A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (347)
第345話 新しいスキル
俺の手に入れたスキル『ゲートキーパー』はやばいやつだった。
探索者なら誰しも望んでやまない探索者垂涎のスキルだろう。
後で試してみようとは思うが、まずは手に入れたマジックオーブをヒカリンに渡そうと思う。
「みんなこのマジックオーブはヒカリンに使ってもらおうと思うんだけど」
「いいんじゃない」
「それが適切だろう」
了承が得られたので早速ヒカリンにオーブを渡して壊してもらう。
「どうだった?」
「はい、しっかり覚える事が出来ましたが、思ってた氷系の魔法では無く水系でした」
「水系だったのか………」
「はい………」
俺のウォーターボール然りで水系は攻撃力が乏しいので他の系統よりも外れのイメージが強い。
「ウォーターボール?」
「いえ、ウォーターキューブでした」
ウォーターキューブ…………任意の場所に水で出来たキューブを出現させる事が出来る。
「あ〜ま〜俺の『ウォーターボール』でもなんとかなってるから、試しに使ってみる?」
「はい、やってみますね『ウォーターキューブ』」
ヒカリンの詠唱と共に前方部分に1Mほどの水の立方体が出現して空中で30秒ほど留まってから地面落ちた。
俺の『ウォーターボール』より遥かに水量は多いがそれだけだ。
窒息専用魔法?いやそれでも相手が抜け出せば窒息には至らない気がする。
「どうでしょうか?」
「う、うん。いいんじゃないかな」
「どの辺がでしょうか」
「水が多いあたりとか」
「…………」
これは完全にハズレだ。ハズレ魔法以外の何者でも無い。
気まずい。俺のブレスレットを渡そうか。いやでもそれだと『アイスサークル』になるだけか。
どうすればいい?
「せっかくだから色々試してみようか」
「色々って何を試せばいいですか?」
「………今日は疲れただろうから次潜った時に色々試そうか」
「………はい。わかりました」
これは次潜る時までに何かを考えておかないといけない。
このままハズレ魔法のまま終わらしてしまえば、ヒカリンが不憫で仕方がない。
今のままでではお風呂かプールの水汲み位にしか役に立たなさそうだ。
今日は疲れたのでもう帰ろうと思うがせっかくなので『ゲートキーパー』を使ってみようと思う。
ただ不確定な事が多すぎるので慎重を期して14階層の階段まで戻ってから使用してみることにした。
「それじゃあ、使ってみるよ。いいかな『ゲートキーパー』」
『ゲートキーパー』を使用した瞬間ステータスの様な表示が目の前に現れて、1〜14階層までが選択できる様になっている。流石に1階層の入り口まで飛んでしまうと目立ちすぎるので2階層を選択して発動してみる。
発動の瞬間エレベーターに乗った様な浮遊感と共に眼前の風景が切り替わり2階層と思しき場所に移動していた。
本当に移動出来た。これは凄い。本当に凄いスキルだが問題があった。
俺1人で移動してしまった様で、他のメンバーが誰もいない。
「これはまずいな……」
慌ててもう一度『ゲートキーパー』を発動して14階層まで戻るとみんなが待っていた。
「ごめん、1人で2階層に行ってしまったみたいだ」
「本当に行けたの?」
「うん、行けたみたい。でも1人で行っても仕方がないからみんなで行ける方法無いかな」
サーバント達はカードに戻せばどうにでもなるが、他の3人はどうすればいいだろうか。
「おんぶに抱っこすればいけるんじゃないのか?」
「お前じゃないんだから全員は無理だろ」
ルシェに言われて一瞬ミクとヒカリンとあいりさんを3人おんぶと抱っこする自分を想像してみたが、どう考えても無理だ。
普通に考えてこの『ゲートキーパー』では俺しか飛べないか、もしくは接触していないと一緒に飛べないかしか無い。
「サーバントはカードに戻して、みんなで手を繋いでやってみようか」
今度は俺の左右にミクとヒカリンそして対面側にあいりさんの並びで『ゲートキーパー』を発動した。
今度は左右にミクとヒカリンを伴った状態で飛ぶ事が出来たが、あいりさんだけがいない。
あいりさんはミクとヒカリンと手を繋いでいたので、俺と直接接触していないと一緒に飛べないと言う事なのだろう。
慌てて14階層に戻るとあいりさんがポツンと1人で立っていた。
今度はあいりさんも俺の腕を掴んだ形で発動してみたが遂に4人で飛ぶ事ができた。
俺に直接接触している事が条件の様なので一度に大勢は難しいが1パーティ単位なら同時に移動が可能だろう。
とんでも無いスキルを手に入れてしまった。当面内緒にしておこうと思うが、トラブルを避ける為にもばれた時の言い訳も考えておかなければならない。