A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (344)
第342話 神滅
苦しむ俺の前には大きくなったルシェが立っている。
「あ〜久しぶりだな。やっぱり気分がいいな」
「ルシェ……早くしてくれ。わかってるだろ。俺は気分が……悪い」
「ふふっ」
いやルシェ「ふふっ」じゃ無い。前もそうだったが普段マウントを取れないからか『暴食の美姫』を使ったらやたらと偉そうだ。
「ううぇっ」
「まあせっかくだから時間をかけてしっかりと倒してやるよ」
「ルシェ………」
「そんな顔するなって。わたしが何か悪い事してるみたいじゃないか」
「してる‥だろ……」
「わかってるって。ちょっと待ってろって。それじゃあ、この下級悪魔を始末してやろうかな『神滅の風塵』」
俺がこのスキルを見るのは3度目だが、やはりスキルの格が違う。
巨大な暴風が急激にドリームイーターを中心に集約して消え去ると共にドリームイーターも跡形無く消え去っていた。
分かってはいたが1発で片がついてしまった。
「流石だな……じゃあ解除してくれ」
「ふふん。流石だな?」
カードの超絶美女に近づいた姿でルシェが得意そうな顔で声をかけてくる。
この姿は正直TVで見る芸能人など比較にならない程に美しいので黙っていれば、美の女神と言われれば信じてしまいそうだが、喋りと態度はルシェそのものなので残念すぎる。
「ああ、最高だった」
「最高だけ?」
「超最高だったよ」
「ふふっ、なんか嘘臭いな」
「……エクセレントだ」
「エクセレント?」
「マーベラス」
「ふふっ、マーベラス?」
「わたし偉い?」
「ああ偉い。素晴らしい。グレイト!」
「そんなに言うなら解除してやろうかな〜」
「流石はルシェだよ。魔核は奮発してやるからな」
「ふふふ絶対だぞ約束だからな。それじゃあ、あと30秒満喫したら解除する」
「いや死んじゃうから20秒で頼む。うううっ……」
「しょうがないな。20秒な」
そこからの20秒はまさに地獄の苦しみを味わうような20秒だったが、以前に比べると明かにルシェが扱い易くなって来ている気がする。
これも日頃から俺が気を使い続けた成果だと思うと感慨もひとしおだ。
「ううぅ………」
永遠にも感じる20秒が経ち、ようやく死の苦しみから解放された。
「は〜終わった……シル低級ポーションを頼む」
「かしこまりました」
シルから低級ポーションをもらって、本日4本目を飲み干した。
流石にこの短時間に4本は無理がある。まずい………
「約束通り魔核をいっぱいくれよ」
「分かってるけど、その前にベルリアとヒカリンを何とかするのが先だろ」
「ベルリアはぶっ飛ばせば起きるだろ」
「ぶっ飛ばすのか?」
「そう」
俺は試しにほっぺたをパチパチやってみたが、やはり効果が無い。
「そんなんじゃ無理無理。もっと強くだ」
仕方がないので少し強めにパチパチ叩いてみたが反応が薄い。
「甘い。こうだよこう」
「バチ〜ン」
流石はルシェ容赦が無い。
「ううっ。ここは一体?」
おおっ。やりすぎなんじゃ無いかと思ったがベルリアが目を覚ましたので適切だったらしい。
「ベルリア、ドリームイーターに眠らされてたんだよ」
「なっ……。そんなバカな………。ありえない………」
「いや普通に眠ってたぞ」
「くっ‥…一生の不覚」
「それはもういいからヒカリンとあいりさんを頼む」
「はっ。お任せ下さい」
ベルリアが『ダークキュア』を唱えるとヒカリンが目を覚まし続いてあいりさんも目を覚ました。
「私は………」
「悪魔のスキルで眠らされたんだ。目が覚めてよかったよ」
かなり苦戦はしたが悪魔を3体倒したのだからこれ以上の結果は無いだろう。
ベルリアさえ眠らなければ『暴食の美姫』を使用しなくても勝てたかもしれない。
今に始まった事ではないがベルリアにはもっと精神修行が必要なのかもしれない。