A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (316)
第316話 大きな人参
俺は今ビッグトレントを倒した所だ。
上手く連携してビッグトレントを倒したが、なぜかもう1体は全く攻撃して来なかった。
「みんな、もう1体を探してくれ。絶対に気を抜かないで。何処かに潜んで此方を伺ってるのかもしれない」
全員で周囲を見て回るが、それらしき敵は見当たらない。
「いないよな〜。一体どこにいるんだ?」
「いませんね〜」
周囲に芝生や草は生えているが、どう考えてもトレントと呼べる程の大きさは無い。
よく見ると端の方に少し大きな草が生えている。
全員で近づいて見てみるが、これはあれだな。
「これって大根の葉っぱかな」
「かぶじゃないかしら」
「大根とかかぶとはちょっと違う気もするが」
「これが敵って事は無いですよね」
「それは無いだろう。埋まってるだけで出て来る気配は無いようだ」
「これが敵だとしたら引き抜いたら倒せるんじゃ無い?」
「そんなもんかな」
明らかに敵とは違うように思えるが、他には何も無いのでミクに言われた通り引き抜いて見る事にした。
掴んでみるが、ただの葉っぱだ。
思いっきり力を込めて引き抜きにかかるが
「う〜っ。抜けない」
「私も手伝うわ」
今度は2人で同時に引っ張るが抜けない。思いの外深くに埋まっているのかもしれない。
「私も手伝おう」
今度は3人で同時に引っ張るがやはりびくともしない。
「それじゃあ私も手伝いますね」
今度は4人でそれぞれ葉っぱを掴んで一気に抜きにかかるが抜けない。抜けはしないがさっきまでより手応えがありもう少しで抜ける気がする。
「ベルリアも一緒に頼む」
「わかりました」
今度は5人がかりで引き抜くことにした。これ以上は持つところが無いので5人で抜けなければ諦めるしか無い。
「う〜ん!おっ少し動いたぞ。もう一息じゃ無いか?」
全員で渾身の力を込めて抜きにかかる。あまり畑仕事などした事は無いが、みんなでやると童心に帰ったようでなんか楽しい。
もう少しで抜けそうだがあと少しだけ力が足りないようだ。
「シルとルシェも後ろからでいいから引っ張ってくれるか?もう少しだと思うんだ」
今度はシルとルシェが俺を抱えるような形になり全員で力を込めた。
今度はズズッと擦れるような感覚が有り抜けて来た。
「よし、抜けてきた。一気に引っ張るぞ!」
そのまま一気に引き抜きにかかるが出てきたのはでかい人参?のようだ。
頭の部分しか見えないが西洋人参ではなく漢方とかで使う人参の巨大なやつに見える。
抜いても食べられる訳では無いので意味は無さそうだが折角なので全部抜き切ってしまおうと思う。
「おりゃ〜!」
俺の掛け声と共に大きな人参は一気にズルッと抜けた。抜けた人参の全体を見ると軽く1Mは超えている。
これは抜けない筈だ。先端は2股に分かれているので余計抜け辛かったのだろう。
「でかいなぁ。これってダンジョン産の人参かな」
「そうね、でも敵でもなさそうね」
「ただの植物だったみたいですね」
「こんなに大きな人参は地上には無いな」
抜いた人参の大きさにメンバーも驚いているが、これは敵では無かった様なのでもう一体の敵がどこにいるのか分からない。
「シル、やっぱり敵が居ないんだけど」
「おい、その人参目があるんじゃ無いのか?」
「えっ?」
ルシェに言われて人参を見ると小さな点の様なものがいくつかついており、確かに目のように見えない事もない。
「じゃあ、これが敵か!みんな攻撃を!」
そう指示を出した瞬間、点のような目の部分が開いてこちらと目が合った。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアア〜」
恐らく目の前の人参が発したのだと思うが、とんでもない音量の叫び声が聞こえたと思った瞬間、俺は意識を手放してしまった。