A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (220)
第221話 一時撤退
俺は今12階層に潜っている。
「ルシェよくやってくれた。助かったよ」
「なっ、なに言ってるんだよ。このぐらいなんでもないだろ」
ルシェはこう言っているが正直危なかった。恐らくサーバント抜きだとやられていた。
決して甘く見ていたわけではない。サーバントがいればどうにかなるだろうと言うのはあったかもしれないが、自分達なりに準備もしたし、レベルアップもしていた。
ただ経験値が圧倒的に足りなかったのかもしれない。
暗い所での戦いに慣れていなかった。小型の敵と戦う事にも慣れていなかった。
そのせいで考えが及ばず、事前の準備もその場での対応も出来なかった。
「みんな、来たばっかりで申し訳ないんだけど、一旦引き上げた方がいいと思う。このままだと次はやられてしまうかもしれない。今から戻ってすぐに準備し直さないか。」
「それがいいと思う。」
サーバントも含め全員が同じ意見だったようなので、魔核だけ回収してさっさと帰ろうとしたが、シルとルシェは空気を読まずに
「お腹が空きました」
「獄炎使いすぎたから、いっぱいくれ。もっとくれ。」
と言って来たので、みんなの同意を得て回収した魔核はそのまま2人の手へと渡った。
確かにこの2人しか活躍していないので文句は言えない。
地上に戻って来たので4人でダンジョンマーケットまですぐに向かったが
「装備って何がいるんだろう?」
「やっぱり暗闇だからナイトスコープ的な物じゃない?」
「凄く明るいライトみたいなのはどうかな」
「いやそれはやめた方がいい」
「使い慣れてないナイトスコープより良い気がするんですけどダメですかね」
「見やすくはなるだろうが、光源の元が特定できるから多分敵から集中攻撃を受けるぞ」
「ああ、それはダメですね」
「それじゃあ人数分ナイトスコープを買いましょうか」
ダンジョンマーケットについたので早速ナイトスコープの売り場を見つけて確認するが、頭に固定できる両眼タイプだと丁度15万円だった。片眼タイプとか手で持つタイプとかもあり金額もそれなりだったが、ダンジョンの戦闘では使えそうにないので15万円の物にする事にした。
それぞれ1個ずつ手にとってレジに向かう事にするが
「すいません、これあと3個ありますか?」
「海斗さん、4個も買うんですか?」
「ああ、シル達のも買っておこうと思って。サーバントも暗闇の中だと敵が見えないみたいだったからね」
「そうですよね。それは絶対必要なのです」
それにしても結構高い。4個で60万円。12階層では今まで以上に頑張る必要がある。必ず元を取らないといけないのでサーバント達にも活躍を期待したい。
ナイトスコープの引き渡しの前に暗い部屋に連れていかれて使い方と見え方を教えてもらったが、なかなか慣れそうに無い。
暗い所でもしっかり見えはするが、緑色で見える上に裸眼のようにはいかない。
これは戦闘になった時にはある程度動きが鈍る事も想定に入れておいた方がいいな。
それと同時に俺は一つの決心をした。
「みんな、お願いがあるんだけどちょっといいかな。情けない話だけど多分俺では、このナイトスコープを使ってもネズミとかを倒すのは難しいと思う。日中の猫でも手こずったぐらいだから、ナイトスコープを使ってネズミ退治は、ほぼ無理だと思う。だから小さな敵の時は俺は攻撃を諦めて盾役に徹しようと思う。だから攻撃はみんなに頼らせてくれないかな」
「そんな事?全然いいわよ」
「全く問題ないな。パーティだろ」
「海斗さん細かい狙いが苦手ですもんね。真剣な顔でお願いとか言うので何事かと思いました」
俺としては恥を忍んでの一大決心だったのだが、みんなあっさりしたものだった。文句の一つも言われるかと思ったが、やっぱパーティっていいな。
隼人達の話では無いが、俺は本当にパーティメンバーに恵まれているなあとしみじみ感じてしまう出来事だった。