A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (311)
第311話 ドロップの種
「これ何だ?ドロップ‥‥アイテムだよな」
久々に残されていたドロップアイテムだが、どう見てもアイテムには見えない。
「ミク、これって何?」
「多分種じゃない?植物の種」
大きさは大体俺の拳大で、梅干しの種を大きくしたような形をしているので確かに種の様にも見える。
「これって食べられるのかな?」
「いえ、食べられるとは思えないわね」
「海斗さん、これを食べようって発想がすごいのです」
「そうは言っても食べる以外に何か使い道がある気がしないんだけど。これってアイテムとして使えると思う?」
「そうですね。敵に向かって投げると爆発するとか、食モンスター植物が飛び出すとかですかね」
「本気で言ってる?」
「すいません。多分無いですよね。冗談です」
手にとって見ても、硬くて大きい種と言う以外に特に変わった所も無さそうだ。
「海斗、多分なんだが、聞いたことがあるんだ。ダンジョンの植物は切り取って地上に持って帰っても、地上に根付く事はないが、ドロップアイテムとして持ち帰った植物については地上でも活動を続ける事があるそうだ」
「それじゃあ、これってダンジョンの植物の種って事ですか?」
「恐らくそうだろう」
「この種を持ち帰って地上で植えるとダンジョンの植物が育つかもしれないって事ですよね」
「そうなるな。そう言うドロップアイテムは一般人には全く必要とされないが、地上の研究者にはたまらないアイテムなんだそうだ」
「そうなんですか?それじゃあ、この変な種ってギルドで買い取ってもらえるんですかね」
「研究用にそれなりの金額で買ってもらえると思う」
久々にドロップアイテムが出たと言うのに訳の分からない大きな種が残されてどうしようかと思ったが、そう言う事なら嬉しい限りだ。
「それにしても久々のドロップアイテムね」
「そうですよね。本当にドロップしなくなりましたよね」
「ああ、それは私も感じていた。最近と言うか、このパーティになってからドロップが極端に少なくなった気がするな」
「あ〜!あいりさんもそう思いますか〜。私だけかと思ってたんですけど、やっぱりそうですよね」
パーティメンバーがドロップアイテムについて話をしているのがしっかりと耳に入って来るが明らかに会話の内容がおかしい。
確かに久々のドロップアイテムであるのは間違いないが、俺からするとドロップするペースはむしろ上がっているように感じる。
俺がK-12のメンバーとパーティを組むまでは特殊モンスターからアイテムドロップした以外は一度もドロップした事が無い。
こうして通常のモンスターからドロップする事自体が俺からするとすごい事なのだが、どうやらみんなの認識はそうでは無いらしい。
「海斗もそう思わない?」
「え、えっ?そ、そうかな〜。そうかもしれないな〜。どうかな〜」
「その返事は何?何かあるの?」
「い、いや〜何も無いよ。あるわけないじゃないか。ははは……」
「海斗さん怪し過ぎますよ」
「もしかして海斗は余りドロップアイテムを手に入れた事がないのか?」
「いや〜、一応サーバントカードとバルザードとかを……」
「そういえば海斗さん、モンスターミートを手に入れた時に初めてだって言ってましたよね」
「まさかレアなアイテム以外はドロップした事が無いって事?」
「ま、まあそう言うこともあるかもしれないな」
「そんな事ってあるの?レアアイテムって言ってもレア度が高すぎない?しかもそれ以外は無いの?」
「はい……」
「もしかして、ドロップが少なくなったのって……」
「海斗さんの………」
「そんな事ありえるのか?」
「…………」
恐らく、みんなの話を聞く限りドロップ率が下がったのは俺のせいでは無いだろうか?
俺の特殊体質?いや末吉パワーのせいでドロップ率が著しく下がってしまったのか?
俺はむしろ増えたと感じていたのだがこれはみんなのお陰で、俺の本来持つドロップ率がパーティ補正で向上したからなのか。
どう言う原理かわからないが、それなら説明がついてしまう。
俺のせいでみんなのドロップ率が下がってしまっているとしたら……
どうしよう。
「まあ、海斗っぽいわね」
「そうですよね」
「まあ、個性だな」
「怒って無いの?」
「だって怒りようが無いじゃ無い」
「そうですよ。ドロップは少なくなりましたけどわたしは今の方が楽しいのです」
「そうだぞ、ドロップアイテム以上に海斗には世話になってるから」
なんと優しいお言葉だろう。やっぱり俺はこのパーティで良かった。俺の特殊体質を受け入れてくれるみんなの器の大きさが心に染みる。
でも本当に俺は特殊体質なんだろうか。