A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (34)
第34話 マジックアイテム
俺はガラス越しにブレスレットをじっと見てみた。
壊れている様子もなく、普通に綺麗だ。
商品説明を見てみると。
身につけた人の魔法効果を増幅する。
ただし魔法発動中はその場から一切動けない制約がかかります。
これは・・・
いわゆる、呪いのマジックアイテムではないか。
魔法を増大する。これは素晴らしい。
しかし、その次の魔法発動中に一切動けなくなる制約がかかる。
これは致命的ではないだろうか。
敵が複数の場合、魔法発動中に狙われると一発でやられる。
3階層より奥のモンスターには致命的欠陥というより呪いだ。
マジックアイテムには時々呪いのアイテムと呼ばれるものがある。
効果に対して、デメリットとなる制約がかかるアイテムたちだ。
たまに使用している人もいるが、クセが強すぎてほとんどの場合見向きもされない。
値段を見ると100000円。
安くはないが頑張れば買えないことはない値段だ。
「うーん」
ちょっと俺に当てはめて考えてみた。
魔法の効果が増大。
これは貧弱魔法使いの俺には喉から手が出るほど欲しい効果だ。
だが、発動中一切動けなくなる・・・・
「んっ?」
そこで気づいてしまった。
よくよく考えると俺にはシルがいる。
魔法発動を『鉄壁の乙女』の効果範囲内だけに限定すれば動けなくても問題ないのではないか。
今までも効果範囲内から魔法を発動している間に攻撃されたことはない。
これは・・・・
俺のための、呪いのアイテム いや、マジックアイテムに違いない。
居ても立っても居られなくなった俺は、急いで家に帰って、なけなしの10万円を握りしめ、ブレスレットを購入に向かった。
販売員のお姉さんにブレスレットの購入を伝え、アイテムを取り出してもらう。
「あのー。これを本当のご購入でよろしかったですか?」
「はい。お願いします」
「ご自分で使用されるんですか?」
「はい。そのつもりです。」
「そうですか・・・では商品の説明はよくお読みになりましたか?」
「はい。大丈夫です。」
「そうですか・・・マジックアイテムとしては安価ですが・・・・これは・・・いわゆる呪いのアイテムです。 本当にご購入で大丈夫ですか?」
「はい。大丈夫です。」
「正直、若い方がご使用になるのをあまりお勧めはできませんが。」
「ありがとうございます。でも大丈夫です。」
「わかりました。それでは、このアイテムが原因で何かあってもダンジョンマーケットは一切の責任をおいかねます。ご了承ください。」
「はい。わかりました。」
俺は期待いっぱいで、ブレスレットを手に入れたのだが、販売員さんに変に気を使われた感がすごかった。
きっとあの人はすごくいい人なんだろう。
今日は休息日と決めていたが、マジックアイテムを手に入れ、我慢できなかった。
すぐにダンジョンの1階層の片隅に向かった。
購入したブレスレットを腕にはめ、魔法を使用してみる。
『ウォーターボール』
魔法の発動と共に身動きが取れなくなるような拘束感が発生した。これが呪いと呼ばれている所以だろう。
ブレスレットの効果は魔法の効果増大。
おそらく、水玉が大きくなるか、飛んでいくスピードがアップするのだろうと漠然と考えていた。
しかし、ブレスレットの効果は思っていたのとは違う形で現れた。
水玉の大きさは、全く同じ野球の球ぐらいのまま。
飛んでいくスピードも変化なし。
ただ
『ズガン』
「えっ !?」
壁にぶち当たるといつもとは違う、硬質な炸裂音がした。
よく見ると、ウォーターボールは水ではなく、氷の玉になっていた。
ブレスレットの効果は ウォーターボールがアイスボールになるという思ってもいない効果を発揮した。
俺は、ブレスレットの効果で『アイスボール』使いとなっていた。
大きさは変わらないのでそこまでの威力はないかもしれないが、今までの殺傷能力ほぼゼロからすれば
雲泥の差だ。
小躍りしたくなる気持ちを抑えて、きっちりあと二発を発動させて、強烈な倦怠感と、充足感を感じながら家に帰った。