A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (237)
第238話 魔法のハサミ
俺は今探索者ギルドに来ている。
目的は一角コウモリのドロップアイテムの鑑定だ。
いつものように日番谷さんの所に並んで順番を待つ。
「次の方、どうぞ〜」
「はい。よろしくお願いします。今日はアイテムの鑑定をお願いします」
「はい。どのようなアイテムでしょうか?」
「え〜っと、これとこれです」
「ちょっと海斗、それも鑑定するつもりなの?」
「こちらはハサミと金属素材ですね」
「海斗、その金属多分銀よ。30000円ぐらいの価値しかないのよ。鑑定料の方が高いぐらい。勿体無いじゃない」
「いや、ミクよく考えて見てくれ。これがもしただの銀じゃなくて魔法銀だったらどうする。銀色の希少金属だったらどうするんだ。ドロップアイテムなんだから、どんな素材でもあり得る」
「まあそれはそうかもしれないけど。日番谷さんはどう思いますか?」
「普通、魔法銀のような希少金属はそうそうドロップするようなものではありませんが、高木様は普通では推し量れない部分がありますので私からは何とも申し上げられません」
「俺は可能性にかけたいんだ」
「わかったわよ。気の済むようにすればいいけど、ただの銀だったら次からは考えてね」
「それはもちろんだよ。じゃあお願いします」
「それでは鑑定料として6万円頂戴いたします」
日番谷さんがいつものように奥の部屋にアイテムを持って行った。
「楽しみだな〜」
「海斗さん、あまり期待し過ぎない方がいいですよ。海斗さんのようにレアアイテムばかり手に入れる事は本当に稀なのです」
「わかってるって。大丈夫だよ」
5分程で奥から日番谷さんが戻ってきた。
この瞬間は何回経験してもガチャを引くような感覚があり緊張する。
「こちらが鑑定結果になります」
鑑定書を2枚受け取ったので早速鑑定内容を確認する。
一枚目の鑑定結果は
銀鉱石・・・・銀で出来た塊。純度は99:999パーセントの銀
おおっ。やはり銀鉱石だったか。これは俺が文鎮として使うしか無いな。ただ銀って酸化するんだった気がする。普段からの手入れが必要だな。
「海斗、やっぱり銀だったわね」
「そうだね。銀だったね・・・」
「まあ海斗が納得ならそれでも良いけど、ハサミの方はなんだったの?ただのハサミだった?」
俺はミクに促されてもう1枚の鑑定書に目を移す。
マジックシザー・・・魔法の力により強化されたハサミ。通常のハサミよりも切れ味が鋭い。
これは、文字通りマジックアイテムだ。
「ミク、やったぞマジックアイテムだ。マジックシザーで普通のハサミよりも切れ味が鋭いらしい」
「それってよく切れるハサミって事?」
「多分そう言う意味だと思うけど」
「海斗さん、それって何かの役に立ちますか?」
「えっ?」
銀が普通の銀だった事もあり、マジックアイテムという事が単純に嬉しくて舞い上がってしまったが、言われてみて気がついた。
確かに切れ味が鋭いハサミをどうやって生かせば良いのだろうか?
一応刃物には違いないので攻撃に使えなくはないが、初期のバルザード以上に使いにくそうだ。
「良かったら、2人のうちどちらかが使ってみる?ヒカリンにはこの前マジックアイテムを渡せなかったし、もし必要だったら」
「海斗さん大丈夫です。ハサミは流石に使いようがありません。私はまた別の機会にマジックアイテムを頂ければ良いのです」
「そうか、それじゃあミク、これいる?スピットファイアの足しにならないかな?」
「ならないと思うわ。むしろ分解して打ち直しでも出来れば良いんでしょうけど、流石にハサミの状態ではね」
2人ともに断られてしまった。あいりさんも業物のなぎなたが有るのにハサミが必要とは思えない。
「日番谷さん。このマジックシザーって売れたりしますかね?」
「はい、一応マジックアイテムですので買取は可能ですが、余り需要が有る物ではありませんので5〜10万円の間だと思われます。それでも普通のハサミよりは遥かに良いお値段だと思いますよ」
確かに普通のハサミはそこまでの値段しないので高額には違いないが、売ってしまうには微妙な金額すぎる。
今後何かの役に立つかもしれないし、役立て方をどうにか考える方向でとりあえず残しておく事にした。