A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (342)
第340話 対フロストデーモン
俺は今盛大に勘違いしてヒートアップしたフロストデーモンを相手に戦っている。
4人と1匹でかかっているのでさすがに押しているが、ほとんどダメージが入らない。
俺の斬撃も何度かヒットしているが、少し氷の身体が削れただけで決定打には程遠い。
「海斗、ヒカリンが……」
背後からミクの声がしてヒカリンの方に目をやると地面に倒れている。
「ヒカリン!大丈夫かっ!」
俺の呼びかけに全く反応しない。
「マイロード、恐らくドリームイーターに眠らされたのだと思います」
「ベルリア治せるか?」
「お時間をいただければ」
「よしっ、じゃあここは任せて行ってくれ!」
ベルリアをヒカリンの治療に向かわせて、インプ戦と同じメンバーで臨む。
「やはり外道だ。大した事は無いな」
フロストデーモンはベルリアがいなくなったのを良い事にこちらを攻め立ててくる。
「いや、外道はお前だろ悪魔なんだから」
「何を馬鹿な事を言ってるんだ。人間こそ外道。悪魔こそ正義の使徒だ」
この悪魔がおかしいだけなのか、文化の違いか話が噛み合わない。
「あいりさん『斬鉄撃』中心でいきましょう。通常攻撃では無理です」
「ああ、わかってる」
あいりさんは『斬鉄撃』で応戦するとして問題は俺だ。
俺の手元にあった2本の低級ポーションは既に使い果たしてしまった。
『愚者の一撃』は、あと1回だけは使用出来るが仕留められなかった時はやばいので、本当に
最後の最後まで使えない。
とにかくあいりさんが仕留められるよう今度はフォローに回る。
ベルリアの穴を埋めるべく素早く動いて手数を増やす。
俺では足りない部分をミクとスナッチが後方からフォローしてくれる。
「やああああ〜!」
一瞬の隙を見つけてあいりさんが『斬鉄撃』をフロストデーモンの左腕に叩き込み破壊する事に成功した。
「ぐわあああ、痛い、痛いぞ」
フロストデーモンがオーバーアクション気味に騒いでいるが、見ている側から破壊した腕が修復して行く。
「させるか〜!」
あいりさんと俺は回復を阻害するために追撃をかけるが、みるみるうちに腕が修復してしまった。
「痛い。腕を斬るなどやはり外道の所業、許せん」
『フロストソード』
フロストデーモンがその手に出したのは氷の刃だった。
「それってほとんど魔氷剣じゃないか」
俺の漏れ出した心の声とは関係無くいきなり魔氷剣もどきで斬り付けてきたので、咄嗟にバルザードで受け止めるが、急激に冷却されてバルザードが凍り始める。
危険を感じて効果は薄いが、咄嗟に理力の手袋の力で顔を殴りつけ後方に下がる。
このままではまともに斬り合う事もままならない。
『ウォーターボール』
俺はバルザードに氷の刃を纏わせ魔氷剣を出す。
「おい、なんだそれは。フロストソードの真似じゃ無いのか。さすがは外道。私の剣まで盗み取ろうとするとは言語道断。偽物のフロストソードなど一瞬で砕いてくれる」
「いやあああああ〜!」
フロストデーモンが長々とふざけた事を喋って注意が俺に集中している間にあいりさんが渾身の一撃を頭に見舞った。
『アイアンボール』
更に頭に向けて鉄球をぶち込んで完全に頭部を破壊する事に成功したが、消滅しない。
頭じゃダメなのか?
俺はすぐさまフロストデーモンの懐まで入り込んで、魔氷剣を胸に突き刺すが、貫通には至らない。
先程『愚者の一撃』は最後の最後まで使わないと決めたばかりだが、ここしか無い。
使うには早すぎる気もするが、どう考えても今しかない。
「やってやる。くたばれ、このお喋り悪魔!『愚者の一撃』」
胸に刺さった魔氷剣に破裂のイメージをのせて『愚者の一撃』を発動する。
その瞬間フロストデーモンは完全に砕け飛んだ。
「やった。もう無理だ。出し尽くした……」
ステータスを確認すると俺のHPは3まで減ってしまっていたが、なんとか2体目のおしゃべりデーモンも撃破する事に成功した。