A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (298)
第298話 木には炎
残る敵は3体だが、姿が見えない以上油断は出来ない。
「俺とベルリア以外は下がって」
すぐにでも飛びのくことが出来る様に神経を張り詰める。
「マイロード今です!」
ベルリアの声に前方にダイブしてその場を離れるが足元だけで無く、飛び込んだ前方からも、木の根が襲ってくる。
完全に狙い撃ちにされているが、焦りながらも前方に右手に持つバルザードを奮って絡みついて来るのを避ける。
「前方は私に任せて」
ミクが『スピットファイア』を連射して前方の木の根を燃やすのとほぼ同時に先程の足元にはヒカリンが『ファイアボルト』で攻撃をかける。
K-12のメンバーも一緒に探索を始めてからそれなりに時間が経過しているので、連携も当初に比べてかなり熟達してきた感がある。戦闘中ではあるが妙に感心してしまうのと同時にパーティを実感出来て密かに嬉しかった。
それぞれの攻撃により地上部分は燃えて消えてしまったが、先程と違い地中部分迄燃え上がった感じは薄い。
別々に攻撃したのでは少し火力が足りないのかもしれない。
「二人ともまだまだだな。本当の炎を見せてやるぞ、しっかり見てろよ『破滅の獄炎』」
ルシェが足元に向けて『獄炎』を放つと、土が焦げて地表がめくれ上がり地下にいたであろうモンスターも炭と化して消え去ってしまった。
「木が炎に勝てるわけがないんだ!どうだ海斗すごいだろ」
「あ〜、確かにすごいよ。すごいです」
「そうか、わたしの凄さが分かったならいいけどな」
「さすがルシェ様です」
「私達とは威力が違いますね」
「ふふふっ」
とにかく後1体を倒す必要がある。
「ベルリア、まだか?」
「まだ特に何も感じません」
どうせ俺を狙うなら早く来い。
そう思いながら敵を待ち受けていると、後方から音が聞こえてきたので、慌てて確認すると、あいりさんが空中に舞っていた。
俺の不器用なジャンプとは違い文字通り空中で可憐に舞っていた。
敵も俺ばかり狙うワンパターンから学習したのかあいりさんを狙ったらしいが、あいりさんが可憐に空中に避けた所をミクとヒカリンそしてルシェが一斉攻撃をかけた。
強烈な炎に包まれて一瞬にして、地上と地中の敵が消滅してしまった。
敵にとっては俺を狙うよりも悪手だった様だ。
どうせパターンを変えるなら戦力分析をしっかりした方が良かったと思うが、木の根にそれは望みすぎと言うものかもしれない。
それにしてもあいりさんの避け方が華麗すぎる。どうすればあんな風に華麗に避けることができるのだろうか?俺も訓練したらあんな風になれるのだろうか?
マントをはためかして華麗にジャンプして避ける俺。カッコいい!今後のベルリアとの特訓にジャンプしてからの避け方も入れてもらおうかな。
「あいりさん大丈夫ですか?」
「ああ、問題無い」
「よく避けることが出来ましたね」
「何となく気配がして足下がおかしかったからな」
流石はあいりさんだ。俺はベルリアの助け無しには同じ事は出来ないが、子供の時からの修練の成せる技なのか、それとも才能の成せる技なのか。
「それじゃあ、先に進みましょうか」
「海斗〜。腹減った〜」
「ああ、分かってるよ」
スライムの魔核を渡してから先に進むことにしたが、今回の戦闘では俺は、ほぼ囮役だったが経験値ってちゃんと入ってきているのだろうか?
俺としては避けるだけでも、神経をすり減らしてしっかりと戦闘に加わっているつもりだが、明確な仕組みがよく分からないダンジョンの経験値システムの中で俺はどの程度戦った扱いになっているのだろうか。
少しだけ不安になってしまったが、レベルはそれなりに上がっているので多分大丈夫なのだろう。