A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (213)
第214話 愚者
俺は今10階層に潜っている。
『愚者の一撃』の一撃により飛猿を跡形も無く消し去ったが、HP4となってしまった。
「ベルリア、低級ポーションを頼む。」
ベルリアに渡してあった低級ポーションを一気に呷ると身体の倦怠感が抜けてHPが全快した。
ポーション使用後は通常の状態に戻っているようで『暴食の美姫』の使用後のような身体の芯に残る疲労感はない。
まだ一度しか使用してないのではっきりとはしないが、威力は申し分無いように思える。
今まで俺が繰り出したどの攻撃よりも威力があったと思う。
そして使用後の倦怠感が無いと言うことは何度も連発出来る可能性がある。
大量に低級ポーションを買い込んで、使用しては回復するのを繰り返せばある意味制限無く高火力の攻撃を繰り出せる事になる。
ただしこれだと1発のコストが10万円かかる事になるので流石に無理だ。
どうにかならないかと思い色々考えたが、突然天啓が降りてきた。
「よし、もう一度使って見るから同じ要領で頼むな。ベルリア今度は低級ポーションじゃなく『ダークキュア』をかけてくれ。」
俺の思いついた案は『愚者の一撃』を使用した後にベルリアに『ダークキュア』を使用して貰えば僅かばかりだがHPが回復するので、それを繰り返す事で『愚者の一撃』を繰り出し続けることができるんじゃ無いかという事だ。
「ご主人様、今度は3体です。」
「それじゃあ、さっきと同じようにルシェが1体を頼む。俺が2体を受け持つから。」
待っていると砂バシリスクが3体現れた。
「1番左を任せた。ベルリア『ダークキュア』を待機してくれ。」
俺は走ってくるバシリスクを『鉄壁の乙女』の中で待ち構えて、射程に入った瞬間
『愚者の一撃』
再びバルザードの斬撃を飛ばしてバシリスクを消滅させるが、やはり凄い威力だ。
程なく強烈な疲れが襲ってきたのですぐさま
「ベルリア頼む。」
「かしこまりました。『ダークキュア』」
ベルリアのスキルのおかげで幾分か楽になった気がするので、ステータスを確認するとHPが12になっていた。なんとか動けるので最後の一体を仕留めにかかるが結構厳しい。
『愚者の一撃』
バルザードの斬撃を飛ばして消滅させる。
「あれっ?」
一応バシリスクは撃退できた。できたが、最初の一撃よりも明らかに威力が弱い。唸るような斬撃では無く、どちらかと言うといつもの感じに近い気はする。
そして、倦怠感が襲ってきたが、なぜかさっきよりきつい。
HPを確認すると2に減っていたので慌てて、低級ポーションを飲み干す。
「やっぱり、乱発するのはまずいな。HP2ってやばいな。『鉄壁の乙女』無しでは使用するのは難しいかも知れないな。一歩間違えると死んじゃうかもしれないしな。」
2発目の効果だが、効果が無かったかと言われるとあったような気もする。ただ凄くあったかと言われると無かったと思う。
しかも少ないHPから更に削ったせいか残りHPが2。
この『愚者の一撃』は間違いなく有用だが都合の良い使い方はできなかったので、あくまでも切り札としての使用に限られるようだ。
自分の生命を削って放つ一撃。しかも使用後のリスクを考えると確かに使用するのは、愚者だけかも知れない。
ただ今後も俺は間違いなく使うと思う。
パーティメンバーが危険に晒されるような状況に陥ったら迷わず使う。
シルとルシェが危険な状況に陥っても瞬時に使う。
たとえベルリアが危なくなっても確実に使うだろう。
そう考えると俺は間違いなく愚者なのだと思う。
今回は、たまたまかも知れないが次はHP1になるかもしれない。まさに生命の綱渡りだ。
いずれにしても考えていたような都合の良い使い方は出来ないようなので今後はいざという時に使っていきたい。