A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (169)
第169話 ベルリアとの鍛錬
俺は今1階層に潜っている。
スライム狩りとベルリアとの鍛錬の為だ。
先週は全く歯が立たなかったので今週こそはと意気込んで臨んでいる。
1番教えて欲しかったのは砂上での減速なしの移動法だったが、開始5分で諦めた。
これは俺には、いや人間には無理だ。足が砂に取られる前に次の足を出す。理屈ではわかるが、アニメの忍者以外は実現不可能の技だろう。その場だけなら足の回転を上げることはできるが、当然それでは沈んでしまう。前に進みながら異常な回転率で進む。人間業ではなかったので、開始早々に諦めた。
どう考えても鍛錬やレベルでどうにかなる代物ではない。
まだ飛行グッズを手に入れる可能性の方が高い気がする。
諦めたので、素振りと、足捌きをしばらく練習する。
そしてついにベルリアとの打ち合いとなった。
頭の中ではずっとイメージしてきたが、正直正攻法では勝てる気がしない。今練習しているのは基本。正統派の剣の基礎だが、これは今の段階では全く通用するレベルにないので忘れる。
俺が出来る事をやるしかない。
「それじゃあ、ベルリア始めようか。」
声をかけるとすぐにベルリアが打ち込んできたが、流石に初撃はかわすことができた。
俺は理力の手袋をいつもの右手ではなくひっくり返して左手につけて、右手にはバルザードを構えて『ウォーターボール』を唱えて魔氷剣を発動していた。
右手に構えた魔氷剣で、攻撃を開始するが、当たらない。
「マイロード、振りが甘いですよ。片手で振らずに両手で振るようにしてください。」
「大きなお世話だ。」
俺はベルリアの助言を無視して右手一本で攻撃を繰り返すが、当然避けられて当たらない。
避けられた瞬間にベルリアの足をめがけて理力の手袋の力を解放する。
至近距離からなので見えない俺の手はベルリアの足首をガッチリと掴む事に成功した。
掴んだ瞬間踏み込んでベルリアの体に斬り込む。
やった。
完全に決まったと思った瞬間ベルリアがステップを使わずに上半身の捻りと移動だけで俺の攻撃をかわしてしまった。
まるで特撮映画のような動きに呆気にとられたが、気をとりなおして避けれないよう胴の辺りを横薙ぎにしたが、今度はしゃがんで避けてしまった。
避けられた瞬間、見えざる手の効果が切れたらしく、ベルリアが踏み込んで俺にカウンターで胴体に一撃を入れて来た。
「ううっ。痛い。」
ベルリアは斬れないように剣の腹で叩いて来ているが痛い。
「マイロード、なかなか上手い手だとは思いますが、セコイです。正々堂々とやりましょう。見えない手など邪道ではありませんか?」
「何悪魔が邪道とか言ってるんだよ。正々堂々とやって勝てないから色々考えてやってるんだよ。セコイとか言うな。これでも俺の奥の手なんだぞ。」
「そうでしたか。失礼しました。頭を使って戦うのはいいことです。マイロードの最も適性があるのはアサシンスタイルかもしれません。以前私も後ろからやられて致命傷をくらいましたが、やられるまで全く気付くことができませんでしたからね。ただ今のように正面からやり合う場合には通用しませんからやはり、正攻法を身につけていただきます。」
「俺だって別にアサシン目指してるんじゃないからな。正統派の剣士がいいに決まってるだろ。でもな、とりあえず今はお前に負けないように色々やるからな。」
正直、ベルリアの技量に感嘆しているが、これでもサーバントの3人の中では1番手が届きそうな存在なのであっさり引くわけにはいかない。
サーバントの3人は本当に頼りにしている。家族であるシルとルシェはもちろん、付き合いは短いがベルリアにもかなりの愛着を持っている。
しかし、サーバントにおんぶに抱っこは俺の望んでいる探索スタイルではない。
3人と並んでダンジョンを踏破していきたい。
なのでまずはベルリアに並びかけたいと考えている。
ベルリアに並ぶことができて初めて、主人としてスタート出来るような気が勝手にしている。
今は全く勝てる気がしないが、いずれはシルやルシェにも並びたい。