A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (268)
第269話 フラグはもう立てるな
俺は今敵と交戦している。
俺は蜥蜴型のモンスター1体を撃退することに成功したが、ベルリアのバスタードソードが完全に折れてしまった。
原因はまず間違いなく『アクセルブースト』だろう。
先程の亀型といい、蜥蜴型といい異様に固かった。
魔氷剣でも一気に切断することは出来なかった。
ベルリアも同じく硬くて歯が立たない所を無理やり剣技と『アクセルブースト』を使用してねじ込んでいた。結果100万円のバスタードソードの耐久力を超えてしまったと言う事だろう。
恐らくベルリアの『アクセルブースト』を最大限活かすにはもう少し硬度の高い剣が必要なのだろうが、残念な事に値段も高い……
とにかくベルリアが戦力から外れたのは痛い。
「真司、亀型の足止めを頼む!逃げながらでいいから」
どう考えても、こちらの手数が足りないので真司に足止めを頼むが氷刃魔法で攻撃してくるので危険だ。
俺は再度、もう一体の蜥蜴型に挑むが、先程の戦いを警戒して溶解液を吐きまくっていて近づく事が出来ない。
真司に目をやると槌を振り回して亀型に対抗しようとしているが、大きなダメージは与えることが出来ていない。
「おお〜おっ、やべ~。魔法がやばい。海斗、マントに穴が、穴が空いたぞ!」
真司が氷刃魔法を避けた瞬間いくつかがマントにかすった様でしっかりと裂けていた。
真司、マントは裂けるものなんだよ。穴も開くし、燃えもするんだ。形あるものはいずれ無くなるんだ。
いずれにしても真司では長くは持たなさそうだったが
「そうだ、師匠これ使ってください」
そう言って真司はサブウェポンの双剣をベルリアに投げて寄越した。
真司にしては素晴らしい機転だが、ベルリアって双剣使えるのか?
俺は目の前の敵に集中する。
この溶解液をどうすればいい?時間をかければかけるほど、状況が悪くなる可能性がある。
俺はナイトブリンガーの効果を再度発動してから側面に廻ろうとするが、反応されてしまう。
意を決して、反対方向に回り込んだ瞬間、すでに穴が開いてしまったマントを蜥蜴型の頭部に向かって投げつけた。
溶解液でマントが溶けていくが、その瞬間前方への攻撃は弱まった。
マントは1枚しかないのでこの機会を逃すことはできない。
一気に踏み込んで、魔氷剣を叩き込む。
先程と同じく一度では切断し切れないが、想定済みなので慌てる事なく追撃をかけ、切り口に攻撃を重ね、蜥蜴型の頭を落とす。
やはり硬いが、なんとか倒せた。後は亀型だが、真司とスイッチしてベルリアが相手をしていた。
双剣を構えて、連撃を繰り出している。
真司の二刀流とは明らかに違い洗練されている。
闇雲に振り回すのではなく、2刀共に剣技として成立した一撃を繰り出している。
圧倒しているものの、やはり威力が足りない様で致命傷は与えられていない。
手伝おうと歩を向けた瞬間、ベルリアが『アクセルブースト』を発動した。
それも一刀でなく二刀共に発動した様で一刀目の攻撃が当たった瞬間二刀目を繰り出して、そのまま亀型の頭を落とし切ってしまった。
「ベルリア、凄いな」
流れる様な高速の連撃に思わず声が出てしまった。
今まで2刀流と言う発想がなかったが、ベルリアにはこちらの方が向いているのかもしれない。
威力が落ちる部分を、手数で補えるし、『アクセルブースト』も連続使用できるのであれば威力は跳ね上がるだろう。
シルとルシェの方を見ると、無事にモンスターを倒し切っていた。
「真司、隼人、大丈夫か?」
「ああ、俺はマントに穴が空いた以外は大丈夫だ」
「俺は、槍が溶けた……」
「はっ?槍が溶けたって、一体……」
「「必中投撃』で燃えてる鳥に投げつけたら命中する瞬間に炎が増して、槍が溶けちゃった。俺の自慢の武器が……」
今回の戦いで、真司と俺のマント、ベルリアのバスタードソード、そして隼人の槍がお亡くなりになってしまったが、俺達自身には被害はゼロ。24階層の敵11体を相手にこの戦果であれば上出来ではないだろうか。
損害は痛いには痛いが、お亡くなりになったのが俺らのうちの誰かではなく装備でよかった。
真司と隼人にはきつく言っておかなければならない。
もう2度と死亡フラグは立てるなと。