A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (211)
第212話 11階層突破
俺は今日も11階層に潜っている。
カーボンナノチューブの中には昨日購入した冷却ジェルを大量に貼り付けている。
貼り付けている時は1月の季節と相まって異常に冷たくなってしまい風邪引いてしまうかと思ったが、これであれば11階層も問題なく進めるだろうと臨んだ。
「あ〜。暑い・・・きつい・・・」
「海斗、どうしたの?最初はあんなに快適だって言ってたじゃない。」
「最初は、冷却シートのお陰ですごい快適だったんだけど、1回戦闘したら全く冷たく感じなくなったんだよ。効果は12時間って書いていたから効果が無くなった訳ではないと思うけど、昨日と同じぐらい暑いんだ。」
「まあ熱中症とかには効果があると思うけど、体感は厳しいかもね。」
効果があると聞かされても実感が無いので辛い。
暑さのせいで結局、昨日と同じく、ハイペースで探索を進める事になった。
「ご主人様、前方からモンスターが11体来ます。ご注意下さい。」
「11体?多く無いか。間違いない?」
「間違いありません。」
思いがけない数の多さに身構えて臨んだが現れたのは黒猫の一団だった。
「あれって猫だよな。結構かわいいんだけどモンスターなんだよな。」
「はい、間違いなくモンスターです。」
俺は結構猫好きなので少し攻撃しづらいが仕方がない。
「みんな、数が多いから各自で確実に1匹ずつ倒して行こう。一応モンスターみたいだから気をつけていこう。」
俺もバルザードを構えて迎え撃とうとするが11匹の猫型モンスターは一斉に散開してこちらに向かってくる。
かなり素早い。
バルザードの斬撃を飛ばして攻撃するが、当たらない。素早い上に小さいので全くついていけない。
「シル『鉄壁の乙女』を頼む。」
バカな事にかわいいシルエットの所為で相手を舐めてしまっていたので、仕切り直す。
「このスピードだと近接は難しい。みんな魔法か銃で対応して。」
「マイロード、私は魔法も銃も無いのですが。」
「ベルリアはしばらく待機だ。」
今はベルリアに構っている時間は無い。
俺も魔核銃に持ち替え、しっかり狙ってバレットを撃ち出すが、なかなか当たらない。
今までの敵は直線的に向かってくる敵が多かったので当て易かったが、この猫は立体的に動きながら逃げるので照準が間に合わない。
俺は魔核銃でも苦戦しているが、黒猫はどんどん数を減らしていっている。
あいりさんは『アイアンボール』ヒカリンは『ファイアボルト』でそれぞれ命中させて倒している。
中でも1番活躍しているのがスピットファイアを使用しているミクだ。
ミクのスピットファイアから発せられる小型の火球が次々に黒猫を捉えていく。
「すごいな・・・」
正直俺の出る幕は無さそうだ。ミクには射撃の才能があるのだろう。1発も当てられない俺とは比較にならない。
しばらくするとミク達の活躍で11匹の猫を全て倒す事が出来たが、結局俺の撃退数はゼロだった。
俺の出る幕が無い程にみんながパワーアップしたのを確認して安心したのか、そのあと俺はルシェにお願いされて、約束のお姫様抱っこをする事となった。
俺は当初10秒間か20秒ぐらいのものだと思っていたのに、ルシェは違ったらしい。
それから11階層を突破するまでずっと抱っこをする事となってしまった。
戦闘時はルシェが俺の代わりに攻撃をしていたので、結果として、よりスムーズに探索が進む事となり12階層へと続く階段までかなりのスピードで到達してしまった。
「あ〜あ。着いたのか。もう終わりか〜。したかったらまたいつでもお姫様抱っこしてもいいんだぞ。」
「いや、いいよ。もう十分だよ。」
「まだ足りないだろ。だからまたしてもいいんだぞ。」
「いや、もう満足だよ。」
「私は満足じゃ無い。またしてもいいぞ。」
「単純にまた抱っこして欲しいだけだろ。」
「そんな言い方するなら抱っこしたくなってもさせてやらないからな。」
「また気が向いたらな。」
「本当か!?」
「気が向いたらな。」
「約束だからな。」
ルシェはお姫様抱っこが気に入ったのか、どうしてもまた抱っこされたいようなので気が向いたらまた抱っこしてやろうかな。