A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (292)
第292話 13階層
俺は今13階層への階段を下っている。
13階層はどんな階層だろうか。まさかとは思うが、蚊やハエのモンスターが巣食う階層とかはやめて欲しい。そんな羽虫ばかりが出現するエリアで殺虫剤ブレスが有効でない場合は流石に心が折れそうだ。
そう心配しながら一歩ずつ階段を進んでいくとそこには、普通に明るいダンジョンが広がっていた。
俺達はナイトスコープを外して周囲を見回す。
「暗くないな。ナイトスコープ使わなくていいだけでも楽になるよな」
「そうね、暗いと視界も限定されてたし開放感があるわね」
周囲にモンスターはいない様だが足元にも変化が見て取れる。
今までの砂地から土へと変化している。それなりの硬さがあるので今までよりも踏ん張りが利き探索も疲れにくそうだ。
「どうしようか?今日はここまでで切り上げてもいいと思うけど、もう少し進んでみるのもありかな」
「私はどっちでもいいわ」
「私もです」
「海斗に任せるよ」
「それじゃあ折角だからもう少し進んでみましょうか。危なかったらすぐに撤退しましょう」
本当は引き返してもよかったのだが、好奇心には勝てなかった。ようやく出た明るいエリアに興味を惹かれてしまったので、こればっかりは探索者としての本能だから仕方がない。
進む為に歩き始めるがやはり歩きやすい。そして温度が適温に近いので疲労感が全く違う。
これは快適だ。ピクニックか野宿が問題なく出来そうだ。
いい感じでマッピングしながら進んで行くと
「ご主人様モンスターです。3体ですが、それほど動きがない様です」
この階層初めてのモンスターだがどんなモンスターだろう。楽しみ半分緊張半分で敵を待ち受けるが一向に現れない。
「シル、敵が来ないんだけど」
「いえ、前方にいますが動きがほとんど無いようです」
動きがほとんど無いモンスター……何だ?
待っても全く反応が見られないので、こちらから敵モンスタの場所まで向かう事にした。
すぐに敵モンスターを確認する事が出来たが、少し動いてはいる様だ。
前方に現れたのは俺の背と同じくらいの高さの木。木のモンスターだった。よく見ると3種類共、木の種類が違う気がするが何の木かはわからない。そもそも俺には桜の木ぐらいしか区別がつかない。
観察を続けると目と鼻と口が幹の部分についている。何となくファンタジーを感じるが、リアルで見るとちょっと気持ち悪い。
木のモンスターといえばトレントか。木の種類が違っても同じくトレントなんだろうか?
しばらく全員で観察していたが流石にトレントに気づかれてしまった様でこちらを向いたと思ったら攻撃を仕掛けてきた。
緩慢な動きなのでどうやって攻撃してくるのかと思っていたが、いきなり魔法を使ってきた。
それぞれ3体が別の魔法を発動したようで、足元には以前疑神が使ってきたのと同種の植物の蔓が伸びてきて俺達を捕まえようと襲ってくる。
そして正面からは木の槍と木製のボールが次々に飛んでくる。
いくら木製とはいえこれに当たったらただでは済みそうに無い。
「みんな距離をとって散開して。ベルリアはみんなを守ってくれ。ルシェ『破滅の獄炎』を頼んだぞ。ヒカリンも余裕があったら『ファイアボルト』を頼む」
敵の事が良く分かっていれば他の戦略もあるのだろうが、普通に考えて、まず安全を確保してから木には炎だろう。
「わたしの出番だな。任せとけって。木の化物なんか炭にしてやるよ『破滅の獄炎』」
やはり木のモンスターに炎は特効だったようで、モンスターを炎が包んだ瞬間更に燃え上がり苦しみながらもすぐに炭化して消滅してしまった。
「私も負けてはいられません『ファイアボルト』」
ヒカリンが放った炎雷もトレントに着弾と同時に炎が燃え広がり一気に全焼して消滅に追いやった。
「もう1発行くのです。『ファイアボルト』」
ヒカリンの2発目の炎雷が最後のトレントに見事着弾して、先程と同じ様に燃やし尽くしてしまった。
流石は魔法少女、普段シルとルシェの高火力魔法の影に隠れているが、ヒカリンの魔法攻撃は、本当に優秀だ。
とりあえずトレントには、思った通り炎が特効の様なので、次出てきたら2人とミクにも活躍してもらおう。
俺の場合バルザードはそれなりに効果がありそうだが『ウォーターボール』は効果が薄そうだ。むしろブレスレットを使用せずに発動すると逆に活力を与えてしまうかもしれないな。