A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (303)
第303話 石鹸とバラの香り
俺は今10階層にいる。
それなりの数のトレントを倒したので引き揚げてきた。
あいりさんの戦い方も堂に入った物なので今日の目的は達成したと言える。
いつものように10階層でベルリアと一緒にシャワーを浴びる。
「マイロードいつもと匂いが違うようですが」
「ああ、ベルリアにも分かるのか。今日のは俺の母親が買ってきてくれたシャンプーとボディソープのお風呂セットを持ってきたんだ」
「何かいつもより良い匂いがしますね。花の香りでしょうか?」
「一応ローズの香りって書いてあるな」
「ローズの香り良いですね。それにいつもより髪も身体もしっとりしている気がします」
「それはよかったな。そういえば魔界にもローズってあるのか?」
「私は詳しくないですが色んな種類がありますよ。でもこれ程芳しくは無いですね」
母親が買ってくれたお風呂セットはベルリアに大好評だったので良かった。
魔界の薔薇をイメージすると、なんかデスローズって感じで死を司っている気もするが、花の種類もいっぱいあると言っているから案外俺達のいる所の薔薇と変わらないのかもしれない。
「そういえば前に魔界の事を聞いたけど、ベルリアって魔界では強い方なのか?」
「一応士爵ですから」
「強いんだな」
「士爵ですから」
よく分からないが、今の幼児化したベルリアがそこまで強い部類に入るとも思えない。
仮に今度また悪魔と戦う事になったらシルとルシェに頼らないと仕方がないな。
シャワーを終えて外に出ると他のメンバーも既に出てきていた。
「海斗、もしかしてシャンプー変えたの?」
「えっ?よく分かるな。今日は母親が買ってくれたのを持ってきたんだよ」
「それでなのね。良い匂いだと思うわ」
そんなにシャンプーとかボディソープの匂いって違う物なのか。今まで特にこだわった事は無かったので意識して無かったが、変えた途端に反応があると言うことはかなり違うのだろう。
もしかして今まで俺って臭かったのか?いや多分大丈夫だよな……
「ミクは何か特別なシャンプーとか使ってるのか?」
「特別って事は無いけど、家で使ってるフランス製の物を使ってるわ。ダンジョンで結構髪が傷んじゃうから」
さすがは女の子だ。もしかしたら他の2人も同じように、シャンプーにもこだわっているのかもしれない。
「ミクってフランスとか行ったことあるの?」
「家族旅行で結構いろいろ行ってるからね。海斗はどうなのよ」
「俺は中学生の時に家族で旅行に行ったっきり何処にも一緒には行って無いな。もちろん外国は行った事がないよ。俺パスポート持ってないし」
「海斗も探索者で結構稼いでるんだから今度家族を旅行にでも連れて行ってあげたら?」
「あ〜そう言うのも有りかな〜。考えた事無かったけど、あんまり父親と喋る事ないから気まずい気もするんだよな」
「絶対ご両親喜んでくれると思うけどな〜。一緒に行けるのなんて今だけかもしれないでしょ」
「そんなものかな」
「そんなものよ」
流石は女の子、いやミクだからなのか、俺の思いもつかない事を提案してくれたが、言われてみると悪くない気がする。
今の俺があるのも両親のおかげなのは間違いないし、好きに探索者させてもらっているのも両親のおかげだ。
この前、レンタルロッカーを借りる時にも未成年者なので親のサインと判子が必要だったが、お願いしたら何も言わずにやってくれた。
その時に母親には王華学院を受験する事を伝えたが、賛成もしてくれた。もちろん学費は全部俺が出す事を伝えたからかもしれないが、それでも他の一般的な親よりも好きにさせてくれている気がする。
今日帰ったらそれと無く、母親に聞いてみようかな。
流石にフランスと言われたら断るしかない。