A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (300)
第300話 ビッグトレント
俺は今10m級のトレントと対峙している。
以前戦った恐竜と比べると木なので質量は少ないがかなり大きい。
近づく迄殆ど動きを見せなかったので、大きい分動きは鈍いのかと思ったが甘かった。
象の1歩がアリの百歩に勝るのと同じように大トレントの一撃は、俺達の動きを凌駕する程のスピードを持っていた。
枝を腕や足のように使い大振りにフルスイングして来る。枝と言えども数メートルあるのでかなり危険だ。
最初、ベルリアも俺も剣で受けようとしていたが、まともに受け止めると剣の方がただでは済まなさそうだったので、トレントの攻撃に対してはとにかく避けるように立ち回っている。
「ミク、ヒカリン、隙を見て攻撃してみてよ」
大きくても木のトレントには違いないので、他のトレント同様に炎に弱いのは間違い無いはずだ。
問題は、この大きさだがやってみないと分からない。
俺とベルリアが注意を引いているうちにミクが『スピットファイア』を連射。ヒカリンも『ファイアボルト』を撃ち込んだ。
どちらの攻撃も、ビッグトレントの体躯を燃え上がらせてダメージを与える事は出来たが、その範囲は限定的だった。特にミクの『スピットファイア』による小型の火球では効果範囲が狭過ぎる。
「2人共そのまま攻撃を続けて!」
2人の攻撃の感じを見ると恐らくルシェなら一撃で倒せる。
ただこの階層に来てからルシェに頼る回数が増えて来ているので、残りのメンバーで出来るだけなんとかしたい。
残念ながらこの相手にはスナッチは戦力にはなり得ないので、俺とベルリアでビッグトレントの幹を切断まで持っていくしか無い。
「ベルリア、俺とお前で倒すぞ!」
「はい。任せて下さい。問題ありません」
ベルリアの問題ありませんは、普段余り信用ならないが、今回はあてにしたい。
俺はトレントの攻撃を避けながらバルザードの斬撃を飛ばしてトレントの幹に向かってダメージを与えようと試みたが、枝の部分に遮られて本体迄はダメージが通らない。
「ベルリア連携して攻撃するぞ!俺の攻撃進路の枝を先に切り落としてくれ」
「任せてください」
ベルリアが2刀を構えて突撃をかける。
トレントが枝でベルリアの攻撃を阻害して来るが、最小限の動きで避けながら、なぎ払い前進して行く。
流石の動きだが、うまく前方の視界が開けたのでバルザードの斬撃を飛ばす。
ベルリアの露払いのおかげで今度は斬撃が幹まで到達して大きく幹を傷つける事に成功した。
これなら同じ箇所に何発か放てばいける。
そう思い、追撃をかけようと思った瞬間、変化が起きた。
「何だ?傷が治ってる?」
俺が先程バルザードの斬撃で与えたはずの傷が、幹から綺麗に消えていた。
どう言う事だ?まさかこいつの能力か。魔法を使わず物理的な攻撃ばかりだったのでてっきり魔法は使えないのだと思い込んでいたが、どうやら回復系のスキルを持っていたらしい。
「ベルリア、俺だけの攻撃だと倒せそうに無い。お前の力も貸してくれ」
「マイロードもちろんです」
再度態勢を整えてから、ベルリアが突っ込む。
それに合わせて俺もベルリアの後方から突っ込むが、トレントの攻撃は全てベルリアがなぎ払ってくれている。
先程と同じように前方が開けたところでバルザードの斬撃を飛ばしてダメージを与える。
それと同時にベルリアがビッグトレントの至近距離まで飛び込んで俺がダメージを与えた所に『アクセルブースト』を使い斬り込む。
かなり深い所迄傷を負わせたのが分かったが未だ完全に倒しきるには至って無いので、そのまま俺も踏み込んでバルザードに切断のイメージをのせて、木の幹を一気に倒しきる。
「ズドドーン!」
大きな音と共にトレントが倒壊してそのまま消失した。
俺とベルリアの3連撃でようやくビッグトレントを倒す事に成功した。
大きいだけあって、かなり手強かったが、思った通り剣は木を切るのにはあまり向いていない。
斧かチェーンソーが有ればもっと楽に倒せたかもしれないが、敵に合わせて武器を変えるわけにもいかないので、これからも俺達は剣で頑張ろうと思う。