A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (212)
第213話話 愚者の一撃
俺は今スーパーマーケットに来ている。
昨日12階層への階段に到達したので、ほんの少しだけ降りてみたが今までとは違う備えが必要だと感じた。
12階層は相変わらず砂漠だったが、真っ暗だった。
夜の砂漠。そんな雰囲気のエリアだったが、問題はその暗さと寒さだ。
11階層では役に立っている感が無かった冷却シートだが12階層ではしっかり効果を発揮して物凄く寒い。
先程までとにかく暑かったのに12階層に入った途端一気に温度が下がった。
「みんな寒く無いか?。砂漠って夜になるとこんなに温度違うの?」
「砂漠に夜行ったことが無いから分からないが寒いな。」
「海斗さんはマントもあるし鎧もあるからまだいいです。私はすごく寒いのです。」
「とにかく一旦帰りましょう。このままだと体温が下がってしまって動けなくなりそう。」
あまりの温度差にさっさと11階層に戻って来たが、戻った瞬間に今度は灼熱が襲ってくる。
「これってきついな。体験したこと無い感覚だけど暑さと寒さで50度ぐらいは違うんじゃ無いか?」
「とにかく11階層の服装では12階層は無理だな。完全に凍えてしまうな。」
「とりあえず、来週迄に各自で装備を揃えてきましょう。」
「マジックポーチに防寒服を詰め込んできます。」
日曜日はそのまま引き返して解散したものの、マジックポーチを持っていない俺は、防寒具を持ち歩く事も難しいので色々考えた結果、スーパーマケットで使い捨てカイロを購入することにした。
11階層では、鎧の所為で暑くて仕方がなかったが、12階層では逆に鎧の所為で底冷えがする。金属製の鎧は、戦闘においては非常に有用だが、気温の変化にはすこぶる弱いので、なかなか厳しい。
翌日の放課後になったのでスーパーマーケットで貼るタイプの使い捨てのカイロを大量に購入して、念の為にあったかくなる下着とソックスも買っておいた。
12階層に続く階段の所でシャツとソックスだけは着替える事にした。
家に帰ってからスーツの中にカイロを一杯貼って試してみたが時間が経つにつれ段々熱くなって来た。
最初は我慢してみたがスーツで熱が篭るのか、普段学校で使用するよりも遥かに高温になってしまい、異常に熱く、スーツを脱いで確認するとカイロの部分が赤くなっている。
完全に低温火傷を起こしかけていた。
このままでは、全身火傷だらけになりそうだったのでちょっと動きにくいが、シャツを3枚重ねた上から貼り付ける事でなんとかいけるようになった。
自分なりに防寒対策はしたので、明日最後の懸案である『愚者の一撃』を検証しておく事にした。
本来であればナイトブリンガーやスピットファイアと同じ日に検証すれば良かったのだが、その時は覚悟が足りなかった。
しかし、12階層もなにがあるか分からないので、手持ちの武器は確認しておくしかない。
いつもならゴブリン相手に検証する所だが『愚者の一撃』の威力を測るには役不足だと思うので、ゲートを使って10階層迄行く事にした。
この時の為に事前に低級ポーションを2本買い増しておいたので心置きなく試せる。
「ご主人様、奥にモンスター2体です。ご注意下さい。」
「シルは『鉄壁の乙女』を頼む。ルシェは1体を頼む。ベルリアは俺にもしもの事が無いように低級ポーションを持って控えておいてくれ。」
すぐに飛猿が2体現れたので左側の1体をルシェに任せて、俺は右側のを倒す事にする。
念には念を入れて『鉄壁の乙女』の中からバルザードの斬撃を飛ばす事にした。
「行くぞ!飛猿。『愚者の一撃』」
覚悟と共にバルザードの斬撃を飛ばした。
本来見えないはずの斬撃が唸りを上げて存在を主張している。
斬撃が飛猿に到達した瞬間に飛猿は消えて無くなった。
「すごいな・・・」
そう呟いた瞬間、強烈な脱力感がやってきた。『暴食の美姫』とはまた別種の不快感だが、一気に来て、立っているのも辛い。強烈な頭痛と目眩がする。
慌ててステータスのHPを確認するが残量はHP4。
既にルシェがもう一体を消滅させているので、攻撃される心配はないが、10階層の敵が相手では一瞬で殺されてもおかしく無い数値だ。
愚者の一撃は凄い威力だがやはりリスクが高いようだ。