A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (197)
第198話 隼と羊
俺は今隠しダンジョンの中でエリアボスと戦っている。
まあ、あまり期待はしていなかった。ラーはしっかりと立ち上がってきてしまったが最低限の時間は稼げた。
「マイロードありがとうございます。」
ベルリアの方を見ると切断されていた左腕がしっかりと元に戻っていた。以前、腹に開いた穴が塞がったので驚きは無いが『ダークキュア』すごいな。
「話している暇は無いぞ。一気に全員でかかるぞ。」
強いとはいえ、ベルリアが凌げていた相手なので全員でかかれば問題なく倒せるだろう。
「ヒカリン、足止めを頼んだ。シル、ルシェもタイミングを合わせて攻撃をかけてくれ。」
『アイスサークル』
偽ラーが氷漬けになった瞬間、全員で総攻撃をかけるが、偽ラーの体全体が炎に包まれたと思うと氷が一気に溶け出した。
それでも僅かに拘束できた時間で攻撃できたものの、炎が去ると無傷の状態の敵が現れた。
「ヒカリン、もう一度頼む。」
短時間でも拘束できるのであればその間に倒してしまえばいいと考え、指示を出すがしばらく待っても氷は出現しなかった。
「ヒカリン?」
「海斗さん。すいません。魔力切れです。これ以上魔法を使えません。」
よく考えると、隠しダンジョンに入ってからサーバントを除くと1番活躍していたのはヒカリンだ。『アイスサークル』を連発していたので魔力切れを起こすのも無理はない。
むしろその可能性を頭から除外していた俺が悪い。
「ヒカリン、すまない。低級ポーションを飲んで、休んでおいてくれ。」
『アイスサークル』が無くても他のメンバーで十分いける。
「ベルリア、前衛頼む。俺もフォローするから。」
ベルリアと俺とあいりさんで偽ラーを3方から攻撃をするが、ラーの目が光ったと思うとレーザー光線が飛び出した。
なんだこれ。超人アニメかロボットアニメの世界だな。
幸い命中はしなかったが、ベルリアの腕を切断したのもこの攻撃だろう。
「ウォーターボール」
効果の程は分からないが俺はシールド状の氷をラーの顔前に発動させた。
氷で目から発射されるレーザーを反射してくれないかと淡い期待を抱いていたが、再び目が光ってレーザーが発動した瞬間、俺の薄っぺらい氷の盾は蒸散して跡形も無くなってしまった・・・
ある程度予想できたことではあるが、ちょっと切ない。
気を取り直して、目を狙ってバルザードの斬撃を連発する。
それに呼応してシルとルシェもスキルを発動して攻撃をかける。
まだ、倒せてはいないが効果は出ている。
このまま押せばいける。
「ミク、スナッチにも頭部を狙わせてくれ。」
メンバー全員の意思統一として、こいつの1番のポイントは目なのでとにかく、それを発動できないように頭部を集中的に狙う事にした。
俺もバルザードの攻撃を相手の頭部に集中しているので、レーザーは発動していない。
シルとルシェの攻撃も続いており、かなり有効打となっている。
相手の意識が頭部に集中したのを見計らってあいりさんが足元を薙ぎ払う。
「うまいっ!」
思わず声が出てしまったが、さすがあいりさん。完全に虚をついて『斬鉄撃』で偽ラーの足に深手を負わせた。
完全にいけると思った瞬間、ラーの全身から炎が噴き出して、収まるとなんと傷が癒えていた。
こいつ回復スキル持ちか。
そして何故かラーの鳥頭が羊頭に変化していた。
なんだこれ。マジックか?
「海斗、ラーは2面性があるのよ。太陽の部分が隼、闇の部分が羊で表されるの。羊は死の世界を体現しているの。」
死の世界・・・
また、スケルトンか何かを出すのか?それともゾンビ化でもするのか?
いずれにしても、回復スキルを持っている以上、今のままでは勝てない。
もっと強力な一撃を加えないと消滅させることはできないだろう。
こうなったらあれしか無いのか。
使いたく無いな。
使わずになんとかならないだろうか。
無理だろうな・・・