A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (2)
第2話 サーバントカード
ファンタジーの定番通り日本のダンジョンではモンスターを倒すと、ごく稀にドロップアイテムが残される。
スライム以外の全てのモンスターからドロップアイテムが確認されているがドロップ率はおおよそ1〜3パーセントと言われている。
探索者の主な収入源がモンスターの魔核とドロップアイテムの売却益だ。
メジャーなドロップアイテムは ポーション各種。武器、武具類。レアメタルを含む素材。
レアなところで、魔法が使えるマジックオーブ。スキルを覚えるスキルブロック。能力値のアップするバイタルジュエル等があげられる。
もちろん俺はレアアイテムについてはテレビの中でしか見たことはない。
メジャーなアイテムは国の運営している国営ダンジョンマーケットに行けば販売されているので、購入したことは無いが、15歳になりダンジョンに潜れるようになるまで、毎週のようにウィンドウショッピングを気取って見に行っていた。
もちろんレアアイテムも販売はされているがVIP専用の分厚い扉の奥の部屋でのみ販売されており、もちろん俺は入ったことは無い。
『サーバントカード』はVIPルームに鎮座するそうしたレアアイテムの一つである。
テレビ経由の情報によれば、サーバントと呼ばれる、モンスターや戦士を召喚できるらしい。
見た目はカードゲームのデッキカードのようだが紙ではなく金属製である。
最初に召喚した探索者のみが使用できるらしい。
人間と同じように攻撃されるとHPも減り、0になると二度と呼び出すことはできないらしい。
ただし減ったHPもカードに送還して1日経過すると回復するそうだ。
魔法と並ぶ探索者垂涎のレアアイテムである。
俺だって夢の中ではレッドドラゴンを召喚して極大魔法を連発して魔王退治するという厨二夢を何度見たかわからない。
大きな声ではいえないが17歳になった今でもときどき夢見ている。
『サーバントカード』でも呼び出せるサーバントは千差万別だ。
現在確認されているカードによるとモンスター系最弱サーバントはゴブリンと言われており、最強サーバントがドラゴン種と言われている。
俺が手に入れた『サーバントカード』
震える手の中にあるカードを祈るような気持ちで、恐る恐る覗いてみた。
最弱ゴブリンでも俺より遥かに強いのだ。もちろんウエルカムだが、本音を言えばもう少しだけ強いカードであってくれ。ドラゴンとはいわない。せめてワイルドベアぐらいでてくれ。
「頼むー!ううーぅ!? 神さまー!!」
心の声が口から、だだ漏れしていた。
意を決して見たカードにはなんと
水色の髪に碧眼で西洋風の鎧姿の絶世の美女 いや 羽が生えてる ・・・・まさか天使?? いや神様か???
が描かれていた。
慌ててステータス部分を食いつくように見ると
種別 ヴァルキリー
NAME シルフィー
Lv1
HP120
MP 90
BP 170
スキル 神の雷撃 鉄壁の乙女
装備 神槍 ラジュネイト 神鎧 レギネス
と表示されている。
人間、想像の埒外のことが起こるとろくに動けないらしい。
喉はカラカラだが全く声が出ない。力が入らない。全身が震える。
それからどうやって家まで帰ったのか記憶がない・・・
家に着いてから、ベッド上で寝転びながら既に2時間以上カードを眺めている。
少し落ち着いてきたので、スマホで 『サーバントカード ヴァルキリー』と検索してみた。
検索結果はカードゲーム等の類似ワードがヒットしただけ。
???
今の時代検索できないものなんかあるのか?
このカード もしかして偽物か?
今度は『ヴァルキリー』 で検索してみた。
今度は多数のヒットがあった。
『ヴァルキリー』・・・北欧神話に出てくる半神。
半神ってなんだ?
神なのか?そんな事ありえるのか?やっぱり偽物か?
ダンジョン以外では召喚する事は出来ないので、真贋もわからずモヤモヤした気持ちのまま眠りについた。