A Nobody's Way Up to an Exploration Hero RAW novel - Chapter (351)
第349話 通告
3人での話し合いが終わり、俺に最後通告の時が来た。
「海斗、一ついいかしら?シル様は因果律と言われたのよね。物事には原因があって、海斗が将来なす事のためにシル様やルシェ様がついてるって」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
「やっぱり海斗はバカなのね」
「なっ!?何を急に」
「だってそうでしょ。海斗、因果律というなら私達3人が海斗とパーティを組んでいる事にも意味があるって事でしょ。シル様達がいるのと同様に私達3人がパーティメンバーとしている事も因果律の中に含まれてるんじゃ無い?」
ミクに言われて初めて気がついたが、ミクの言っている事には説得力がある。シル達がいるのが偶然では無いのだとしたら、ミク達がいるのも偶然とは言えないのかもしれない。
俺は自分に原因があると言われてそこまで頭が回らなかった。
みんなに迷惑をかけないようにとだけ頭が働いて、今のメンバーも既に因果律の中に含まれていると言う可能性には一切思い至らなかった。
「だけど、この前の悪魔もそうだけど危険度が増すかもしれないだろ」
「私達3人の話した結論。今まで通りパーティを組んで潜りましょう」
「いや、でも」
「私達も海斗とそれなりの時間を過ごしてきたつもりだけど。因果律と聞かされて、じゃあサヨウナラとはならない程度には絆があると思ってたんだけど」
「そうですよ。海斗さんもですけどシル様とルシェ様とお別れする事など出来ないのですよ」
「お二人と会えないなど考えられないな。まあ海斗もな」
「みんな………」
完全に思ってたのとは違う答えが返って来たのでやられてしまった。
確かにダンジョンでも助け合ってそれなりに絆も構築できているとは感じていたが、みんながこんなに心強いと思えた事は無かった。
「………う、うっ」
やばい、涙腺が………
今までも何度か涙腺を刺激する出来事はあったが、今回は流石にやばい。
奥歯を食いしばって、涙腺にゲートをしようとしたが、今回のウェーブはあっさりとゲートを破壊してしまった。
不覚にも涙が溢れ出してしまった。
「なによ、このくらいの事で泣かないでよ。それにしても私達がそんなに薄情だと思われてた事に軽くショックを受けたわ」
「そうですよ。逆の立場だったら海斗さんは私達を捨てて逃げ出してましたか?」
「う、ううっ…………」
返す言葉が無い。全くそんなつもりは無かったが、俺のみんなへの信頼が足りなかったのかもしれない。
俺のみんなへの気持ちはベクトルが違ったようで、結構な覚悟で臨んだつもりだが、杞憂に終わってしまった。
またこれから気持ちを新たに探索を進めて行こうと思うが、まずは14階層を攻略する事に集中したい。ただ問題は悪魔対策だろう。
シルの言葉を信じるなら今後も間違いなく悪魔と遭遇するだろうから、どうにかしなければならない。
もちろん将来の為に貯金したい気持ちもあるが、まだ見ぬ未来よりも俺を含めたメンバーの今が1番大事だ。
既に進学の為の学費は確保しているので、これからは積極的に装備品やアイテムに投資していこうと思う。
今後の装備等の強化については、他のメンバーも同意してくれたので進めていきたい。
後は、今回のレベルアップで手に入れたスキルや魔法の検証が必要だと思うので、来週の土曜日に約束をして解散をした。
今週末は久しぶりに春香と映画を見に行く予定にしているので、せっかくだから装備品の補充にも付き合ってもらおうと思う。
メンバー同様、春香とも買い物友達としての絆は一歩ずつ深まって行っていると信じたいが、いつかそこから先に進んで行きたい。