A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (233)
第234話 進撃の前澤さん
俺は今学校にいる。
真司と隼人が来週の遠征に向けて並々ならない意欲をもっていた事が分かったので是非ともその情熱をダンジョン探索に向けて欲しい。
「海斗、来週遠くのダンジョンまで行くの?」
「ああ、春香。真司達から聞いたの?来週は初めての遠征イベントで隣の県のダンジョンまで行くんだよ」
「遠征イベントなんてあるんだね」
「高木君っていつもダンジョンに潜ってるイメージなんだけど、もしかして毎日ダンジョンに行ってる?」
珍しく春香の友達の前澤悠美さんが話に混ざってきた。
「まあ大体ダンジョンに潜ってるけど、それがどうかした?」
「ダンジョンばっかりでよく飽きないんだ?」
「最近は毎日変化が結構あるから全然飽きるとかは無いな」
「今度の連休も遠征でダンジョンに潜るんだ?」
「そうだけど。真司と隼人と3人で」
「男子3人で行くんだ。ちなみに連休とかに春香と遊びに行ったりしないの?」
「えっ?春香とはこの前、映画に行ったけど」
「春香、高木くんは、こう言ってるけどそれって結構前だよね」
「うん。まあちょっと前に行ったかな」
「高木くん、もうちょっと春香と遊びに行った方がいいんじゃない?」
「何で前澤さんがそんな事・・・」
「それは春香の友達だからだけど」
「はあ、それは知ってるけど」
何だ?今日の前澤さんがちょっと怖い
「高木くん、最近春香と仲良くしてるよね」
「まあ、お蔭様で?と言うか、春香の好意で仲良くと言うか時々お買い物とかに行かせてもらってます」
「お買い物ってデートだよね」
「いや、デートじゃなくてお買い物だけど。そうだよね、春香」
なんだ?外の寒気が何処かから吹き込んできたのか?寒い・・・
「うん。お買い物は、まあ、お買い物だけど。ね」
何かまずいのが?歯切れの悪い答え方だ。俺とお買い物に行った事は内緒にしたかったのか?いやでも前澤さんは既に聞いていた様だし。なんて答えればいいんだ?
春香の受け答えを聞いて、それまで何ともなかったのが急に焦りを覚えてしまった。
「ふ〜ん。やっぱり高木くんは思った通りね。高木くんがダンジョン好きなのは分かったけど、それ以外のプライベートも大事にした方がいいじゃない?」
やっぱりって一体何が思った通りなんだ。
「いや、ダンジョン以外のプライベートって言ってもな〜特に俺には何も無いけど」
そう答えた瞬間、俺に真冬の湖底に沈んだ様な重寒さが去来した。
なんだ?俺はやばいのか?突然変な病気にかかった!
「高木くん。とにかく春香をもっと大事にして!」
「う、ううん」
俺は一体何を怒られてるんだ?やばい。春香をもっと大事にして?そもそも俺的にはMAX大事な女性だけど、俺は彼氏でも何でも無いんだぞ?どう大事にしろと言うんだ?
俺は何か悪い事した?
「高木くん。遠征も2人が嬉しそうに出会いがどうとかって言ってたんだけど」
「ああ、それは真司と隼人が、出会いを求めてるってだけだよ」
「高木くんも求めてる?」
おおっ。意識が遠退きそうになる。熱が急激に出てきた。インフルエンザか?寒い・・・
「いや俺は全く求めてないけど。そもそも遠征に女の子がいるかどうかもわからないし」
「高木くんは、普段から2人と一緒にダンジョンに行ってるんだ?」
「いや、時々一緒に潜る事はあるけど、普段は別だよ」
「それじゃあ、普段は誰と行ってるの?」
「ああ、普段は俺1人で潜ってるんだ。基本俺ずっとソロだったから、土日だけイベントで一緒になったメンバーと潜ってるんだ」
「ふ〜ん、そうなんだ。まあ普段ソロって言うのも何か、似合ってる気もするからそれはいいと思うけど」
「ああ、それはどうも」
これは褒められているのか?
「それじゃあ、逆に言うと平日はいつでも春香と遊べるって事だよね」
「まあ、それは、いつでもってわけじゃ無いけど。言ってもらえれば大体」
「高木くん。女の子から言ってくれればってどう言うことかな。高木くんから誘ってくれないのかな」
圧が凄い。インフルエンザの俺にはきつい・・・
「ああっ、春香、今度からもう少し平日にも誘って迷惑じゃないかな」
「私は勿論いいんだけど、ごめんね」
「そこは、春香が謝るところじゃ無いでしょ、ねえ高木くん」
「はい。そうですね。春香は何も悪く無いです」
「本当にごめんね」
「春香!謝らない」
なぜか前澤さんが参戦してきた会話はそれで終わったが、俺は会話中に病気になってしまったようだ。
結局何の会話だったのかよく分からないが、とりあえず平日にもっと春香を誘うことになったらしい。
俺としては願っても無い事なので、何も言う事はないが、春香は本当に良かったのだろうか?