A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (173)
第173話 新たな自分
俺は今10階層に来ている。
土曜日になったので再び10階層に臨んでいる。
やはり10階層のゲートをくぐった直ぐ後から視線を感じる。
今までの俺であればきっと逃げ出していたかもしれない。しかし日番谷さんと話して俺は吹っ切れた。
75日の我慢だ。しかも週末しか10階層には来ないので実質20日程度だ。なんてことはない。個人情報が漏れない限り身バレすることもない。しかもサーバントも軽蔑の対象ではなく憧れの対象だと言っていた。もう俺に怖いものは何もない。
「海斗、なんか先週と表情が違う気がするんだけど。スッキリしたと言うかちょっと違う感じがするんだけど。それにあのヘルメットはどうしたの?気に入ってたじゃない。」
「ああ、俺はちょっと生まれ変わったんだ。彗星のようにな。」
「何それ。意味がわからないんだけど。」
「まあ、気にしないでよ。俺の問題だから。」
「それはそうと、今日は頑張って探索進めようね。」
「ああ、みんなで一緒に頑張ろうな。」
ここのところ、探索があまり進んでいなかったのでこの土日で一気に距離を稼いでおきたい。
そう思いながら進んでいくとモンスターが現れた。
「ご主人様、モンスターです。3体いるようです。」
どこだ?また地下か?
警戒して進んでいくと今度は羽の生えた猿よりも一回り大きい、羽の生えたゴリラが現れた。
正直ちょっと違和感がある。とてもじゃないが天使の先祖には見えない。
「シル『鉄壁の乙女』を頼む。みんな遠距離攻撃で迎え撃つぞ。ミクは『幻視の舞』を頼む。」
「おい、たまには私も一緒にやらせろよ。最近出番が少なくて退屈すぎる。」
「あぁ、そうか。それじゃあ、一体『破滅の獄炎』で頼むよ。」
「1体だけ?まあいいけど。」
たしかに言われてみると、シルに比べても最近ルシェの出番が少なかった気がする。燃費が悪いし、俺たちの訓練にならないから控えてもらっていたが、これからは少しずつ組み入れていこうかな。
空飛ぶゴリラが近付いてきたので全員で迎撃態勢に入る。
「破滅の獄炎!!」
今までストレスがたまっていたのかルシェが速攻でスキルをぶっ放した。
気合いが違うのか1体だと言っておいたのに2体いっぺんに消失してしまった。
「ルシェ、1体って言っただろ。」
「1発で2体消えちゃったんだからしょうがないだろ。わざとじゃないから私は悪くないぞ。」
まあたしかにそうだけど。
「幻視の舞」
今度はミクが残った1体に向かってスキルを発動したが、発動後直ぐに効果が現れ、空飛ぶゴリラは墜落してただのゴリラと化していた。
そこからは残りのメンバーの一斉射撃を行い、あっと言う間に消失してしまった。
「お腹が空きました。」 「腹減った。魔核くれよ。」
久しぶりにこのセリフも聞いた気がするが、魔核を渡してやると2人とも満足そうだ。
「今回は全くお役に立つことができませんでした。今度は私にも出番をお願いします。」
ベルリアが悔しそうにアピールしてくるが、遠距離だとこいつの出番はないんだからしょうがない。
この後は前回死にかけた蟻地獄が出現したが、この前のお仕置きが功を奏したのかルシェもトラブルなく避けることが出来、遠距離から全員で対処できたので無傷で撃退することが出来た。
別に特別活躍したわけでもないのにルシェが得意そうな顔をしてこちらをしきりに見てくるのでちょっと笑ってしまいそうになったが
「ルシェ、今回は良かったんじゃないか。」
と言うと上機嫌になったのでまあ良しとしよう。
「また今回も出番がありませんでした。今度同じモンスターが出たら飛び込んでいって仕留めてやります。」
「ベルリア、無理しなくていいぞ。遠距離の敵は俺らに任せろって。近接の敵はお前が要になってくるんだからな。」
「マイロード、お優しいお言葉ありがとうございます。次こそ活躍してみせます。」
まあ、みんなやる気があるのはいいことだと思うことにした。