A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (328)
第328話 落とし穴
鳥型のモンスター1体を倒したので残りのモンスターを探す。
「海斗いたぞ!あそこだ」
あいりさんが敵を発見して場所を示してくれる。
前方の上空に先程と同タイプのモンスターが見て取れた。
「あいりさん、さっきと同じでいきましょう。俺が動きを止めるのであいりさんが仕留めてください」
「ああ、わかった」
敵に向かって距離を詰めるために蛇行しながら走ったが、理力の手袋をそろそろ発動しようと思った瞬間、足下の地面が無くなった。
無くなったと言うか踏み出した先に本来足が接地すべき土が無く大きな穴が空いていた。
「あっ!」
当然前方と上空に意識を向けていた俺は思いっきり踏み込んだ為に全速力で落とし穴に落ちたような状態になり顔から思いっきり突っ込んでこけてしまった。
一瞬走馬灯のように春香の可憐な姿が脳裏をよぎった気がしたが、死んだわけでは無いので気のせいだったのだろう。
「う、ううっ、痛い……」
下が土なので折れてはいないと思うが、装備の重みも加わって転んでぶつかった所が激しく痛い。
「海斗!大丈夫か!敵が来るぞ避けろ!」
あいりさんの声に反応して上を見ると鳥型のモンスターがこちらに向かって飛来して来ていた。
転んだせいでバルザードも前方に放り出してしまっているので俺は咄嗟に
「ウォーターボール」
バルザードの飛ぶ斬撃に頼って最近出番が減ってしまった氷の槍を発現させて上空のモンスターに向けて放ったものの、敵は旋回して氷の槍をうまく避けたが時間稼ぎにはなった。
敵が時間をくっている間にバルザードを拾って体勢を整えようと前に踏み出した瞬間下から根のようなものが伸びてきて脚に絡み付いてきてしまった。
「ああ〜」
間の抜けた声を出してしまったが、もともと地面に穴など空いてなかったので冷静になって考えるとモンスターによる可能性が高く、そこにはまってしまったのだから何らかの攻撃をくらうのは当たり前だった。
焦って冷静な判断が出来なかった。
バルザードは前方に投げ出したままで手元には無いので脚を大きく動かして逃れようとするが全く千切れない。両手でも引っ張ってみるが無理だ。
「ウォーターボール」
氷の槍で脚に絡み付いた根を攻撃してみるが部分的に破損させる事には成功したが、このやり方は単純に危ない。根と一緒に脚が無くなってしまう可能性がある。
考えている間にも再び根が絡みついてきている。
抜け出せない!
落とし穴に木の根のトラップと言う原始的で単純な攻撃だが、俺は見事にはまってしまい、しかも抜け出せない。
しかも穴に落ちているので俺の状況はメンバーには一切見えていない。
どうすればいいんだ。
順調に進んでいたので気を抜いたわけでは無いが、思いもしない場所でピンチを迎えてしまった。
どうにかして早く抜け出さないと、下と上からの挟み撃ちで完全に詰んでしまう。
そもそもこの木の根は根だけなのか?
本体がその下に潜んで更なる攻撃を仕掛けてくる可能性も十分ある。
「おおおおおっ!」
俺は再び全力で根を振り切るべく力を込めて足掻いてみたが、やっぱりびくともしない。
それほど太さがある訳では無いが絡みついている木の根は思った以上に頑強で一箇所たりとも俺の力では切れる気配が無い。
むしろ暴れているうちにさっきよりも締まって来ている気がする。
上空からは丸見えのこの状態で、上空から狙い撃たれたら避けようも隠れようも無い。
現状に段々焦りがでて来たので、更に暴れてみたが上半身以外は全く動きが取れなくなってしまった。
完全にはまってしまい、まな板の鯉、いや穴の中のモブ状態になってしまったので、冗談抜きでどうにかして抜け出さないとヤバい。