A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (301)
第301話 あいりの悩み相談
俺は今13階層でビッグトレントの魔核を回収している。
通常のトレントの数十倍の質量がありそうなトレントだが、いつもの如く質量無視のダンジョンの法則にのっとって、魔核は、他のトレントとほぼ一緒だった。
あれだけ大きさが違うのに残された魔核の大きさは、ほぼ同じ。
ハチドリの時などは逆パターンもあったので文句はないが不満は残る。
「今日は、初見の敵ばっかりで結構頑張ってるから、この後は少しゆっくりしたペースで進もうか」
「わかったのです」
どんどん前に探索を進めて来たが、1回の戦闘で俺自身結構消耗していると感じるので、他のみんなにペースダウンを申し出た。
やはり初見の相手を攻略して行くのは神経と体力が普段よりも削られて行く。いざと言う時に反応が鈍くなって来ると不味いので休憩を挟みながら進む事にする。
「海斗、ちょっといいだろうか」
「はい、なんですか?」
「この階層に入ってから私は殆どみんなの役に立てて無いんだ。どうにか役に立ちたいんだがどうすればいいだろうか」
「そんな事ないと思いますが、得手不得手がありますからね。物理的攻撃ならあいりさんが有利ですし」
「それは、そうかもしれないが、この階層のトレント相手だと私の攻撃で有効と思える攻撃が思いつかないんだ」
「そうですね〜。僕も魔剣とかが無いと全く役に立てそうに無いですからね。あいりさんの気持ちは良くわかるんですよね」
「私は前衛のつもりだから、前に立って戦えないのは辛いんだ」
「あまり、おすすめは出来ないんですけど、俺と同じようなやり方ならいけるかも知れません」
あいりさんの腕前が凄いのは分かっているが、やはり女性なのであまり怪我をして欲しくは無い。顔に傷でも残ったら大変なので余りこのやり方はおすすめできないが、あいりさんの気持ちも分かる。
「俺の場合、遠距離はバルザードの斬撃を飛ばすのがメインなんですけど、それでも効果が薄い場合は近距離まで近づいてから放っているんです。それでもダメなら至近距離からの連発です。ただ敵に近づく必要があるので、危険は増すし、精神力も削られますが」
「そうか、私の場合至近距離からの『アイアンボール』か」
「あいりさんの場合『アイアンボール』となぎなたでの斬撃を同時にでもいけるんじゃ無いですかね」
「同時か。今まで遠距離は『アイアンボール』と魔核銃、近距離はなぎなたで使い分けしてたからな」
「流石に大型のトレントには難しいかもしれませんが、他のトレントならそれで十分倒せると思います」
「そうか。やはり海斗に相談して正解だったよ。そんな感じに見えて海斗も色々考えて努力してるんだな。私も海斗を見習って努力しないといけないな」
そんな感じってどんな感じだ?あいりさんに褒められてるような気もするが、さらっと失礼な事を言われた気もする。見た目と中身が違うのは所謂ギャップ萌えだ。きっと良いことに違いない。
「いきなり戦闘スタイルを変えると危ないんで、少しずつやってみましょうか」
「ああ、そうさせてもらうよ」
それにしても、あいりさんはいつも飄々としたイメージがあったので、まさかこんな風に悩んでいるとは思いもしなかった。
もしかしたら他のメンバーも同様に悩みを抱えているのかもしれない。
俺では余り彼女達の力になれる事は無いと思うが、一応パーティリーダーなのでメンバーのフォローは俺の役目だろう。振り返って見ても今まで彼女達のメンタルのフォローが足りなかったかも知れない。自分の事で精一杯でメンバーのメンタルの事にまで気が回っていなかったと思う。
これからは、出来るだけそういった部分も気にかけながらダンジョンを進んでいきたい。