理的に嫌だったらしく、大きく頷いて速攻で連射し始めた。とにかく口めがけて撃ちまくる。
しばらくするとラクダは頭を失い、リザードマンだけが残されたが、リザードマンもどきもそのまま槍を突き出しながら突進してきた。
突進に警戒していたが、スナッチがカウンターで『ヘッジホッグ』を発動して、難なく消滅させる事に成功した。
この日はこのままゲートまで引き返す事となったが、女性陣が家に帰る前にシャワーブースでさっぱりしたいと言い出した。
気持ちはわかるので、日頃の感謝を込めて俺が奢ることにした。
ブースの空きが3箇所しかなかったので、俺はサーバント達と待つ事となったが、やはり他者の視線を感じる。
なんだと言うのだろう。女性陣のシャワー帰りを待っているので何か変な風に思われているのか?
俺は至って清廉潔白だぞ。
しばらく待っていると
「スッキリした〜。気持ちよかった。海斗も次行っておいでよ。」
「いや、俺は別に。」
「私たちだけお金出してもらって入るわけにいかないから行ってきて。」
ミクが強く進めてくるので俺もシャワーを浴びる事になった。
シャワーブースは海水浴場にあるような感じので、ボックスになっており1000円入れると4分間お湯が出るようになっていた。
そこまでの、スペース的な余裕がないためか、そもそも女性が少ないからか男女共通となっており、トラブルを防ぐために入室時に探索者票をスキャンする事で空室の場合解錠する仕組みになっている。
早速、1000円を入れてシャワーを開始する。
一応シャンプーとボディソープも完備されているのでしっかり埃を落として行く。
「あーっ。気持ちいー。さいこー。」
もしかしたら俺の入浴史上最高の瞬間かもしれない。『アイスサークル』も最高だったが、それを遥かに凌駕するこの快適感。
普段それほど入浴好きというわけでもないがこれは病みつきになりそうだ。これで1000円は安い。
しばらくすると、お湯の勢いが弱くなり最後出なくなった。
「あーっさっぱりした。」
みんなは既に出ていたので合流すると、ヒカリンが
「海斗さんどうでした?」
と聞いてきたので
「いや、最高だったよ。病みつきになりそうだよ。来週もみんなで利用しようか。」
と上機嫌で答えたが、
「やっぱり海斗さんですね。安全ですね。安心です。」
と返してきた。
「何の話だ?」
「いえいいのです。私たちの期待通りのリアクションだったので、よかったのです。」
「ああそう。それは良かった。」
いまいち何の話かわからなかったが、まあ特に問題なさそうなのでスルーしておいた。
俺の中でとりあえず来週もシャワーは確定だ。