A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (191)
第192話 対セト戦
俺は今11階層の隠しダンジョンで逃げ回っている。
逃げ回っているが敵を仕留めるつもりで逃げ回っている。
スナッチが『ヘッジホッグ』を仕掛けて、ミクも魔核銃を連射してくれている。
その瞬間偽セトの意識はそちらに向いてスキルもスナッチ達の攻撃を防ぐために発動されているので、その隙を狙って一気に距離を詰めるが、1回の攻撃では詰め切れなかった。
かなり距離が詰まった分、偽セトからの攻撃の着弾時間も短く
なってしまっているので、雷攻撃をくらわないようにほぼ全速力で逃げ回ることになった。
息が苦しい。いくらレベル18まで上がったステータスとはいえ、全速力で走れる時間はそれほど長くはないが、立ち止まったらやられる。それだけは間違い無いので、悲鳴をあげる肺に鞭打ち走っている。
地上では体育の時間以外で走る事など皆無なので厳しい。
「ミクッ、やばい、もう一度頼むっ。」
呼吸を阻害しないよう最低限の意思伝達をしてから再度全力で逃げるが残された時間はそう長くない。
しかし間を置かずに再び『ヘッジホッグ』が発動し偽セトの意識が一瞬 逸れる。
これで決めるしか無い。
俺は全速力のまま最短距離で敵の後ろに回り込んで、そのまま踏み込みバルザードを敵の背中にねじ込んだ。
それと同時にバルザードに使用制限一杯まで破裂のイメージをのせて追撃をかけた。
どうだ?
「ボフゥン」
やった。偽セトを倒すことに成功したが、休んでいる暇はない。ヒカリン達も完全に手詰まりになっているので、一刻も早く助けに行く必要がある。
焦りながらも体が悲鳴をあげているので、低級ポーションを取り出して一気に飲み干してからバルザードにも魔核を補充した。
体力の回復を感じながら偽ホルスに向かって駆け出して
「ミク、スナッチと一緒に援護してくれ。」
指示を出してバルザードの斬撃を氷漬けになっている偽ホルスに放つが、その瞬間ホルスの月の目が光り、光った効果で攻撃が無効化されたのか何も起こらない。
どうやら月の目は攻撃無効化らしい。ただし『アイスサークル』は無効化できていないので全てに効果があるわけではなさそうだ。
それじゃあ太陽の目はなんだ?
そう思った瞬間太陽の目が光ったと思ったら肩口に激痛が走った。
「うっ痛い・・・」
一瞬の出来事に何が起こったのかわからなかったが、肩口に目をやるとマントが焦げ、カーボンナノチューブのスーツに焦げたような小さな穴が空いており、そこから血が流れている。
今まで、物理攻撃はことごとく跳ね返してきたカーボンナノチューブのスーツが突破されてしまった。
今までの経験からこのスーツには絶対の信頼を寄せていたのに、穴が開いてしまっている。
正直かなりショックだった。
太陽の目から何かが出たのは間違いないが見えなかった。
ただ太陽の目というぐらいだから、超高温の炎かレーザーのようなものを射出して俺の目では追い切れなかったのだと想像はできる。
問題なのは、スーツを無効化されたという事は偽ホルスに俺の装備は全く防御的な意味を持たないという事を示している事だ。
「みんな近付くな。近付いたら危ない。」
俺も一旦体制を立て直すために全力で偽ホルスから遠ざかる。
あいりさんは今までこいつと戦っていた筈だが攻撃をくらった気配は無い。
俺と何が違うんだ?
やっぱり俺が末吉だからなのか?
俺にばかり攻撃が集中する特殊体質なのか?
一瞬バカな考えが頭をよぎったが普通に考えてそんな事はありえない。
素早く動くものに反応したのか?
とにかく、攻略方法を見つけないまま飛び込んでいく事は自殺行為なので遠距離攻撃を続けながら、様子を伺うことにした。