A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (281)
第282話 真司の告白
俺は今妙な緊張感に包まれている。
包まれているのは、俺と真司だけかもしれないが空気が重い。
「前澤さん、このオレンジピールのブラマンジェもすごく美味しいからまたぜひ食べに来てよ」
「そうなんだ。じゃあまた春香と誘ってよ」
「ああ、それはもちろん良いけど、俺は春香と2人で来ることが多いから、前澤さんは真司と来たりしたらどうかな〜」
「私が大山くんと?4人だとそうでも無いけど2人だと変に緊張して疲れちゃうかも」
「そこはなあ、真司が面白い話で場を和ませたりしてな」
「おう。任せてくれ、面白い話はいくらでもあるんだ。大丈夫」
「あれ?大山くんってそう言うタイプだったっけ。なんか今までのイメージと違うね」
「いや俺は、いつも愉快な男だよ。将来はコメディアンでもいいと思ってるぐらいだよ」
「大山くんがコメディアン?流石に無いんじゃ無い?」
「いや、将来は無限大だから。いつ笑いの神が降りて来ても不思議はないんだ」
「大山くんって面白いね、冗談とかあんまり言わない人かと思ってた」
「真司は普段から結構愉快なやつだよ。ただ人にはそれが伝わり難いだけだよ。案外男らしいし本当にいいやつなんだよ」
「へ〜っ。2人は仲がいいんだね」
「そう、親友だからね。風呂にも一緒に入ったし、ダンジョンで夜も一緒に過ごした仲だから」
「えっ!?2人ってそう言う関係?」
「そう言う関係って……いやいや違うって普通に男同士の付き合いだよ」
「ははっ。そんなのわかってるわよ」
「ふ〜っ、焦ったよ。変な噂が流れたら明日から学校に行けなくなっちゃうよ」
「そんな事しないから大丈夫よ」
「あっ、あの〜。前澤さん!俺とカフェに行ってください!」
「急にどうしたの?別にそのぐらい良いけど」
おおっ、今まで大人しかった真司に急にスイッチが入った。
「俺、面白いし、背が高いし男らしいと思うんだ」
「そう、そうなんだ」
「俺のタイプなんだ」
「えっ?」
「俺のタイプは前澤さんなんだ」
「………」
「俺は前澤さんのことが好きなんだ。付き合ってください」
おおっ。真司やったな!最後は男らしい台詞で締めた。TV以外で人の告白を見たのは初めてだが、告白したのは自分では無いのに肩に力が入る。どうだ?前澤さんどうなんだ。真司でどうなんだ!
「………」
「あ、あの〜前澤さん?」
「……」
「どうでしょうか」
「………」
あれ?前澤さんから全く返事がない。これってどう言う状況なんだ?
「あ、ああ、ごめんなさい」
うっ……ごめんなさい?ダメって事なのか?
「ごめん、突然だったからびっくりしちゃって」
「ああ、ごめん。俺も本当は今言うつもりはなかったんだけど、ダンジョンで夜過ごしてる間に人生について考える機会があって、今告白しないと後悔すると思ったんだ」
「そうなんだ」
「どうだろうか。俺と付き合ってもらえないかな」
「大山くん今までそんな素振り見せた事なかったからびっくりしちゃった。私のどこが好きなの?」
「いやそれは、性格も含めて全部だよ」
「全部って、そんなに言われると恥ずかしいんだけど」
「今日は海斗達に手伝ってもらって告白できたから、今度は2人でここに来てブラマンジェ食べたいんだ」
「春香知ってたの?」
「うん。私も今日聞いたんだけどね」
「そっか〜。突然だったから、少し考える時間をください」
「それはいいけど」
これはどうなんだ?
断られてはいないよな。考えるって事は全く無しではないって事だよな。
ある意味敢闘賞と言える結果なのか?
「それじゃあ、返事はよく考えてするから」
「はい。お願いします」
真司は無事に告白までこぎつけることができたが、よく考えるから待ってとはどのぐらいの期間だろうか。1日ぐらい?それとも1週間?もしかして1ヶ月?
俺なら待っている時間気が気ではないな。