A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (313)
第313話 アサシン
俺は今レベルアップした自分のステータスを確認してる。
「それが、確認は出来たんだけど………」
「どうだったのよ。歯切れが悪いわね」
「う〜ん。ジョブはやっぱり職業の事みたいだけど、恐らく該当する職業に沿った行動を行う時に補正がかかるっぽい」
「それじゃあ、海斗の場合『アサシン』に沿った行動を取った場合に補正がかかるって事?」
「まあ、そう言う事だと思うんだけど」
「海斗さん『アサシン』に沿った行動って暗殺ですよね」
「ヒカリン、暗殺って………」
「だって『アサシン』って暗殺者の事ですよ。暗殺者といえば暗殺ですよね」
「いや、俺は暗殺者じゃ無いよ」
「だが、海斗のジョブは『アサシン』なのだろう?」
「それはそうなんですが………」
メンバーは間違った事を言っているわけでは無いので言い返す事が出来ない。
「それで『アサシン』ってあの『アサシン』なの?」
「あのって言うのがどれの事か分からないけど、多分そう」
「じゃあ本当に暗殺者なんだ」
「いや暗殺者じゃなくて闇と共に無音で敵を葬り去る者だよ」
「はい?」
「いや、だから闇と共に無音で敵を葬り去る者だ」
「海斗さん、大丈夫ですか?レベルアップしておかしくなっちゃったんですか?」
「おかしくなって無いよ」
「海斗、余りにその説明は厨二感が出過ぎていると思うのだが」
「いや、だって本当にそうなんですよ」
「海斗………」
「本当だって、本当にステータス画面にそう出てるんだって」
「本当なのですか?」
「本当だって。こんな嘘ついても仕方ないだろ」
「ご主人様。闇と共に無音で敵を葬り去る者ですね。カッコいいです。さすがです」
「ありがとう。そう言ってもらえると嬉しいよ」
「しかし海斗が『アサシン』か。呑気な『アサシン』もいたもんだな」
ルシェの声はいつも通りスルーしておくが、そもそも探索者のステータスにジョブシステムがあるなんて聞いた事がない。LV20になったら、みんな何かのジョブについているのか?
「それより俺は知らなかったけど、ジョブシステムってあったんだな。みんな知ってた?」
「いえ、聞いた事ないわ」
「私も無いのです」
「前にLV20を超えた探索者と臨時パーティを組んだ事があるがそんな話は出て来なかったな」
「そうですか。でも俺英雄目指してたんですよ。どうせジョブにつくなら勇者とか聖騎士とかせめて暗黒騎士とかが良かったです」
「海斗さん……それはあまりに厨二感が出過ぎでは……」
「海斗が勇者は厳しいんじゃない?」
「そうだな聖騎士は憧れはするが、それはあくまでゲームの話じゃないか?」
「いやそうは言いますが『アサシン』も十分ゲームっぽいですよ。俺のジョブは『アサシン』なんだって人に言ったらどう思いますか?」
「確かに危ないな。聖騎士ですと言うのと変わらない。すまなかった」
冗談抜きで聖騎士とかのジョブが発現したら俺はみんなに自慢していたかもしれない。目標である英雄に一歩近づいたと納得出来たかもしれない。
ただ実際には『アサシン』だ。どう考えても英雄から離れて行っている気がする。
『アサシン』で英雄ってそんな事あるのだろうか?
何となく悪くてダークなイメージしかない。どう考えても主人公にはなれないキャラクターな気がする。むしろ敵に出てきそうだ。
「海斗さん、もしかしたらジョブシステムは重度の厨二病の人にだけ発現するのかもしれませんよ」
「ありえるわね」
「いやいや、ありえないでしょ。それに俺は重度の厨二病なんかじゃ無いよ。みんなだってカードゲームとかするんだから同類だよ」
「私も聖騎士とかのジョブが発現するのだろうか?」
「あいりさん、多分海斗だけですよ。海斗が特殊なんですよ」
「そうですよ。何しろ『黒い彗星』ですからね。『アサシンは黒い彗星』って何かアニメのタイトルみたいじゃ無いですか」
「ああ確かに」
完全に遊ばれている。全く悪意は感じないので、怒りは感じないがメンバーに弄ばれている。
せめてこのジョブに何かの効果がある事を期待したい。