A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (236)
第237話 理由
俺は今12階層を引き返しているところだ。
順調に12階層の探索が進んだので、今日は早めに切り上げてギルドに向かう事にしたのだ。
寒さと暑さを階層毎に体感させられるので、10階層でのシャワーは欠かせない。
他のメンバーも習慣づいてきたようで、最近女性陣はマイシャンプーやマイソープをマジックポーチに忍ばせているようだ。シルとルシェとも日替わりで入っているので、2人を相手に香りを変えたりして楽しんでいるようだ。
俺とベルリアは、備え付けのシャンプーとボディソープで済ませているが、十分満足している。
ベルリアは何故か女性陣の香りを嗅いで羨ましそうにしていたが、この士爵級悪魔は意外に女子力が高いのだろうか?
「あ〜さっぱりしたな。それじゃあ、みんなでギルドに行こうか」
「すまない。私はちょっと用があるから先に失礼してもいいだろうか?」
「わかりました。他の2人はどうする?俺1人でも問題無いけど」
「私は特に予定はないから一緒に行くわ」
「私も一緒に行くのです」
あいりさんが先に帰ったので地上に出てから3人でギルドに向かった。
基本パーティ4人でずっと行動していたので何となく不思議な感じだ。
「海斗さん。海斗さんから見てあいりさんの事はどんな風に見えますか?」
「あいりさんか。行動が落ち着いていて頼りになるよな。俺兄弟とか居ないから、こんなお姉さんがいたら良いなとは思うよ」
「そうですよね。私も憧れます。凛としていて、私も将来はあいりさんのようになりたいのです」
「えっ?ヒカリンってあいりさんみたいになりたいのか?」
「何かおかしいですか」
「いや、全くおかしくはないんだけど、ちょっとベクトルが違うというか。あいりさんもヒカリンもそれぞれに魅力があるわけだから、それを生かしていったほうがいいんじゃないかな」
「海斗さん。ナチュラルに人たらしですね。普段全く空気を読める感じではないのに・・・謎です」
「それって、褒めてるの?」
「もちろん褒めてますよ」
「でも確かにあいりさんには憧れるわよね。王華学院に受かれば1年だけど一緒の大学に行けるし楽しみだわ」
「俺も行けるように頑張らないといけないな」
「海斗は、ちゃんと受験勉強してるの?」
「受験勉強?特にはしてないけど、俺の場合とにかく授業集中だよ。ダンジョンで体を動かしてお金を稼ぐ。
その代わりに授業を集中して聞く。その方が自分に合ってるみたいで最近成績も上がってきたんだよ。それに俺には絶対に王華にいかなければならない理由があるから死んでも受かるよ」
「海斗って学校の勉強だけで何とかなりそうなんだ。思ったより頭いいのね。それより絶対に受からないといけない理由って何?」
「いやそれは、まあ、内緒だ」
「女ね」
「女ですね」
「い、い、いや。そ、そんな不純な理由では・・・」
「オープンキャンパスで一緒にいた可愛い子でしょ」
「うっ。どうしてわかった・・・」
「逆にどうして分からないと思ったの」
「海斗さん。分かり易すぎです。会った事のない私でも直ぐに分かりましたよ。隠すつもりならもう少し、ポーカーフェイスを覚えた方がいいのですよ」
「そうかな」
年下のヒカリンにこう言われてしまう俺って・・・
「まあ、3人揃って入学できれば、みんなで友達になれるわね。それと遠征に行くのってあの時一緒にいた男の子達なんでしょ」
「うんそう。隼人と真司だよ。結構気のいい奴らだからよかったら今度紹介しようか?」
「紹介は特に大丈夫だけど、彼らも王華学院うけるのかしら?」
「どうかな。オープンキャンパスに興味があって来たみたいだけど。まあ一緒に受ければ俺は嬉しいけどな」
「一番最悪なのは5人で受けて海斗だけ落ちるパターンね。注意した方がいいわよ」
「なんて不吉なことを。注意した方がって、注意のしようがないだろ。まあ頑張って勉強するよ」
「いいですね。楽しそうです。私もお二人が王華学院に通われるようなら、志望してみます」
「ああ、それはいいな。みんなで通えるようがんばろうな」
もうすぐ3年生になるが運命の受験に向けてダンジョン探索も一層頑張りたい。