A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (24)
第24話 シルのレベルアップ
シルの気持ちが判明してから1週間が経った。
俺は、とにかくシルにも、意識的に優しく接することを心がけている。
ただし難しいのは、シルに優しくしすぎると、今度はルシェリアの機嫌が目に見えて悪くなるのだ。
俺にどうしろというのか
女性とのふれあい経験が皆無の俺にどうしろというのか。
よく、ドラマや本の中の主人公は同様のシュチュエーションでもうまくやっている。
むしろ、ハプニングやお互いのやりとりを楽しんでいる風ですらある。
鈍感系主人公であれば、完全スルーで楽しくやれるのだろう。
しかし、ここは現実。リアルである。
俺にはそんな芸当はできない。
できるはずもない。
俺にできるのは、神経をゴリゴリとすり減らしながら2人の顔色を伺いながら、やっていくことだけだ。
そんな殺伐とした精神状態を抱えながら、ストレスのはけ口を求めるように、さらにモンスター退治にのめり込んでいった。
3階層のモンスターを倒しに倒した。
もちろんシルとルシェリアに依存した戦い方は変わっていないが、最近、流れ作業のように手慣れてきてしまった。
ただしお金は一切貯まっていない。
シルへの魔核供給量をルシェリアに合わせて増やしたため、倒しても倒しても一切俺の手元には残らなくなってしまったからだ。
金欠状態で、いつものように ワイルドボア3匹セットを狩った直後
シルに変化が現れた。
『ピカーッ!!!』
シルの体全体が青白い光に包まれ、発光した。
数秒だっただろうか、すぐに発光現象はおさまった。
「なんだ、どうしたんだ!?・・・・・」
これはもしかして。 俺は慌ててシルのステータスを確認した。
「やっぱりそうか。シルレベルアップしたぞ ! やったな !」
「え。本当ですか!?嬉しいです。これもご主人様のおかげです。これからも頑張りますね。」
「ああ。これからも頼んだぞ。」
これがレベルアップしたシルのステータス
種別 ヴァルキリー
NAME シルフィー
Lv2
HP140
MP 105
BP 190
スキル 神の雷撃 鉄壁の乙女
装備 神槍 ラジュネイト 神鎧 レギネス
特に新しいスキルが発現したわけではないが、ステータスが上昇している。
数値が15〜20 上昇している。
さすが俺とは比較にならない上昇数値だ。
よし、せっかくだからスキルの威力を試してみるか。
すぐにヘルハウンド3匹を発見したので
「シル、スキルの変化を見てみたいから『神の雷撃』を使ってすぐに『鉄壁の乙女』をかけてくれ」
「かしこまりました。『神の雷撃』 『鉄壁の乙女』」
「ズカカカガーン」
「すげっ」
いつもより、大きな爆音を残し、2匹のヘルハウンドが消失していた。
残った1匹がすぐに襲いかかってくるが『鉄壁の乙女』の効果に阻まれている。
変化を見るために、効果が切れるぎりぎりまで様子を見てから、ボウガンで仕留めた。
結果はもともと60秒程度だった効果時間が90秒に伸びていた。
2つのスキルとも、目に見えて威力が上がっている。レベルアップすごいな。
これなら4階層も楽勝じゃないのか?
この時はこんな風に安易に考えていた。
いつものようにシルが
「お腹空きました。」
といってきたので、いつものように魔核を渡すことにした。
今回はスキルを連発したので2個の魔核を渡してやった。
魔核を摂取したシルが、もじもじしながら、俺の方をジーッと見つめてきている。
「ん?どうした?」
「ご主人様、お腹がまだいっぱいになりません。もう1個いただけませんか?」
「え?」
どういうことだ?今までスキル一発で魔石一個以下で大丈夫だったはずだ。
シルがこんなことを言ってきたのは初めてだ。
なんで?
冷静になって考えをまとめると、すぐに答えは出た。
レベルアップで威力が上がった分、消費MPも上がったのか。
よく考えたら当たり前のことだった。
リアルの世界では、都合よく威力だけ上がるなんてことはなかった。
高出力、悪燃費。
高級外車のようだ・・・・
庶民には維持できない・・・・
やばい。
今でも魔核と懐具合は、いっぱいいっぱいなのに、これ以上魔核が必要になれば、シルを連れてダンジョンに潜ることが出来ない。
どうしようもない。
詰んだ。
俺はシルのレベルアップによって窮地に追い込まれてしまった。