A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (291)
第291話 13階層への道
『アイスサークル』
ヒカリンの氷の檻が空中のハチドリを捉えて氷漬けにしたのを確認して俺がバルザードの斬撃を飛ばして氷ごと消滅させる。
ベルリアは2体目のハチドリに向かって鋭く双剣を振るい、見事斬り落とした。
秘技ハチドリ返しだな。確実に燕より難易度が上な気がする。
これで3体を撃退したが、後何体だ?
目視出来る範囲では確認できないが、まだ僅かに羽音が聞こえている。
「シル、残りの敵の場所は分かるか?」
「いえ音の感じから大体の場所は分かるのですが目視する事はできません」
「破滅の獄炎」
音がしているであろう周辺の空中部分が一面炎に包まれた。
「ルシェ、何やってるんだよ」
「何って敵を倒したに決まってるだろ。いざと言う時に出番だって言っただろ」
「それは確かにそう言ったけど」
「敵の居場所が大体しか分からないんだから、いざと言う時だっただろ」
「まあ、そうかもしれないけど」
ルシェの言う事も一理あり、何も言い返すことが出来なかった。
耳を澄まして見ても、もう羽音は聞こえて来ないので、あれで全部だったのだろう。
ハチドリを倒した跡を確認すると、明かにハチドリよりも大きな魔核が残されていた。
本体よりも大きな魔核が残されている時点で、質量保存の法則は無視されているので、やはりモンスターやダンジョンには俺の常識は通用しないのだろう。
それからもペースアップしながら探索を続けて夕方になった時点で切り上げて帰ることにしたが、10階層でのシャワーは欠かせないので、いつものようにベルリアと入ってから家路に着いた。
その日の夜、母親から突然彼女が出来たのかと聞かれた。
今まで一度もそんな事を聞かれたことがないので、急にどうしてそんな事を聞いてくるのか不思議に思い確認
してみたが、土日になって外から家に帰ってくる度にお風呂に入ったいい匂いがしてくるので、女の勘が働いたのだそうだが、見当違いもいいところだった。
母親にダンジョンの10階層にシャワーがあって、汗を流す為に入ってから帰っているのだと説明すると
「あははは、おかしいと思ったわよ。海斗に限ってね〜。無いわよね」
さらっと失礼な事を言われてしまった。
俺だって彼女ぐらい出来ていても不思議はない筈だ。母親の反応としてはおかしい気がする。
その後、何度も好きな子はいないのかとか、周りに気になる子はいないのかとか色々聞いて来たので、完全にスルーしておいた。
大きなお世話だ!
次の日になり朝からダンジョンに向かった。
「みんな、今日で12階層を抜けれるように頑張ろう」
俺達は10階層の視線も物ともせず、12階層を邁進して行った。
ダンジョンとは不思議なもので、初めてのエリアは何時間もかけなければ、なかなか進まないのだが一度マッピングが済んでしまったエリアについてはかなりのペースで進む事が出来る。
なので昨日の到達エリアまでもかなり早い時間帯に着く事が出来た。
「よし、それじゃあここからは特に注意して行こう」
再び気合を入れてペースアップを図る。
何度か敵に遭遇したものの、今まで対戦した事のあるモンスターばかりだった。
もしかしたら、昨日迄で12階層の全てのモンスターと出会ってしまったのかもしれない。
モンスターについては何度対戦しても気を抜く事は出来ないが、やはりダンジョン攻略と似たところもあり1度対戦したモンスターについては2度目からは、比較的対戦が楽に進む傾向があるので、攻略スピードも自然と上がっていった。
「海斗、あれ階段じゃない?」
「おおっ、本当だな。やった、ようやく12階層を攻略出来たみたいだ」
「ようやくこの暗いのから解放されるのですね」
「海斗、最後に気を抜かないように行こう」
「そうですね」
最後に待ち伏せの可能性もあるので慎重に階段の所まで進んだが、幸いな事に何も起こらなかった。
次はようやく13階だ。