A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (234)
第235話 スナッチの覚醒?
俺は今12階層に潜っている。
12階層に入ってから探索のペースが落ちてきているので、どうにかこの週末でペースアップしていきたい。
「そういえば、ミクは来週の連休に何処か行くのか?」
「まあ、家族と出かけるのと、ちょっとイベントに行くけど」
「イベントって何?」
「あれよ、あれ」
「あれって何?」
「カードゲームのイベントがあるのよ」
「あ〜。前に言ってたな。現役だったんだ」
「そうよ。何か文句ある?」
「いやいや、全くないよ。むしろ趣味があって羨ましいよ」
「海斗は趣味って何か無いの?」
「俺は趣味がダンジョンみたいなもんだからな〜」
「まあ、打ち込めるものがあるのは良いことよ」
「あいりさんは何するんですか?」
「大学の友達と遊ぶのと、道場の練習生募集イベントに参加だな」
「家の手伝いですか。流石ですね。ヒカリンは?」
「わたしは家でゲームと家族とお泊まりでお出かけなのです」
「ヒカリンもゲームするのか。どんなゲーム?」
「普通のゲームです。普通のです」
「ああ、そうなんだ。普通のね」
普通のゲームって何だ?興味は有るが聞いてはいけないような気もしてスルーしておいた。
俺は空気が読める男だ。
「ご主人様、敵モンスターです。8体います。前方に注意をお願いします」
「いつも通り、俺とベルリアが前衛に。あとのみんなは後衛で、ミクはスナッチに自由にやるよう指示して」
「分かったわ」
しばらく前方に注視していると、ナイトスコープの視界にネズミの姿が映った。
バルザードを顔の前に構えて待ち構えるが、次の瞬間後方から小さな影が飛び出していくのが見えた。
飛び出した影はそのままネズミに集団に向かって行き、鋼鉄の針を射出してネズミを次々に倒して行く。
倒すスピードが早すぎて、後衛のメンバーも攻撃する事が出来ていない。
恐らく20秒程の時間だろうか?
鋼鉄の針が何度目がに放たれたと同時に敵の気配が完全に消えた。
「凄いな。シル敵はもういないか?」
「はい。8体ともに消滅しています」
「ミク、スナッチやったな」
「うん。ありがとう。これも海斗のおかげよ」
先週迄全くと言って活躍の場がなかったスナッチだが、ここに来て一番の戦力に躍り出たと言っても過言では無い。俺も苦労したかいがあった。
昨日、急激な体調不良に見舞われた俺は、ダンジョンに潜るのをやめたが、下校の途中で体調も上向いて来たので急遽ミクに連絡を取った。
先週、何とか12階層を探索出来たものの、敵モンスターとの相性の悪さは如何ともし難いので、何とかスナッチを戦力に組み入れられないか色々と考えていた。
今は全く戦力になっていないが、普通に考えて、ネズミとか蜥蜴とかに一番相性が良いのはスナッチなんじゃ無いかと考えたのだ。
スナッチが戦力になれない理由はただ一つ。視界の問題だけだ。
カーバンクル用のナイトスコープが有れば一番良いが、そんなものは売っているはずもないので自作するしか無い。
ミクに連絡して内容を伝えると、試してみたいとの事だったので早速ダンジョンマーケットに向かった。
まず購入したのは単眼の小型ナイトスコープ。本来両眼の方が良かったが、スナッチの目の大きさに合うものがなかったので単眼で我慢する。
次に向かったのはペットショップだ。
ペットショップで小型犬用のハーネスを買い、その後100円ショップで紐や布類等を購入した。
裁縫とかは全く心得がないので、マジックテープとアイロンを多用して継ぎ接ぎだらけだが、ハーネスに調節の効く小型のヘッドギアのようなものを自作して固定し、そこにナイトスコープを取り付けた。
強度的に不十分なので、補強グッズを色々買い足してから、今日スナッチに実際に着用させてから補強した。
手作り感満載でお世辞にもスマートとは言えないが、効果は劇的だった。
俺達には的が小さすぎるが、スナッチには全く問題にはならなかった様であっと言う間に敵8体を葬り去ってしまった。
これなら、今後の12階層の探索がかなりスムーズになるかもしれない。スナッチも蚊帳の外感があったので、昨日慣れない作業に悪戦苦闘した甲斐があって本当に良かった。