A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (238)
第239話 カフェの扉
俺は今1階層に潜っている。
今週末はついに他県への遠征イベントだ。
このイベントは、ボスを倒すとかそう言った事が目的では無く、殆ど行く事の無い他県のダンジョンを経験させる目的が大きい。経験値を積ませて探索を効率よく進める糧にして欲しいと言うギルド側の思惑と、遠征者と地元の探索者両者の刺激になれば良いというような意味合いとが含まれている。
俺も初めての事なので楽しみにしているが、それだけに準備は念入りにしておきたい。
特に魔核が足りなくなっては話にならないので、魔核狩りに励んでいる。
そして消耗品も結構買い込んだ。
カップラーメンや栄養補助食品、そして暇つぶしのトランプ等だ。
流石に三日分をリュックだけに詰め込むのは無理だったので生まれて初めてキャリーケースというものも買ってみた。将来も使えるように少し大きめのものにしてみたが、実際に揃えた物を詰め込んでみると、少し大き過ぎたかもしれないが、大は小を兼ねると言う言葉もあるのでまあ大丈夫だろうと思う。
「みんなもここ以外のダンジョンに行くのは初めてだから、慎重に行こうな。それと真司達の事も一応頼んだぞ。アイアンランクになったとは言ってもまだまだ成り立てて危ない所もあるはずだから、サポート頼むな」
「ご主人様のご友人なのですから、万全のサポートをさせていただきます」
「マイロード、私にお任せください。精一杯がんばります」
「まあ、あの2人だろ。任せとけって。問題ない」
流石俺のサーバントは頼もしい。まあダンジョンが変わっても遅れを取るような事は絶対にないだろう。
準備万端で金曜日を迎えたので、この日はダンジョンは休みにして、先週約束したように平日だが春香を誘ってみようと思う。
ただ、平日の放課後に春香を誘って何をすべきかが思いつかない。
「あの、春香。先週約束したから、お誘いしたいんだけど、今日の放課後は、ご予定はいかがなものでしょうか?」
「うん、大丈夫だよ。どこか行きたい所とかあるの?」
「いや、それが特には。春香と行ければ俺は、どこでも良いです」
「それじゃあ、今学校の女の子に流行ってるカフェがあるんだけど、行っても良いかな?」
「もちろん良いよ。カフェねカフェ」
流石は女子高生、カフェか。
俺は今までの17年の人生の中でカフェと呼ばれるものに行った事がない。
正直、今の生活にカフェは全く必要がなかった。
ジュースもお菓子もコンビニと自販機が有れば用足りるので、ダンジョンと学校が主体の俺の生活には、全く必要のないものだった。
遂に俺のカフェデビューの日が来てしまったらしい。
よくTVでカフェカフェ言っているのを見るので、カフェの事は勿論把握している。
お洒落な人達や女子高生が所謂スィーツや美味しい飲み物を飲む所だ。
図らずも今日、俺も大人への階段を一段登る事になるようで、行くことが決まってから落ち着かない。
放課後になり、春香とカフェに向かう事になった。
「海斗、それじゃあいこっか。場所は私がわかるから」
「春香、そのカフェって、行った事あるの?」
「ううん、行った事はないけど、前にクラスの子達がオススメだって言ってたから」
「そんなんだ。それじゃあお願いします」
春香と並んでカフェまで向かうが、やっぱり並んで歩くだけでも緊張してしまう。
今日の学校の授業の事などたわいも無い話をしながら15分程歩いていると
「海斗、ここなんだけど」
おおっ、ここか。流石は女子高生に人気のカフェ。外観からしてなんか洒落ている。
少々緊張しながらも、その事を春香に悟られないように気を配りながら、俺はカフェの扉を開けた。