A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (260)
第261話 下層
俺は今、平面ダンジョンの下層を彷徨っている。
既にかなりの時間が経過しており、スマホを見ると時間は16時となっている。
朝から潜っているのでかなりの時間が経過している上、相当数の逃走劇を演じている為、体力がかなり削られてしまっている。
「ご主人様、前方に敵モンスター4体です」
「よし、じゃあこっちに逃げるぞ!」
「はあ、はあ、はあ。海斗、結構きついな」
「頑張れ、まだ半分も来れてないんだ!走るぞ」
「く〜っ。こんな事なら普段から走ってればよかった」
「ご主人様、もう大丈夫です、追ってきていません」
下層に落ちてから同じ事を何度も繰り返している。
逃げる度に迂回をしているので、なかなか目的の階段までの距離が詰まらない。
正直かなり焦りを感じているが、表には出さない様に意識する。
「海斗、まだまだかかりそうだな。今日中に戻るのは無理じゃないか」
「う〜ん。まあ出来るだけ進んでみてダメだったら、ダンジョンで野宿するか。俺的にはエキストラベッドより広くていいかもな」
「海斗は、すげーな。この状況で冗談言えるんだからな。尊敬するよ」
「いや、結構本気だぞ」
まあ、いくら小さくてもふかふかのベッドとダンジョンの床では勝負にならないが。
「ご主人様正面に3体です」
「よし、じゃあこっちに逃げるぞ」
右折方向に逃げるべく全員で駆け出そうとするが
「ご主人様待ってください。こちらにも敵の反応があります。挟まれました」
遂に来たか。今迄全部を避けてこれただけでも奇跡的だ。やるしかない。
「シル、敵が見えたら『鉄壁の乙女』を頼む。ベルリアと俺で敵を討つぞ!ルシェも敵を見定めて攻撃してくれ。真司と隼人は後方から援護を頼む」
俺達が陣形を整えて待ち構えていると前後から現れたのは武装したオーガだった。オーガだが隠しダンジョンにいた奴同様通常のオーガよりもでかい。
後ろから3体、前から2体の計5体が相手だ。
「とりあえず、先に2体を潰すから、後ろの3体は真司と隼人が牽制してくれ」
俺はベルリアとアイコンタクトを取りタイミングを図って前方の2体に向かって駆け出す。
最初からナイトブリンガーの能力を使用した状態で突っ込む。
バルザードを構えて斬撃を放つが、見事にかわされてしまった。
見えてるのか!?
ナイトブリンガーを使用してのバルザードの斬撃は、ほぼステルス攻撃に近いので今まで避けられた事はなかった。
それがこのオーガにかわされてしまった。
俺は警戒を強めて距離を保ちながら移動を試みるが、オーガが移動方向をみてくる。
やはり見えてるのか?
ただよく見ると俺のいる場所より若干視線がずれている気がするので完全に見えている訳ではない様だ。
もしかしてレベルの高い敵には認識阻害の効果が薄まるのか?それとも俺とのレベル差の問題か?
ただ全く効果がない訳ではない様なので、今度は俺自身の気配にも気を配り、出来るだけ気配を薄める。
ナイトブリンガーとの隠密コンボを期待して慎重に音を立てない様に移動する。
今度は、オーガの反応が鈍い。
一応視線が追っては来ているが、何となくしか追えていない。
恐らくこれならいける。
俺は再度移動し、その直後にバルザードの斬撃を飛ばす。
今度は避けられることはなく、しっかりと命中したが全身を覆っている防具に阻害されて致命傷には至らなかった。
恐らくこのままでは埒が明かない。
「ウォーターボール」
俺は魔氷剣を出現させて、そのまま斬撃を放った。
斬撃を放つと同時に気配を薄めたまま、オーガの後方に素早く移動してそのまま背後に飛び込み、魔氷剣を突き刺した。
防具に弾かれない様イメージは切断。
背中から貫いた刃をそのまま横薙ぎに振るい、胴体を斬って落とす。
「ふ〜っ」
時間的にはそれほど経過していないが結構疲れた。
アイテムやスキルに助けられて勝つことはできたが、基本的なレベルはこのオーガの方が上だと感じる。
集中して臨まないとやられる。
俺は息を整え次の敵に向かった。