A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (326)
第326話 吸血
トレント2体と草トレント1体を確認したが、草トレントは擬態しているつもりのようで動かない。
俺はしっかり狙いを定めてから動かない草トレントに向けてバルザードの斬撃を飛ばす。
着弾した瞬間ヨロヨロと動き始めたトレントに向けてミクがスピットファイアで仕留めた。
これで後2体。
後方から、ミクとヒカリンとスナッチの援護を受けてベルリアとあいりさんがトレントに向けて駆けていく。
飛んでくる木の杭の攻撃を躱してトレントの懐まで到達してベルリアは『アクセルブースト』あいりさんは『斬鉄撃』を発動して一太刀で幹を切断してモンスターを消滅させる事に成功した。
「うまくいきましたね」
「ああ、結構慣れてきたな」
それにしてもマンドラゴラといい草トレントといい、初見では絶大な効果を発揮すると思うが、分かってしまえばこんなに簡単な相手はいない。
戦闘が終わってから何気に手の甲を見ると蚊が止まっていたので瞬間的にもう一方の手で叩き落とした。
潰した蚊から少量の血が見て取れる。
「あ〜! 刺された! リングしたのに」
リングは効果が無いのか? リングをした側の手を刺されたショックを感じている間に痒みが襲ってきた。
「痒い……」
「やっぱりリングがあっても完全には厳しいですよね」
ダンジョンの蚊はマラリアとかデング熱とか大丈夫だよな。未確認の伝染病とかなったらきついな。
痒さと共に一抹の不安を覚えたが心配しても仕方がないので先に進むことにする。
数度の戦闘を繰り返しながら昨日の到達点まで来た。
「ご主人様、敵モンスター2体です。右奥にいます」
進むと昨日のヒュドラっぽい植物が2体並んでいる。
しかも一体は頭っぽい部分が8つもある。
「俺とミクとスナッチ、シルで頭が8つの方を残りのメンバーでもう一体を頼んだ」
俺には正面から8つの頭を回避する程の技量は無いので相手の攻撃が届かない位置から魔氷剣を発動してから首の部分に向かって斬撃を飛ばす。魔氷剣として威力を増したバルザードの斬撃は首の部分を一撃で刈り取るがすぐに蔓が伸びて再生してしまう。
8連撃は無理なので順番に潰して行くがキリが無い。
「ミク、牽制を頼む!」
後方から火球が飛んで来て着弾した瞬間を狙ってナイトブリンガーの能力を発動して意識を無に近づける。前方へ駆けるが後方から敵へと飛んで行く火球が少しだけゆっくりと見て取れる。
俺はあまりスポーツに詳しい訳では無いが、稀に一流選手がゾーンに入ると言うのを聞いた事がある。野球選手がゾーンに入るとボールが止まったり、遅くなったりするらしいので、それに似た感覚かもしれない。
敵に認識されないまま一気に8本の首の根本の所まで近づいた。
頭の部分では8つに頭が大きく広がっているが、根本の部分はかなりまとまった状態となっており、そのまとまった部分を横から一気に斬り落とした。
抵抗感無く入った魔氷剣の刃がそのまま全ての付け根を斬り落とした。
この感じ、前回も1度あった感じだが剣の通りがいつもと違う。
偶発的に引き起こされるのか、何かの要因があるのかは分からないが明らかに『アサシン』による補正の効果だと思われる。
「シル今だ!本体を頼む」
「かしこまりました。まかせてください『神の雷撃』」
シルの雷撃が敵本体を貫き跡形も無く消滅させる。
シルのこの火力があればもしかしたら、8つの頭の妨害があったとしても難無く一撃の下にこの敵を倒してしまえるかもしれないが、それでは当然俺達には経験値が一切入って来ないので、連携して戦う事にもしっかりと意味はある。
隣を見るとまだ交戦中だったが、前日と同じようにベルリアが前で頭を相手に剣を振るい、ヒカリンが『ファイアボルト』で援護している。
『ファイアボルト』の連射と2刀での『アクセルブースト』で一気に6つの首を落とした所で
「ようやく出番だな。さっさと燃えて無くなれ『破滅の獄炎』」
ルシェの獄炎が本体を燃やし尽くして戦闘が終了した。
「海斗腹が減った。早くくれよ」
「私もお腹が空きました。ご主人様お願いします」
「私もお願いしてよろしいでしょうか」
張り切ってスキルを使ったサーバントたちがいつもの様に魔核をせがんで来たので、スライムの魔核をそれぞれに渡しておいた。
調子が出てきたので、このままどんどん進んで行きたい。