A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (269)
第270話 脱出
「ご主人様、お腹がすきました」
「連発したらいつもよりお腹が空いた。早くちょうだい。いっぱいちょうだい」
「マイロード、剣を折ってしまった身で誠に申し上げにくいのですが、私にもお願いします」
いつもの様にサーバント3人が魔核を催促して来たが今回は、24階層のモンスター相手にしっかりと頑張ってくれたのでちょっと多めにスライムの魔核を渡しておいた。
「マイロード、剣を折ってしまった私に罰をお与えください」
「いや、普通に戦って折れたんだから仕方がない。罰なんかあるわけ無いだろ」
「ありがとうございます。ただ私は騎士ですので剣が無ければお役に立てません。今は真司様に剣を借りていますが、いずれ自分の剣が必要になるのですが」
「わかってるって。戻ったら新しい剣を買うよ」
「おおっ、マイロード、それでは今度は魔剣を」
「いや、それは無理」
「マイロード」
「いや無理」
ベルリアが物欲しそうに見てくるが無理なものは無理だ。
「ベルリア、形あるものはいつか壊れるんだ。それが魔剣であってもだ。つまり魔剣であっても、普通の剣であっても根源的には同じ事なんだぞ。魔剣にこだわるのは良くない。ベルリアの技量で有れば、通常の剣であっても魔剣を超えることができるはずだ」
「わかりました。マイロードがそこまで私の事を評価してくれているとは。一層精進して頑張ります」
まあ、いつの日かベルリアには魔剣を購入してやろうと思う。
「それじゃあみんな、急いでこのエリアを抜けよう。ベルリアはそのまま真司の武器を借りるとして、隼人は戦闘になったらとにかく後方支援に徹してくれ」
俺達は手許にある武器でどうにか態勢を整えて上階への階段へと向かった。
シルの声にしたがって、回避を続けながら進んでいったが、途中で高速移動する鳥型のモンスターに追いつかれてしまい戦闘となったが、シルの『鉄壁の乙女』とルシェの『破滅の獄炎』を連発して難を逃れることができた。
「もう12時か〜。マップで見る限りあと少しだと思うんだけどな。休みたい所だけど、階段のところまで一気に進んでしまおうか」
恐らく、距離的に1時間もあれば到着する位置まで来ているので、疲労感はあるが強行軍で臨むことにした。
「海斗、疲れたな〜。今更だけど海斗はその鎧着けて歩いて疲れないのか?」
「そりゃあ、少しは疲れるけど、軽量化の術式が施されてるみたいでそこまで重くはないんだ」
「そうなのか。俺もいつか同じ様な鎧が欲しいな〜」
「ああ、俺も欲しいな。海斗見てると恥ずかしさを飛び越えて、欲しくなるよな」
褒められているのかよくわからないが、将来同じ様な装備の3人が並んで探索している事を思い浮かべるとなんか笑えてきた。
「ご主人様、階段が見えます」
シルの声に反応して全員で前方を凝視するが俺にはよくわからない。
「マイロード、ようやく着いたようですね」
ベルリアにも見えるらしい。やはり人間とサーバントでは視力も違うのかもしれない。
しばらく歩を進めると、ようやく俺にも目視できる様になって来た。
上層へ上がる階段だ!
「真司、隼人、やったな。戻って来たぞ」
「おお〜遂に戻ってこれたよ〜」
「流石に疲れたな〜早く行こうぜ」
階段が目視出来たことにより俺達3人のテンションは一気に上がり、階段まで一気に走ってそのまま上階に登り切った。
長かった下層での探索がようやく終わりを告げた。誰も怪我する事なくここまで来れたのは本当に良かった。
あとは、戻るだけだ。
「みんな、後は戻るだけだけど、このまますぐに出口まで戻る?それとも上階の探索を少し進めてから帰る?」
「海斗〜。お前元気すぎるだろ。俺はもう限界だからすぐ帰る」
「完全なダンジョン中毒だな。それも末期だぞ。帰ったら即、病院行ったほうが良いかも知れん」
2人から失礼な答えが返ってきたが、俺も疲れたので、おとなしくこのまま帰ることにした。