A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (227)
第228話 サラマンダー?
俺は今12階層で見えざる敵と戦っている。
見えざる敵とは言うものの完全に見えて無い訳ではなく少しだけ見えている。
ネズミより小さな何かが砂の上を絶えず移動しているが、小さすぎるのとナイトスコープ越しのせいではっきりとは正体が掴めない。
「ドガガガーン」
こちらがまごついている間にも大きな火球が襲ってくる。
「ミク、敵を確認出来た?狙えそう?」
「一瞬見えたけど流石にあれは無理よ。小さすぎる。狙ってるうちに逃げちゃうわ」
ミクはダメか。
「ヒカリン何とか『アイスサークル』で捕らえられないか?」
「やってみます」
ヒカリンが砂の上を凝視して『アイスサークル』を発動する。
何とか1体を捕捉する事に成功したが、連続で捕らえることは出来ない。
俺がバルザードの斬撃を飛ばして捕捉した1体は消滅させたが、捕捉した時にようやく姿を確認することが出来た。
敵の正体は蜥蜴だった。大きさがおそらく7〜8cmぐらいだろうか?普通のと比べても一回り以上小さいサイズだがよく見ると鱗が鎧の様になっていた。
大きな火球を発現する蜥蜴。これはまさかあの有名な火蜥蜴サラマンダーか!?
「みんな、あの火蜥蜴ってもしかして、あのサラマンダーじゃないか?」
「海斗、さすがにそれはないだろう。サラマンダーだぞ。あんなサイズじゃないだろう」
「いや、でもあんな大きな火球を撃ってくるんですよ。まさに火蜥蜴じゃないですか」
「言われてみれば確かにそうだが」
「ご主人様、本来のサラマンダーは精霊の一種なので同じ物かどうかは分かりませんが、大きさは手のひらサイズの事もあるようなので、全く違うとは言い切れません」
おおっ。やっぱりあれがサラマンダーか。ファンタジー物のレギュラーキャストと言っても過言ではない有名なやつだ。俺が目にしている蜥蜴がそうだとしたらちょっと感動だ。倒し方に苦慮しているが、それは置いといて感慨深い。
「おい、海斗。馬鹿面してないでどうにかしろよ」
俺の感動シーンをルシェの無粋な声がかき消してしまった。
どうしよう?後7体。ヒカリンの『アイスサークル』でもも7体全部を同じ戦法で捕らえる事は出来ないだろう。こうなったらとにかく火力押ししかない。
「ヒカリン『鉄壁の乙女』の効果が切れたら『アイスサークル』を発動して氷の柱を出して。あいりさんとミク、ヒカリンは氷柱の影に隠れて。危なくなったら重ね掛けして防いで。ベルリアは前衛で炎の球を出来るだけ撃ち落としてくれ。俺とシルとルシェで攻撃をかけるぞ」
ヒカリンの『アイスサークル』が合図となり俺たちは打って出た。
前方方向に向けて俺を先頭に3人で走り出す。砂の上を凝視して見つけ次第即攻撃だ。
すぐに一体見つけたのでシルに声をかける。
「シル頼んだぞ」
「かしこまりました。『神の雷撃』」
そのまま止まらずに前進するとすぐにもう一体も発見したので今度はルシェが狙い撃つ。
「チョロチョロするな蜥蜴のくせに。『破滅の獄炎』」
問題なく2体を葬り去ったがまだ5体残っている。
更に奥に走ると今度は3体がそれぞれ離散するのが見えた。
「真ん中は俺がやる。左右に逃げたのを頼む」
俺の通常攻撃では当たらない。狙うには精度が足りず、確実に倒すには火力が足りない。
俺にはこれしか無い。
『愚者の一撃』
バルザードの斬撃に目一杯の威力を込めて地上の火蜥蜴目掛けて放つ。
唸りを上げた斬撃が周囲の砂毎、蜥蜴を爆散させた。
強烈な倦怠感が襲って来たのですぐさま低級ポーションを飲み下すとすぐに動ける状態に回復した。
俺が一連の動きをしている間に左右の蜥蜴はシルとルシェがしっかりと仕留めていた。
後2体。
後方から『アイスサークル』の氷柱目掛けて火球が2個飛んでいったのが見えた。
まずい。見落としてしまったらしい。
火球の1つはベルリアが斬って落とした。相変わらず肩口にダメージを受けてはいたが『ダークキュア』があるので問題ないだろう。
もう一発は氷柱にぶつかって氷柱を砕いて水蒸気を上げているが、どうやら氷柱が耐えきったらしい。
「シル、ルシェ後ろに戻るぞ!」
3人で元の位置に戻るべく走りだしたが、最後の2体はあいりさんとミクがそれぞれ『アイアンボール』とスピットファイアの連射で倒してくれた。
『愚者の一撃』の代償として低級ポーションを1本使ってしまったので10万円が飛んで行ってしまった。
落ちている火蜥蜴の魔核を見ると結構大きいが1個1万円以上で買い取ってもらえるかはわからない。
「ご主人様、お腹が空きました」
「『破滅の獄炎』連発したんだからいっぱいくれよな」
あ〜っ、この2人の分もあるから完全に赤字だな。
次こそ俺と相性の良い敵が出ると良いな。何とか次で取り返したいところだ。