A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (331)
SSバレンタインデー2
前澤さんがトリュフの入った袋を真司に手渡す。
「そうよ2人で頑張って作ったんだから残さず食べてよ。はい真司くんに」
「前澤さん……ありがとう。俺、これは一生大事にするよ」
「真司くん、早く食べないと痛むから一生持っておくのはやめてね」
真司を見ると感動で今にもどこかへ飛んでいきそうな表情をしている。やはり2人で作ったと言っているがトリュフって作れるのか?まさかこの日に合わせて自家栽培したとも思えない。
「それとこれは2人から。はい」
「えっ?俺?俺にもくれるの?嘘!しかも手作り?信じられない!ありがとう、ありがとう」
2人が隼人にも作っていた様で前澤さんが渡してきたが、隼人は、予想していなかった分真司以上に感激してしまい、今にも泣き出してしまいそうだ。
「そこまで喜んでもらえると作った甲斐があったよ。3人とも食べたらまた感想聞かせてね」
「ああ、ありがとう」
「もちろんです」
「必ず感想をしたためます」
2人はトリュフを俺達に渡すと席に戻っていった。
「俺感激だよ。まさか俺の分まで用意してくれてると思わなかった。義理でも感動だよ」
「ああ、そうか。よかったな」
「何だよ海斗あんまり嬉しそうじゃ無いな」
「だってトリュフだぞ」
「トリュフ最高じゃ無いか」
「だってキノコだぞ」
「は〜?キノコ?お前まさかトリュフってキノコの事だと思ってるのか?」
「えっ?違うのか?」
「違うに決まってるだろ。キノコみたいな形の高級なチョコレートだよ。馬鹿だな」
なんだと?キノコみたいな形のチョコレート?そうなのか。完全に勘違いしていた。
俺は急いで春香と前澤さんの所に行って
「ごめん。俺、キノコと勘違いしちゃってた。トリュフ本当にありがとう。すごく嬉しいです。チョコレートありがとう。絶対食べるからありがとう」
「ああ、それで。海斗チョコレートが嫌いだったのかと思ったよ。違う物にすればよかったかなと思ってたところだった」
「チョコレート大好きです。最高です。本当に嬉しいですありがとう」
「そんなに喜んでもらえて私も嬉しいよ」
しかし恥ずかしい。盛大に勘違いしてしまった。今までの俺の人生にトリュフという名前のチョコレートが登場したことは無かったので完全にキノコだと思ってしまった。
世の中でトリュフという名前のチョコレートはそんなに市民権を得ているのだろうか?
勘違いで恥ずかしい思いをしたもののそれ以上に最高のバレンタインデーだ。たとえお友達用の義理チョコだとしても最高だ。
最高に幸せな気持ちになったのでダンジョンでもテンションは最高潮だった。
「シル、今日のあいつおかしくないか?」
「そうですね。いつもより楽しそうですね」
「あれは女だな。何かいい事があったに違いないな」
「春香様でしょうか?」
「多分そうだな」
「しばらくしたら2人で探ってみましょうか」
「そうだな」
テンションMAXの俺は全く2人の会話には気づきもしなかった。
家に帰るといつものように母親がチョコレートを買ってきてくれていたので有り難く頂戴した。
その日の夜生まれて初めて手作りのトリュフを食べた。カカオさえ入っていれば全部同じチョコレートだと思っていたが、全く違った。
おいしい。手作りと言うエッセンスが加わるとこんなに美味しいのか。いや春香が作るとチョコレートはこんなに美味しくなるのか。真司と隼人も今頃感動しているに違いない。
そのあと母親にもらったチョコレートも食べてみたが普通に美味しかった。
次の日になり春香と前澤さんに再度お礼を言っておいた。
「トリュフ美味しかったよ。あんなに美味しいと思わなかったよ。ありがとう」
真司と隼人は既にお礼を言っていたようで、俺以上に熱烈なお礼を言ったらしく
「3人ともそんなに喜んでくれると思わなかったから、こっちも嬉しいよ」
「そうよね。真司くん達凄かったもんね。味覚を永久保存するとか言ってたしね」
バレンタインデーは最高だ。
来年も春香からチョコレートをもらえるといいな。