A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (222)
第223話 バッドバット
俺は今12階層で走っている。
なぜかシルを抱っこしているのにルシェにもおんぶで背中にくっつかれた状態で全力疾走している。
途中迄は良かったが流石にこの状態で50m走る事には無理があった。
それでもなんとか敵を感知出来る位置まで辿り着き敵が7体である事が分かった。
しかも空中を飛び回っている様なので、虫か鳥だと思われる。
「あいりさん、空中の敵には『アイアンボール』をお願いします。ベルリアは・・・まあ援護してくれ。ルシェここまでくっついてきたんだ思いっきりやってくれ」
「あ〜あ。もうおしまいか。もうちょっと遠くても良かったな」
「ルシェご主人様を困らせて楽しんではいけませんよ」
「じゃあシルは抱っこされなくて良いんだな」
「い、いえそういう訳では・・・」
「おいおい2人とも真剣にやってくれよ。シルも『鉄壁の乙女』の効果が切れたらもう一回頼むぞ」
「申し訳ございません。かしこまりました」
「ふふっ。怒られたなシル」
「いや、お前も一緒だよルシェ」
この無駄な会話のせいで余計に呼吸が苦しいが更に近づくと、敵影をナイトスコープ越しに捉えることができた。
捉えた姿は空中を結構高速移動しているが小さめのコウモリだった。
大きなコウモリは結構恐怖の対象だが、このぐらいのサイズであればちょっとかわいい感じがする。
ただよくみると小さな一本角が生えている。
当たり前だが唯のコウモリな筈は無く眼前のやつは『アシッド』系の魔法を駆使するモンスターなので油断は出来ない。
ルシェとシルをその場に下ろしてから一応バルザードの斬撃を飛ばしてみたが予想通り外れてしまった。
俺とあいりさんは魔核銃に持ち替えて撃ち落とすべく連射する。
「プシュ」 「プシュ」
当たらない。地上の小さなモンスターでも当たらないのに空中で不規則な動きを繰り返すモンスターに当たる筈はなかった。
俺だけで無くあいりさんも苦戦している。
「ふふっ、ぜんぜん当たらないな。そろそろわたしの出番だな」
「わかったよ。はやく手伝ってくれよ」
「それじゃあ『破滅の獄炎』」
獄炎が空中の一角コウモリを丸焼きにして消滅させる。
ルシェはかなり軽い感じでスキルを発動したが威力は変わらず強力だ。
「姫流石です。見惚れてしまう技の威力ですね。素晴らしいです」
またいつもの様にベルリアのルシェに対する変なヨイショが始まった。
「まだコウモリは残ってるぞ、気を抜くなよ」
目視出来る限りまだ5体は残っているので俺は魔核銃を再び構え直して狙いをつけて発射するが、やはり当たらない。
しばらく続けていると隣であいりさんが1体仕留めた。
やはり俺は他のメンバーよりもかなり射撃の能力が低い気がする。1番使用歴は長いのだが才能の問題かもしれない。努力はしているつもりだけどちょっと辛い。
『ウォーターボール』
今度は氷の槍を飛ばしてみるがやっぱり当たらないので俺は牽制に徹することに切り替えた。
「ルシェもう一回頼む!」
「しょうないな〜。頼まれてやるよ。『破滅の獄炎』」
空中に向かって広がった獄炎により更に2体が消滅したので後2体だけだ。
この2体も間髪入れずに『アシッドボール?』を仕掛けてくるので気は抜けない。
コウモリの一体が比較的低空で飛来しながら攻撃を仕掛けてきた瞬間、ベルリアが何を思ったのか突然駆け出したと思ったらジャンプしてバスタードソードを一閃した。
「おおっ」
正にアニメか映画の世界の様な攻撃で上空の一角コウモリを一体葬り去ってしまった。
「すごいな」
上空の敵への攻撃手段を持たないベルリアは今回は出番無しのおまけだと思っていたが、流石は達人級だ。俺の想像を超えた攻撃手段で結果を残した。
残りは1体になったところで丁度『鉄壁の乙女』の効果が切れた。
『神の雷撃』
シルの声が聞こえてきたと同時に雷の閃光が走り最後の一体消え去ってしまった。
突然の攻撃に少し驚いたが最近、ルシェがいい意味でも悪い意味でも目立ちすぎてシルの影が薄めなので防御ばかりじゃ無く攻撃もしてみたかったのかもしれない。
いずれにしても敵を殲滅できたので良かったが、結果的に俺だけ1体も倒さずに終わってしまった。
次こそは1体は倒せる様に頑張りたい。